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【MODE Japan5周年】「リアル世界のデータ利活用におけるロボット - データプラットフォームの役割・課題と展望」

ソフトバンクロボティクス株式会社 CTO 柴田 暁穂氏をお招きし、医療やロボットの事例を交えながら、より良い未来に向けてのデータ活用やプラットフォームの重要性についてお話いただきました。

人類は観測し続ける存在である

柴田氏:今日は、データプラットフォームロボットについてお話させていただきます。
まずは、私の自己紹介をいたします。現在ソフトバンクロボティクスで技術本部本部長とCTOを兼任させていただいております。

略歴ですが、ボーダフォンのグローバルの方に所属しておりました、その後、ソフトバンクに入社後、ソフトバンクロボティクスの設立と同時に、今の仕事を推進しております。

ソフトバンクロボティクスは、ワールドワイドに拠点を広げていく中で、パリやサンフランシスコにオフィスと開いていく過程で、私も拠点を移動しました。サンフランシスコオフィスのときに、MODEの上田様と交流を持ち、我々のプラットホームを作っていくにあたって、様々なアドバイスをいただいています。

人が見ていない時、月は存在しない

先日、皆既月食がありました。皆様も興味を持って空を見上げられたと思います。非常に興味深かったのは、多くの方が列をなして、携帯で写真を撮ってる点でした。

ここで一つ有名な、アインシュタインとタゴールの問答を紹介させていただきます。

人が見ていないときに、月は存在していないという議論がなされました。アインシュタインは「月自体は、人がどうであろうが、存在しているものだ」と言います。一方、タゴールは「月をただの石ころや原子の塊と見たとき、それはもはや月ではない」と言います。

皆既月食も、たまたま400年に1回、ただの石ころに光が当たって影が通っただけだったら、誰も興味を持たないと思います。しかし、皆既月食にすごく価値を見出して、多くの方がアクションを取り、時間を取ってわざわざ写真を撮ったのです。

つまり、月をどう認識しているかが価値になるという結果だと思います。

人類は観測を続け、データとして残し続ける存在

人類は歴史の中で、ハードウェアとしては、エネルギーのサイクルの中の一つにいると思いますが、ソフトウェアとしては、ひたすら観測をし続け、データとして残し続けている存在ではないかなと思います。

古代では、混沌とした自然の中を生き抜いていくために、人類は様々な現象を観測し、データにして、価値あるものとして共有してきました。長い歴史の中で、単位を発明し、それらを書物などに保存し、計算・予測をして活用してきました。

ただ予測をするだけでは、価値まで繋がって来ません。そこに対する証拠まで結び付けて、初めて価値が見出せます。

今また大きな変革の時にきている

我々を取り巻く状況は日々変わってきております。

データという観点では、コンピューテーションがまず重要です。かつては扱えるデータ数が非常に少なかったので、やれることが限られていました。しかし、今はかなり大規模に、またクラウドを使うとどんどん拡張することができ、いろいろなユースケースが試行できるようになったかと思います。

それからIoTが出てきまして、いろんなところの観測が、より容易になってきました。

リアルワールドデータをリアルワールドエビデンスへ

ここで、ソフトバンクロボティクスも注目している事例をご紹介いたします。

医療の分野では、RWD(リアルワールドデータ)をマーケティングから研究開発の分野まで結びつけている点で、非常に素晴らしい成功事例かと思います。

本来RWDは、医療分野だけではなく、広くあまねく使われる言葉だと思いますが、医療分野で先行しているので、検索すると医療系の言葉として出てきます。

診察データ、電子カルテ、センサーデバイスなど、ありとあらゆるデータを集約をして、分析を行う前に統合して、予測をつけていきます。それから製薬の分野に、まず開発プロセスの中で、最新治療の中に折り混ぜ、さらに、そこでのフィードバックをもらう。こうしたループの中で、エビデンスを作っています。

ですので、RWDをリアルワールドエビデンスまでしっかり持っていって、アウトプットとしてもお客様に提供できている点で、非常に素晴らしいと我々も着目しております。

SoftBank Robotics 8年の軌跡

ここでソフトバンクロボティクスの8年の軌跡をご紹介したいと思います。2014年にヒューマノイド事業を開始しました。年間500万回以上の接客をしてきましたが、データという観点では、ロボットとしての役割を果たしながら、お客様とのコミュニケーションや案内といった様々なデータを蓄積しています。

さらに清掃ロボットも2万台とか出していますが、データとしては600万km、地球150周分のデータを蓄積しています。配膳ロボットも配膳回数4700万回と、膨大な量のデータが我々の手元に貯まってきています。

