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【読書感想文】推し、燃ゆ読みました。

私は全然本を読んでこなかったもので、一冊読んでも皆さんのように思ったことを言語化出来ない事がとても悔しいなと思ってて。
今年はたくさん本を読みたいと思っています。

さて、先日図書館で借りてきた10冊のうちのひとつ。ほんとは去年読みたかったこちらから。


推し、燃ゆ 

宇佐見りん

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。

【第164回芥川賞受賞作】
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」

朝日、読売、毎日、共同通信、週刊文春、
ダ・ヴィンチ「プラチナ本」他、各紙誌激賞!!

三島由紀夫賞最年少受賞の21歳、第二作にして
第164回芥川賞受賞作

推し、燃ゆ 河出書房新社

宇佐見 りん (ウサミ リン)
1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は芥川賞を受賞、世界14か国/地域で翻訳が決定。他著書に『くるまの娘』。

まずイラストがとても可愛いですよね、
先日ダイスケリチャードさんのイラスト集を購入したばかりだったので彼の絵だとすぐわかりました。魅力的。

あらすじ
物語は、初っ端から推しが炎上し、徐々にアイドルとして道を外れ始め、突然居なくなる。
それと並行し、あかりは段々と登校拒否状態になり中退。
バイトもうまくいかず叔母の死で無断欠勤をしてしまいクビに。



あかりはずっと推しを解釈しようとしていた。

私もアイドルを応援していた時期があった。
アイドルだから、ではなくて本当にそのグループの音楽性が好きだったからで、アイドルの追っかけとはまた少しだけ違うのかもしれないけれど。

でもソロ曲は少し尖ってる年は、どういう意図なんだろうねとか、ブログの文章を読んで本当はどんなことを伝えたくて今日これを書いたんだろうなんて考えたものだ。

推しを応援する事は日常に彩りを与えるし、
推してくれる人がいないと表舞台に立つものは生きていく事が難しい。どちらの立場からもその重要性を理解しているつもりだ。
どれだけ日常が苦しくても、テレビの前で頑張るあなたがいれば、ステージ上で輝くあなたがいれば、自分も頑張れるっていう。
その愛とエネルギーは本物だと思う。


推しを推す時だけ重さから逃げられる


そんな推し活にのめり込むあかり。
日常生活の希薄さを埋めるかのように、
家族に「あかりは何も出来ないのだから」と言われながら、
普通じゃない子というレッテルを自分自身で貼りながら、
大人になりたくないと切実に苦しみ推しを解釈し愛し自分の存在意義を得てきた。

奥深く重くて息苦しいところから連れ出してくれた推しの彼に、
重さを背負って大人になることを辛いと思っていいのだ、と思わせてくれた推しの彼に、
精一杯尽くそうと
あかりなりの人生を歩んでいたのだと思う。


バイトもうまくいかない、学校も上手く過ごせない、その生きづらさは事実で
いつまでも親に甘えてないで就職先探さないといけないのも事実、しっかりしなさいという意見もあるだろうし
いつまでも推しばっかりなんてという彼女を否定する声もあるだろう。


でも私も現実が苦しくてテレビの前の"キラキラした希望をくれる彼ら"に縋った事がある者として

その気持ちがすごくわかったし、うーん、分かった気でいるだけなんだけれど、彼らの全力を注いだ作品を自分なりに解釈して愛して救われる事で自分がそこで生きる意味に出来ていたの、わかる気がする。


推しの卒業は、自分の存在証明の喪失でもある。


卒業の理由は明確に記していないが、単純に考えると人を殴った事が原因の炎上騒ぎが原因。

あかりは
なぜ推しは人を殴ったのだろう、という問いを避け続けながら炎上後も変わらず推し続ける、

いやさらに勢いを増して。


推しが引退することがわかってからは、
おばあちゃんの死もあり死を連想するようなお話が増えたように感じる。



推しが炎上した話、を推し燃ゆと4文字で表現するの凄いな…と思っていたけれど、
最後の2ページで、祖母が亡くなり火葬したことを振り返る際、

肉が燃えて、骨になる。
肉を削り骨になる。
推しを推すことはあたしの業であるはずだった。

推し、燃ゆ

という文章があり、

叔母の死、火葬、推しを推すということを燃ゆという言葉で連想させてるのかと衝撃。


上手く生きられないあかりを支えていたのはアイドルであり推しの存在だった、彼がいなくなっても頑張っていけるといいけれど。

だけど 

あかりの応援はきっと確かに推しの彼の力になっていたよ。

なんて、そう思う。



表舞台に立つものとして

偶像は偶像。
ステージに立つ"あの人"にしかわからない真実がある。

見るものはそれを解釈して咀嚼して
作品を飲む。

どこまで解釈してもそれはその人の解釈でしかなく、推しの真実に辿り着く事はできない。


ファンとアイドル、
ファンとアーティストの内には、
越えられない大きな何かが存在する。


こちらは全てを伝えたくても伝えられないし
誤解してほしくなくても誤った情報や陥れるような悲しい投稿は絶えないし、
好きとか嫌いとか評論家のような匿名の批評で溢れているこの世の中で。
純粋に応援する者たちとの間の隙間すらも、埋める事は難しい。 


私は応援してくれてるファンのみんなを誤解させたくなくて、全てを伝えたくてなってしまっていたけれど



大人なメンバー達に、
反論するのはやめておこう、嘘は言わせておけばいいよと言われる始末だから
私はまだお子ちゃまである。

絶えず匿名で更新される悪意には勝ち得ない。


私達がいつ消えて無くなるかなんてわからないから、
これを読んでるあなたが大好きなあのアーティストも、寿命がいつまでかはわからないから、
推せる時に推せたらいいなあ

たくさんの読書感想文を読ませていただき、この本が伝えたかったことを考えたけれど着眼点も皆それぞれ、考えた挙句本質に辿り着けていないとおもうけれど、私なりの感想でした。



あかりへ

這いつくばりながらでいいよ、
別にみんなと同じように上手に生きれなくてもいい、二足歩行が向いてないなら違う歩き方でいい。

推しが人になったのちも
あかりが不器用にでいいから丁寧にひとつひとつ拾って、長い道のりも進んでいけますように。


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