雪の日には
雪の日には車輪や足音が音をたてず
街々は冷たい吐息に閉ざされてしまった
近くで電柱工事の作業がはじまり
灯りのない夜にロウソクで過ごした
静かな時間に二人きりでいることが
とても懐かしく、ぎこちない
もらい物のワインを開けたら
やっと肩を寄せ合うことができた
窓は結露して大きな滴が
じぐざぐな線をえがいて下りた
月は出ていなかった
室内をとても広く感じた
「どう、寒い?」とあなたが聞く
指さきにあなたの手が覆い、
あなたの肌とわたしの肌がふれあった
「大丈夫」と答える。「ありがとう」とわたしは言う
唇がやさしくふれあった
からだをもとめていることがわかる
あなたは笑う
わたしはそっと笑う
あなたからの暖かな言葉をきいて
わたしがすぐ傍でそれに答える
もう何ヵ月もなかったこと
夏の日にはなかったこと
雪が解けたら決めてしまおう
ロウソクが消えたら話してしまおう
もう先月には終わったことを
これが最後の口づけになることを
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