ロボットを提供することでデータが溜まったと見るか、データを溜めていくためにロボットを提供してるかと、その中間にいるところかなと思います。ITの人間としては「データのためにロボットがいる」と考えております。

さらに、物流事業も展開を始めており、自動化倉庫もオープンしております。

このように取得したデータを統合していくことで、初めてRWDが構築できると考えております。

ロボットインテグレータの重要性

我々もロボットを開発しますし、パートナーさんと一緒に作っているロボットもあります。各社のプロダクトのフェーズや、それから対面してるお客様の状況も違います。それから、データの貯め方や単位、保存の仕方、ガバナンスの考え方も各社異なります。

ちょうど人類の歴史の中で、単位や保存方法がバラバラだったのと同様の状況にあるのが、今のロボットやIoTです。そこで、単位や保存方法を揃え、データの取り出しや分析をしやすくするプラットフォームが求められています。

ソフトバンクロボティクスの役割は、ロボットインテグレーターとして、その部分をきちっとお客様に提供していくべきだろうと、様々な開発を進めております。プラトフォームについては、MODE様にも助言をいただいて、進めているところです。

ユニバーサルデータプラットフォームアーキテクチャー

まだ仮称ですが「ユニバーサルデータプラットフォーム」というのを構築しております。ロボット間のデータっていうのを、それぞれマージして単位を揃えて、データの保存形式・ガバナンスも一つのものにしていくです。また、お客様のプロファイリングや、個々の状況というのも、このプラットフォームに組み込めます。さらに、実際のオペレーションの中で、どういうことが現場で起きてるかというところも非常に重要です。

プラットフォームがないと、お客様のところで何か問題があったときに、個々の追跡はできても、AとBというロボットが、相互にどう作用してどうなったかは見えないんですよね。こうなると問題分析は非常に難しいし、それを解決したいというお客様のニーズに対して、ご提案ができない。

それぞれのデータが相互に連動してデータサイエンスをするのが、まさに今求められている状況かと思っております。

グローバルに設計をしなくてはいけないので、日本だけでなく、ヨーロッパ、北米、アジアといった市場のレギュレーションも含めて設計をしています。

面白い事例でいきますと、法令的にはOKでも、お客様のメンタル的にはNGというのはたくさんあります。例えば、北米にデータ自身を持っていく必要は、法令的にはありませんが、北米の企業様だと、データが北米にないと受け入れ難いといった思いがあります。

なので、単純に法令だけ見るのではなくて、それぞれのお客様のニーズもお聞きしながら、データガバナンスの設計を進めております。

それからフロントエンドも、お客様ごとに異なったニーズというのがありますので、我々のプラットフォームとしては、あらゆるフロントエンドに対応できるように、データの出し入れも気をつけてAPI設計することを心がけております。

データプラットフォームの活用は「ビジネスにとっての薬!」

プラットフォームを進めていく中で、ビジネスにとっての薬剤師みたいなものになれたら、と考えています。それぞれのロボットは同じように見えても、それぞれ長所と短所があり、また価格帯も異なります。AというロボットとBというロボットが双方に連動して動くとき、うまく使えば、より高いアウトプットを出せると考えています。

いろんな知見がデータの中に溜まってきております。ですので、副作用なく、最も効率化・最大化できる組み合わせを、データのエビデンスをもとに、ご提案していくということができればとそれらが双方に連動していくときに、考えております。

これからの展望

これからの展望ですが、オフィスやレストラン、自動倉庫など、様々な分野に使っていただこうというふうに考えております。

フードシステムにおけるデータ活用

最近、フードのシステムにおけるクラウドとデータ分析を進めておりまして、自販機型の調理システムのロボットを展開をしていく中で、プラットフォームに組み込み、いろんなロボットとの組み合わせや、例えば在庫管理やオペレーションの最適化、価格の最適化とか、そういった価値がプラットフォームから生み出すことができると考えております。

それからまだちょっとこれは今サービスにしてるものではないですけれども、これからとして、より、店舗の中のリアルタイム分析であったりとかそこの可視化であったりとか、それから、そこでのワーカーのオペレーションの分析であったりとか、それからオフィスの方での今のオフィスの状況ワーカーさんの状況、それに対してロボットがどうアクションするか、またロボットがアクションした結果として、それが何かお客様の価値に結びついているかその価値の結果として、さらに別のアクションをとったときにどうなるかという先ほどのサイクルを回してことエビデンスをしっかり作っていくという活動を行っております。

行政におけるデータ活用

もう少しマクロのシェアでいきますと、例えば我々の中でオフィスの方にロボットを導入させていただくと。特にコロナなんかでは、オフィスの中でもかなりリモートで進められてる会社さんと、実はそうではなくてオフィスに直接来られてるお客様といろんなパートナー様が、お客様がいらっしゃいます。

