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量子ファイナンスと古典的方法

量子ファイナンス  量子コンピュータが得意とする分野のうち、ファイナンス分野で活躍が期待されているものがいくつかある。下記(Adam Bouland et al. 2020. "Prospects and challenges of quantum finance" )では特に3つ挙げられており、それが「モンテカルロ法」「ポートフォリオ最適化」「機械学習」である。本稿ではこのうち前者2つをとりあげる。  これらの量子Verの詳細までは触れないが、古典的な方法に比べて何が期

    • 今年読んだ本まとめ

      個人的な備忘として今年読んだ本(で思い出せるもの)をまとめておく。 ①ファイナンスの基礎理論―株式・債券・外国為替 キース・カットバートソン 他あーこういうのが日本語でまとまってるのが欲しかったんだよなあ、という本。それなりに読み物として読みやすい(理論の発展が理解しやすい)し、あれなんだっけと思い出すときにも使える。そりゃあどんな参考書でもそうだよ、と言われればそうかもしれないが、特に自分にとってうれしい知識が多かったということで。厚すぎないのもいいですね。 ②経済・フ

      • 株価と指標

        前回までいろいろ数字をいじくってみたのだが、株価データや財務指標のほかに、業界横断的な指標や統計情報というのも大事である。 株価のレンジを読むのに、ヒストリカルデータをいじくることは有益だろう。ある程度数学的な素養があった方がよいことも確かである。ただ、時間経過に比例して不確実性は増大していき、レンジを定めるのが難しくなる。これはウィーナー過程の分散が時間増分に等しいことをイメージしてもらえればよい。つまり、短期的レンジはある程度想像がつくものの、長期では可能性が多すぎてわ

        • マルチファクターモデルによる推計(のさわり)

           自己資本を推計する方法のひとつにマルチファクターモデルによる推計がある。  マルチファクターモデルといえばFama Frenchの3ファクターモデルが代表的である。ほかにもCarhartの4ファクターモデルもあるし、Fama Frenchの5ファクターモデルもある。マーケットポートフォリオだけに回帰するシンプルなCAPMと違って、いろいろ要素が入っており説明力が上がるということである。  CAPMは個別銘柄リターンをマーケットポートフォリオ(あらゆるリスク資産)に回帰する

        量子ファイナンスと古典的方法

          インプライド資本コスト

          さて、CAPMには無理がありそうというのは前回話した通り。 これにさらに踏み込んで、そもそも過去の実現リターンを未来の期待収益率の代理変数にするのはどうなのよ?ということで、視点を変えて会計的な切り口から入っていくのがインプライド資本コストのアプローチだ。 CAPMをはじめ、拡張されたマルチファクターモデルにおいても、正確なプライシングモデルを作ることは不可能と言える。だからこそより説明力の高いもの、直感に合うもの、使いやすいものを求めて日々研究されているわけだ。 ヒスト

          インプライド資本コスト

          資本コストについて思うこと -資本コストとROE-

          資本コストはすごく分かりづらい概念だと思う。 「資本コストってなんですか?」って言われると非常に困る。 「WACCですよ!」とか答えればいいのだろうか。 じゃあWACCって?株主資本コストって?それってどうやって算定するの?ROEと関係あんの?資本コストを意識した経営って何?意味あるの? 考えるときりがないようにも思える。 ただ、わからない部分の多くは教科書的な話がほとんどである。ちょっと厚めのコーポレートファイナンスの教科書を読めば解決するはずだ。しかし更なる深みにはま

          資本コストについて思うこと -資本コストとROE-