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自分自身と向き合うことでなにが見える|傲慢と善良【読書感想】

辻村深月さんの傲慢と善良を読みました。

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》

あらすじより

表紙のイラストが印象的で以前から気になっていました。結構分厚いので手が伸びなかったのですが、いろんな人がおすすめしていたこともあり読んでみました。「婚活ミステリー」と紹介されていたのでどんな話かと思いきや、深い深い人間の中身の話でした…
自分ならこういうときこう、などと考えながら読みました。

主人公架は、姿を消した婚約者、真実を追う中で相手の過去と向き合うことになり、今まで知らなかった面があることに気づきます。どういう家庭で育って、経験をして、今の彼女になったのかを知っていきます。そのなかで自分自身の傲慢さや善良さにも向き合うことになります。
第一部が架視点、第二部が真実視点の話になっています。各部の序盤を読み比べると面白かったです。

架が傲慢さ、真実が善良さの象徴のようにも見えるのですが、一概にそうとは言えないのです。
真実の立場が自分に重なってしまい、いろいろ思うところがありました。


傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人のなかに存在してしまう

まさにわたしが最近考えていたことを言われた気がして。
「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です。」
というセリフにハッとさせられました。
何かを選ぶとき、あまりに迷ってしまうことが多くて自分でも嫌だなと思っていました。
この理由に、自分と釣り合うかどうかを考えているという視点が得られて
確かに傲慢なことをしているなと、思わされました。
その一方で
「善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、“自分がない”ということになってしまう。」
というセリフもあり、これも自分に突き刺さってきました。
自分がないから選べないんです。善良さに悩まされている。


親なんだから心配して当然だし、それが愛情だし、親の使命

真実と母親との関係が、読んでで本当に嫌になる部分でした。
それは自分と重なる部分があるから。
自分の過去を振り返ると、真実よりはマシだったけど「完全な自由」ではなく。
何かと文句を言われて、親の望むほうへ軌道修正されてきました。
誰かが思う、誰かのための正解を歩んできた人には、自分軸がない。
ずっと悩まされています。
心を殺して、真面目に、善良にやってきたのに
「そしてその善良さは、過ぎれば世間知らずとか、無知ということになる」
ここまで書かれてると芯を喰われすぎてつらい。浮かばれない。
親の愛情とか使命ってなんなんだろう。
ここはまだまだ勉強していかないといけないし、
自分が親になったいま、本当に気をつけないといけない部分だと思っています。


生きていくために必要な悪意や打算の方は誰も教えてくれない

これも、わたし自身同じ気持ちになったことがあります。
高校生くらいのときに特に強く考えていました。
「なんで?なんでみんなはこういうときどうすればいいかわかるの?」って。
結局もう自分でデータを集めていくしかないんですよね。
今となってはもう大人だし、経験からなんとかやれてると思うけど、やっぱり自分の感覚って世間とずれてるのかなって立ち止まって考えてしまうこともあります。


人生のビジョンは、自分で考えなければ、決して見えない

真実は終盤、自分で決めて大きな行動に出ます。
物語の中盤には、真実と対象的な存在として「人生のビジョンを決めて行動した人」が数名出てきます。
それでも自分は…と卑下していくばかりだった真実が自ら行動していく姿はなんだか感動的で、やっと真実が魅力的に見えました。
こうなりたいという姿を作って、少しずつアクションを起こしていきたいと思いました。
姿はあと、アクションが先でもいいのかもしれません。
そうしたらマインドも変わっていくのかなと思います。
案ずるより産むが易し。なんですよねきっと。


この本を通して、
自分のなかにある傲慢さと善良さが浮き彫りになったり、目を背けていた部分が明るみにでるような感覚を味わいました。
婚活中の人だけでなく、自分自身と向き合いたい人におすすめしたいです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。


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