コーポレートIT(情シス)マネージャの就任時備忘録〜②〜

続きものです。前回はこちらから。

第一回:スローガンと職務考課表の作成
第二回:チームの年間目標とスケジュール、予算案を作成してたら体重が減ったお話(改善案を片手に、全役員へ提案する巡礼の始まり) ← 今回の記事
第三回:社内提案資料の作り方をメンバーに指導した時の話


年間目標とスケジュール作成

まず、年間目標を作る最終目的は何か、と言うと。

予算をGETするため

全社員が利用する、ICT環境を構築・運用するので、兎角
固定費が掛かります。更にコストセンターと思われがち。
提案0だと、運用に問題ないよね。なら昨年と同じ予算でやりくりしてね? となる確率高め。

しかし。
これからの時代、状況に合わせたアップデートは必須。
変わらないのはクライアントから送られてくるセキュリティチェックシートだけ。

そしてサービス導入やリプレースを行う場合、
既存環境と並行運用期間が生じる事が多く、どうしても追加予算が必要になってくる。

となると、役員を説得するための年間目標(計画表含む)&予算案
を作るしかない。
目標無くして、お金を出してくれません。

マインドセットの変更

という事で年間目標を作っていくのですが、過去のお話を少しだけ。

当時は入社4〜5ヶ月目の試用期間が明けた頃で、入社バフ(テンション高め、マリオのスーパースター状態。ただし無敵じゃない)が掛かっており、
どの課題から片付けてやろうかと鼻息荒く過ごしていた。

前職で果たせなかったゼロトラストアーキテクチャへの取り組み、MDM導入(JamfPro、Intune)やIDaaSの構築(Okta使ってみたい)、各種自動化。
夢は果てしなく。

が。

そこに第一の洗礼が訪れる。

マネージャ歴の長い方は「当たり前やろ」と思うかもしれないが、
評価が個人ではなく、チーム全体の達成度である事に気づいて無かった。

意気揚々と年間目標を作り本部長へ提出したところ・・・

実際はもっとマイルドな言い方でした

と再提出に。
確かに。確かにそうだ。マネージャだもの。
一人情シス歴が長い方はお気をつけください…

課題の優先順位決め

チームとして動き、対応していく体制は整えたものの(前回のNote)
期待した効果が出てくるのはまだまだ先だし、メンバーの工数が減った訳でもなく、チームは日々の業務で手一杯。

私が採用された理由も戦力充当で、人手不足が原因だった。

やるならプレイングマネージャ(プレーヤー配分多め)として
新しい道を整地し、メンバーに運用を任せていくスタイルで行くしか無い。

優先順位決めのため、

  1. チームリソースを多く消費しているタスクの低減(作業効率化、生産性の向上)

  2. 現場の課題解決や、会社の利益に通じる取り組みとなりえるか

  3. セキュリティリスク対応(見えている地雷の撤去)

  4. ゼロトラストアーキテクチャをベースとした、環境の構築

モチベーションを下げず、チーム負荷を上げないためにも
この4つに合致した改善をベースに、年間計画を立てて行く事とした。

初めにやったのは、役職者(部長以上)へのヒアリング

ヘルプデスク対応の中で、現場のお困り事は何となく掴めるが、
その改善が会社の利益に繋がるか?の観点から見ると不確かな部分も多い。

という事で、事業内容を熟知していて、かつ予算管理の役職者をターゲットにヒアリングを実施。
入社後特有の先入観が無い状態(こちらに期待があり、不要な情報(噂)が入る前)でサクッと聞いておく。

  • 困っている事はあるか

  • 情シスに何を期待しているか

この2つを中心に、聞きに徹するべし。

自分の思いとか、こうあるべき、などの上から目線はご法度。
現環境が気に入らなくても、それぞれの歴史や背景があるんや。
こいつ自己満足野郎やな、と思われたらその時点で終了です。
本当にありがとうございました。(過去に一敗)

高難度課題が目白押しでしょうが、現場レベルの要望や不満も出てきたら儲けもの。
現場→上長→役員 と頻度高くエスカレーションされている証であり、
必須情報なので積極的にピックアップする。

そして、ヒアリングが終わったら課題の整理整頓に移る。

チャレンジ領域(高コストが見込まれるタスクもここに含める)
長期間掛かるが、対応出来る
短期間で改善出来る

の3つに分けて優先順位を付ける。
この決断がチームの航路を決めていくので、
マネージャとして一番楽しく、かつ難しいところ。


点と線で目標を作る

出揃った課題を元に、ようやく年間目標(改善活動)を決めてくのですが・・・
年間目標 = 直近1年間の目標
として作らず、最低でも3年以上を見据えた目標として作る事をお勧めします

点は今年度(又は来年度)の目標、線はそれ以降を見据えた目標です。

理由は3つ

1:年度予算には限りがある
当然ですが、予算には限りがあります。
どんなに素晴らしい提案だったとしても、限度を超えての投資は難しい。
それが役員にとって未知の領域なら決断も鈍るでしょう。

投資に対してどういったリターンが得られるのか、説明にも時間が掛かります。
そんな予算出せないよ!と言われる事もしばしば。

ただし数年計画なら。
今年度予算に含める事が出来なくても、小額なのでスモールスタートで
始められたり、来年度の予算増、として種を仕込む事は出来ます(言い続けるのは大事)。

