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【中小企業向け/知財で損をしないポイント】<vol.9>中小企業向けの支援策あれこれ

「知財の診断士®」がお届けする、中小企業に知っておいてほしい知財ポイント、久々の投稿です。

第9回目のテーマは、「中小企業向けの支援策あれこれ」についてです。 資本が少ない中小企業、小規模事業者、個人事業主さんが知財活動をするには、知識や資金の面で負担が大きく知財を活用できない大きな原因と言えます。そのため、特許庁をはじめとする公的機関も色々な支援策を講じています。この支援策を上手く活用することで、知財活動への負担を軽減することができますし、知らずに損をしていることも少なくありません。今回は、知らないと損をする、中小企業のための支援策を紹介します。

1.国内出願に係る費用を節約するなら「減免制度」

減免制度

(出所:特許庁HP)

特許を出願しようとすると、特許庁に所定の費用を納めなければなりませんが、中小企業であればこれを減免してもらえる制度があります。特に2019年4月1日以降に審査請求をした案件については、手続きが簡素化され、利用しやすくなっています。

例えば、請求項の数が5の特許の場合、                通常必要な審査請求料は158,000円(138,000円+4,000円×請求項数5)ですが、中小企業の場合、1/2の79,000円に、小規模企業・個人事業主の場合、1/3の52,660円(10円未満の端数は切捨て)となります。

また特許料(登録後に支払う維持年金)も1~10年分に限りますが同様に減免されており、請求項の数が5の特許権の場合、            1~10年分の総額で193,300円必要ですが、中小企業の場合、1/2の96,650円に、小規模企業・個人事業主の場合、1/3の64,430円(10円未満の端数は切捨て)となります。                    なお特許料は、10年以降が高額となりますが(本例の場合、毎年76,900円が必要)、減免が受けられるのは10年までとなりますので、注意が必要です。

申請についても、従来必要であった「減免申請書」や中小企業等であることの「証明書」の提出が不要となり、審査請求書に減免を受ける旨を記載すれば良くなりました。

なお減免の対象は、特許、実用新案およびPCT出願の一部費用に限られており、意匠や商標は減免の対象でないことは注意が必要です。       また最も費用がかかる代理人費用についての補助制度ではありませんので、この点はご承知おきください。

2.外国出願の費用を節約するなら「外国出願補助金制度」

外貨2

海外市場での販路開拓や営業展開、また模倣品被害への対策には、進出先において特許権や商標権等を取得することが必要です。しかし、外国出願費用をはじめとする海外での知的財産活動費は高額であり、資力に乏しい中小企業にとっては大きな負担となっています。

このため特許庁が外国出願に係る費用を助成する制度があります。助成対象となる費用は、                           ①外国特許庁への出願手数料                     ②①に要する国内代理人・現地代理人費用               ③①に要する翻訳費用                        となっており、対象となる権利も、特許・実案・意匠・商標に及びます。また代理人費用や翻訳費用も賄える点は魅力的です。

補助率は1/2ですが、上限があり、                 1企業あたり300万円                        1案件あたり 特許:150万円、実案・意匠・商標:60万円、冒認対策商標:30万円です。

なお申請の窓口は「各都道府県の中小企業支援センター等」と「日本貿易振興機構(ジェトロ)」の2つがありますが、まずは地域単位で審査される中小企業支援センター等」への申請を検討されるのが良いかと思います。また申請時期は例年5~7月に実際されますので、募集を見逃さないようにする必要があります。

注意すべき点として、対象となる案件は、日本に出願済みの案件であって、かつ採択後に同内容の出願を優先権主張して外国出願する予定の案件、という点です。つまり5月以前に外国出願してしまうと対象にはなりませんし、PCT出願は対象にはなりません(PCT出願からの国内移行は対象となります)。また申請書には外国出願時の見積もりを記載しなければなりませんので、申請に慣れた特許事務所を使われるのが良いかと思います。

3.特許調査をお願いするなら「特許情報分析活用支援事業」

特許マップ

(出所:「特許情報分析による中小企業等支援事業事例集」2019、INPIT)

特許情報の必要性や有用性は言うまでもありませんが、実際に自分で特許を調べるとなると難易度が高く、また調査会社に依頼するにも、どこに依頼してよいかもわからず、さらに費用を考えると手が出せない、というのも現実です。

そのような中小企業に対し、INPIT(工業所有権情報・研修館)が窓口となり、企業の要望にあった特許情報を無料で提供してくれるのが本事業です。

提供される特許情報は、①事業構想から研究開発・出願段階での技術動向分析、先行文献調査、障害特許調査と、②審査請求前の先行文献調査、の2本立ての支援です。

いずれも調査会社へ依頼され、その予算も1件100万円以内となっており内容は充実していますので、利用価値の高い情報を得ることができると思います。

この制度は近年人気が高く、競争率が高まっている印象があります。申請しても容易に採択には至りませんので、次で説明する知財総合支援窓口の支援を利用されるのが良いかと思われます。また例年、2月の第1回公募を初めに、5回程度募集されますので、こちらもウオッチングしていくのが良いかと思います。

4.知財で困った時は「知財総合支援窓口」

知財総合支援窓口

(出所:知財総合支援窓口HP)

私の前職でもある「知財総合支援窓口」は、INPITからの委託を受けた事業者(多くは発明協会)が運営する、知財に関する相談窓口です。知名度は(大変!)低いのですが、支援内容は大変充実していますので、知財問題でお困りの際は、是非ご活用頂ければと思います。

その特徴は、                            ①各都道府県に窓口が設置されていること               ②相談員は、大企業の知財部で経験を積んだ実務の専門家であること   ③必要に応じて、弁理士・弁護士等の専門家の支援を受けられること   ④相談は無料で、何回でも受けられること               ⑤相談は各協会窓口だけでなく、商工会議所・商工会など臨時窓口での開催や、企業・商店へ訪問支援も可能なこと                ⑥知財の相談を切り口に、経営戦略やマーケティング、ブランディングなど、企業価値向上に向けた支援を行うこと               ⑦特に多面的な支援を望まれる企業に対しては、1年程度の時間をかけ複数の専門家が伴走支援する「重点支援」制度があること         等、多数あります。 手前味噌ではありますが、無料でこれだけの支援を受けられる事業は、他にはないと思いますので、お悩みがあればまずはお電話されることをお勧めします。

なお知財総合支援窓口では、知財の問題についての助言しかできず、実際の出願の代理や調査の代行は行えない点はご注意下さい。

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