これ全体として我々集約して情報として分析できる状況にありますので、例えばこのエリアのオフィスはかなり稼働していますよ、ということがわかるような状況になります。そうすると、例えば今日、今、日比谷におりますけれどもこの日比谷の方の経済活動圏は、この後上がっていくのか、下がっていくのか。

逆にここが別のエリアが下がったときに、どの部分が上がってきているのかとオフィスがたくさん活用されて、ユーザーさんがたくさんいらっしゃるのか。例えばそうなってきましたけどフードの方に繋げていこうとすると、ランチの需要というのがどこからどこにこのコロナ禍で動いていってるのかとそういったマクロでの分析というのもできるようになってくるというふうに考えております。

ロボットインテグレーターの役割

それから我々ロボットインテグレーターとして、当然お客様に価値も生み出していく中で、あわせて、まだまだロボット、これからレギュレーションというのも広がってきますので、そういったところに、我々のプラットフォームの価値も提供していって、レギュレーションに対する我々のフィードバックまたはレギュレーションの機関から、そういった知見情報を開示して欲しいとかっていうところにもお応えできるようにしていきたいというふうに思っております。特にアカデミアの方で、実際のサービスを、している生のデータ、そこでの分析っていうところにたくさん興味を持っていただいてますので様々な、大学を含めた機関と協力してこの辺も進めていきたいと思っております。

ロボットシステム間連動のデモ

ここで一つ、デモをご紹介できればと思います。一番分かりやすくて、みんなが「おぉ!」ってなる、プラットフォームと複数ロボットが連動していくデモです。

登場するのは携帯電話、配膳ロボット「Servi(サービィ)」、調理系のロボット、配膳ロボットと調理ロボットの間を繋ぐアームロボットです。それらを相互に繋いでいるのが、データプラットフォームです。

まず、携帯電話でオーダーすると、調理ロボット側がすぐにそのデータを察知して、調理を開始します。それと同時に、配膳ロボット側もその状況を把握して自動的に動き始めます。

調理ロボットが調理が完了したというステータスが、常にリアルタイムに分かるので、今度はアームロボットが、すぐにそれを受け取ろうと動き始めます。受け取った料理を渡す頃には、配膳ロボットが既に到着していて、それを運びます。

ここで大事なのは、一連の連携の効率を最大限に上げることだと思っています。

配膳ロボットは、これ以外にもたくさん仕事があります。どの料理を優先的に取りに行くかを判断をしなくちゃいけません。なので、調理がいつ終わるのかと、自分がたどり着くまでの時間、お客さんのところに運ぶまでの時間を判断します。その上で、自分が行くべきか、それとも他のロボットに任せるべきかっていうことを考える必要があります。

これをやるためには、それぞれが同じ単位のデータとして、同じ場所に保管・分析される必要があります。そのためデータプラットフォームが活用されています。

それからもっと大事なのは、うまくいかなかった時にどうするかという点です。例えば、配膳ロボットがたくさんお客様がいるなどして、進むことができないということが起こります。そのときに、自分が行くか、他のロボットに行ってもらうか、どちらが早いか判断をやる必要があります。個々にシステムを作ってるとこれができないので、ビジネスとしてロスになってしまいます。この失敗したケースをいかにリカバーし、効率を上げ、コストをいかに下げるが、ビジネスにとって非常に重要です。このためには、データプラットフォームが欠かせません。ですので、成功事例よりも、難しい課題のときに、このデータが初めて活きてくると考えております。

世界のロボットを、未来の力に

ソフトバンクロボティクスでは、今たくさんこういったことを進めて、世界中のロボット、また我々が作るロボットを、今後も未来の力にしていければと考えております。

最後にまとめです。単に事象を、ただ過ぎていってしまうものにするのではなくて、価値あるものにするにはどうしていくのが大事なのか。やはりデータ化して、それを意識するところから始まるというふうに考えております。

ただデータを持ってることだけではダメで、それを活用して、サイクルを回してエビデンスまで持っていくことが非常に重要だというふうに考えております。やっと我々も、そのスタートラインに立てる状況になったかなという状況でございます。

IoTのデバイスやロボットは、自動で動きますので、ただ行動を取っていく中でデータが貯まっていくという、人類の歴史の中でも、少し特殊な存在が出てきた状況かと思います。そのような新時代に向かっていく中で、MODE様のプラットフォーム、それからソフトバンクロボティクスのサービスにご期待いただけたらと考えております。

私からは以上となります。ありがとうございます。

(会場、拍手)


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