見出し画像

脊髄再生の鍵は「生き残る神経細胞」!ゼブラフィッシュが教える驚異の回復戦略 ワシントン大学医学部

脊髄損傷は人間にとって回復が難しい重大な障害であり、多くの人々が感覚や運動機能を永続的に失います。しかし、ゼブラフィッシュは、脊髄を完全に再生する能力を持つ珍しい脊椎動物の一つです。今回、ワシントン大学医学部の研究チームは、ゼブラフィッシュの脊髄再生に関わる細胞とその役割を詳細に解明しました。この研究により、従来の再生メカニズムに対する理解が大きく変わる可能性が示されました。

驚くべきことに、損傷した神経細胞自身の生存と適応能力が完全な脊髄再生に不可欠であることが明らかになりました。これまで再生の中心的役割を果たすと考えられていた幹細胞は補助的な役割に過ぎず、実際には損傷を受けた神経細胞が新たな機能を担うことが、再生の鍵であることが判明したのです。

通常、哺乳類の脊髄損傷では、損傷を受けた神経細胞が死滅し、その結果、脊髄環境が修復に対して敵対的になります。この新しい研究は、幹細胞を用いた治療法がうまくいかない理由として、まず最初に損傷した神経細胞を死から救う必要があることを示唆しています。

ゼブラフィッシュの研究により、損傷直後の神経細胞が生存し、再生のために即座に新しい役割を果たすことが重要であることが明らかになりました。この柔軟性は、損傷後のストレスを克服し、損傷した脳や脊髄の回路を保護しつつ、脊髄を再構築するための時間を稼ぐ役割を果たしていると考えられます。このメカニズムが失われると、ゼブラフィッシュは再生可能な幹細胞を持っていても、正常な泳ぎ能力を取り戻すことができません。

さらに、研究チームは、この保護的プロセスを指揮する遺伝子がヒトにも存在している可能性があると考えています。これにより、脊髄損傷後の神経細胞死を防ぐ新しい治療法の開発が期待されています。

今後の研究では、神経細胞以外の細胞、特に中枢神経系のグリア細胞や免疫系、血管系の細胞が脊髄再生にどのように関与しているかを解明することが予定されています。また、ゼブラフィッシュで得られた知見を哺乳類、特にマウスやヒトの神経組織と比較する研究も進行中です。

この研究は、脊髄損傷の治療法開発において、再生のための新しいターゲットを提供し、将来的に脊髄損傷を克服するための重要なステップとなる可能性があります。

研究チームの発見により、損傷を受けた神経細胞の保護と再プログラム化が、脊髄再生の第一歩であり、そのための遺伝的ターゲットが明確になったことで、ヒトにおける新たな治療法の開発が期待されています。

詳細内容は、ワシントン大学医学部が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?