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【中学受験ネタ】国立附属小学校(1)

我が家では、附属小学校の受験対策はしなかった。
附属小学校対応の塾があるにはあったが、自宅から相当離れていたので、通えなかった。
そもそも当時住んでいた自宅では通学対象にならないので、引っ越ししなければならなかった。
本来なら、学区の私の母校の小学校に行かせるつもりだったのだが、運動会を見学して、その親御様(祖父母)達を見て、「これは無理」と思い、かなり遅くに小学校受験を決めた。
運よく合格したので、小学校の近くに引っ越した。

ツイッターで、塾の先生が「国立小の保護者はほぼモンスターペアレンツ」と言っていたが、文京区の附属小学校(御茶の水、筑波、学芸大竹早)のことを指していたらしい。
東京にいたときは白山に住んでいたので、もし合格したら、リアルモンペを見られたかもしれない。まあ、その前に抽選で落ちたと思う。
それにしても、「ほぼ」は言い過ぎではないかと思うのだが……。

ちなみに、地方の国立附属小学校ではそんなことはない。
むしろ公立小学校の親に比べて、「まともな人」が多い。当方の想像を絶するような人はいない。
それだけで国立附属小学校に受験させてよかったと思っている。

小学校受験では90人くらいが一次試験に合格するのだが、そのあと抽選会場に行き、10人程度が不合格になる仕組みだった。
男子だと80人くらい受けて、45人が合格し、5人が抽選で落とされるイメージ。
最初掲示板を見たとき「1,2,3,4,5,7……」の感じで並んでいて「なんだ。ほとんど合格じゃん」と思ったのだが、番号が大きくなるにつれ、まばらになり、息子の受験番号「7X番」の前には50番台、その後ろには、合格者はだれもいなかった。
のちになり、受験番号は応募順ということがわかった。
塾に通っていた子達はすぐに応募するので小さな番号、うちのようにギリギリになって応募した子は番号が大きくなるというわけだ。
番号の大きさと気合が反比例しているので、最初のうちは合格者ばかりだということも判明した。

発表後、すぐに抽選があったので、私も合格の番号を確認して、すぐに抽選会場に向かった。
会場は張りつめたような空気だった。
だれも喋らず、神妙な面持ちのまま。たとえて言うなら、判決を受ける被告のような表情をしていた。
冬なのに異様な熱気で、室内だけ温度と湿度がやたらと高く感じられた。
先生たちが、重々しい顔をして、七面倒くさい抽選の方法を説明する。その様が大仰で、はなはだ滑稽にも思えた。
その抽選方法は初めて聞いたら、頭をフル回転させないと理解できないような面倒な方法。そんな面倒な方法ではなく、あみだくじかガチャかなにかにすればよいのにとさえ思った。

隣に座っていたお母さんは、ずっとお守りを握り締めて、小さくなにかをつぶやきながら、一心に祈っていた。
合格したとわかったとき、その方は肩を震わせて泣いていた。他人事ながら「よかった」と思ったものだ。

抽選が終わり、解散となったとき、会場の出入り口で、ある出来事が起こった。
ご夫婦でいらっしゃった方がいて、落選したらしい。お母さんが「なんでうちの子だけ……」と言うと、突然座り込んで泣き崩れた。それを旦那様が必死に慰めていた。
お母様はその場でしばらく泣いていて、だれも声をかけることができず、通り過ぎるとき、なんとも気まずい思いがしたものだ。

息子が中学受験する段階になって、その夫婦のことを考えることがある。
あのときは運が悪くて気の毒だったけど、時は過ぎ、もうすぐ6年生だ。
おそらく中学受験するだろうと思う。

抽選がある小学校受験と違って、中学受験では運に左右されない。
今度はぜひリベンジを果たしてほしい。

(続く)



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