見出し画像

新しい超高純度シリコンで強力な量子コンピュータを実現 メルボルン大学&マンチェスター大学

メルボルン大学とマンチェスター大学の研究者たちは、シリコンの超高純化に成功し、実用的な量子コンピュータの実現に大きく前進しました。

量子コンピュータは、従来のコンピュータとは異なり、量子力学の特性を利用して計算を行う次世代コンピュータです。しかし、量子コンピュータの動作には大きな課題がありました。量子情報は非常に壊れやすく、計算中にエラーが蓄積してしまうのです。

今回、研究者たちはシリコン結晶にリン原子を組み込むという技術を開発しました。この技術により、シリコンの持つ量子状態が格段に持続する時間が長くなり、エラーの少ない計算が可能になると期待されています。

シリコンは安価で扱いやすく、現在のコンピュータチップの基盤材料としても広く用いられています。今回の研究成果は、この身近な素材であるシリコンを使って、性能が飛躍的に向上した量子コンピュータを実現する可能性を示唆しています。

量子コンピュータは、人工知能の高度化、セキュアな通信ネットワークの構築、革新的な医薬品の開発など、幅広い分野で大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

従来のシリコンにも量子コンピュータに応用できる利点がありました。それは、現在のコンピュータチップ製造と同じ技術で量子コンピュータのチップを作ることができる点です。しかし、シリコンの純度が低いことが性能向上のためのボトルネックになっていました。

今回の研究では、シリコンの同位体であるシリコン28を高い純度で取り出すことに成功しました。シリコン28は量子状態を安定的に保持しやすい性質を持っていますが、天然のシリコンの中には別の同位体であるシリコン29が約4.5%含まれています。シリコン29は量子状態を乱す要因となるため、高純度のシリコン28が必要とされていました。

研究者たちは、シリコン28のイオンビームを既存の半導体製造装置に照射する方法で、シリコン29の含有率を4.5%からわずか0.0002%まで下げることに成功しました。

メルボルン大学は以前の研究で、30秒というシリコンを利用した単一量子ビットの保持時間の世界記録を達成しています。今回の成果により、さらに多くの量子ビットで同時に量子状態を維持できるようになれば、極めて複雑な計算を短時間で処理できるようになります。

研究者たちは、30量子ビット程度の量子コンピュータでも、現存するスーパーコンピュータを凌駕する性能を発揮すると考えています。

今回の研究は、オーストラリアとイギリスの政府研究助成金を受けて行われました。また、実用的な量子コンピュータの実現に向けて、さらなる研究開発が進められています。

詳細内容は、メルボルン大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?