2:バッファは持つべし
チャレンジ領域に取り組む場合、バッファは必須です。
経験上、構築まではスムーズにいったとしても、運用フェーズにおいて
「現場とのすり合わせ、浸透」に滅茶苦茶時間が掛かる事があります。
なんなら切り戻しが発生したりも。
1年目で構築&導入、2年目で運用&ルール固め、3年目で実績報告
・・・くらい掛かる事もありました

3:あらゆるイレギュラーに備える
今までの運用が成り立たなくなる事が、突然やってきます。
サービス終了や仕様変更など、死角からのアタック。
例外なく緊急度<高>になるので、余力は残しておく必要があります。
それだけでなく、冠婚葬祭などのライフステージの変化だったり、
病気や事故があったり。

以上から
最低でも3年、可能なら5年計画の中で余裕を持った計画を作って、
突発的な心労を減らしましょう。

今年は5合目まで目指そう


予算案を作る

目標を作り終えたら、予算案を作っていきます。

まずは去年のコーポレートITの予算総額を把握する。
経理・財務に頼むも良し。上長に去年の予算表を貰うも良し。

続いて予算表を作っていくのですが・・・
全ての希望(予算獲得)が叶う事は、まずありません。
そんな夢の様な会社にいた事が無いというのもある
基本はケバブ方式です。

可能な限り、薄切りでお願いします

場合によっては、ブロックレベルで削られてしまいます。

最終的に「今年はなんぼ掛かるん?」を出す事が目標ではあるものの、
ケバブされる際に致命部位を避けるため、調整しなくてはならぬ。

何に使うか?何処を削れそうか?を分かりやすく、
可能な限り立てた目標に添う形で進めるため、
「経営層が予算の内訳を理解出来る」事を目的として進める。

予算表は2つ作る

経営層は経理・財務チームが作った資料を元に、方針を定めます。
オリジナルの予算表を作成しても、読解にパワーを使う資料では本末転倒です。
なるべく経理・財務チームベースの資料に寄せて(視点を合わせて)、作った方が効率が良いので、予算表を2つに分けます。
1:資産計上用の、PC購入費を纏めたシート
2:SaaSのサブスクリプションなどの月額、年額費用を纏めたシート

資産計上用シート(PC購入)

購入PCやオフィス関連のもの(工事やNW機器)は、固定資産台帳に記載され減価償却の対象となります。
そしてリースやレンタルと違い、ドカンと一括でキャッシュが出ていきます。
よって総コストから見て比率が高く、合計額が調整しやすい。
※リプレース用PCの購入数の増減や、そろそろ交換の時期が迫ってきているルータ購入を延期するとか

そのまま経理へ提出可能+予算調整がしやすいシートとして作ります。

一般管理費に属するシートは、松・竹・梅でタグ付け

SaaSのサブスクリプション、リース・レンタル、Pマークなどの認証資格費用はこちらのシートに纏めます。
経理的には、「契約名」「取引先」「総額」を盛り込めばクリアなのですが、微調整可能で、かつ推移を一目で分かる様に以下の項目で作りました。

  • 区分:既存か新規か

  • 管理:ITチーム管理か、他部署と共同管理か(按分する場合に利用)

  • 利用範囲:一部の部署か、全社か

  • 担当:請求管理者。経理が請求書を問い合わせする際に照会する

  • 契約名:サービス名やプラン

  • 支払い:月額 or 年額

  • 販売:取引先

  • 単価:月額 or 年額

  • 契約期限:永続か期限付きか

  • 松竹梅:必須〜出来れば導入したい までの、お気持ち表明

  • 数量、コスト、月額試算

月毎に作っておくと、人員計画に変動があっても調整しやすい

フォーマットを作ったら、次に実績値を入力していきます。
経理から貰った去年のデータからポチポチ転記。

次に今年度の目標から掛かるコストを埋めていく。
人員計画表が貰えたらベストだが、パートナーは含まれていない事も多いので、本部長当たりに聞いておくのがベター。

準備が整ったら、項目に松・竹・梅を付けていきます。

:減額、削除不可の必須サービス。ドメイン更新やグループウェアが該当
:立てた目標の内訳で、新規導入が必要なサービスを記載。チャレンジ領域かつスモールスタートが可能なものを、ここに含める。(業務上必須の時は梅にします)
:目標の内、チャレンジ領域かつ高コストが掛かるもの

カテゴライズが終了したら上記シートを梅でフィルター、総額を出してこの額を絶対防衛ラインとします。
続いて梅・竹でフィルターし、資産計上用シートと合わせたものを今年度の予算表として作ります。
松については部長クラスへ相談し、許容コスト内だったら入れます。

目標と予算表を作り終わったら、予算を握っている上長とじっくりと擦り合わせを行います。
部長→本部長→役員 と2回ケバブされますが、絶対防衛ラインは死守して頂く様、お伝えしておきましょう。

終わりに

以上が、第二回目の内容となります。
次回は提案経験がある情シスなら誰もが経験したであろう・・・

役員向け提案資料の作成について

ぶっちょ「チリピリ君が導入したいって言ってた、◯◯サービスさ。
役員から用途が不明なので、説明して欲しいってさ。
予算には含まず、OKなら稟議申請で対応するから。
MTG組んでおくので ( `・∀・´)ノヨロシクっっネ 」

こんな時、どんな資料を作れば伝わるのか。MTGで何を伝えれば良いのか。
独断と偏見を交えて書いていこうと思います。

ではまた。

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