佐々木はまるで置いていかれた子供みたいだ | 映画『佐々木、イン、マイマイン』
内山拓也監督の作品『佐々木、イン、マイマイン』という、なんとも切ない青春映画を観ました。
本編を見た方は共感してもらえると思いますが、鑑賞後にこのポスターを見ると、もう切なくて寂しくて。
昔、身近にいたであろう自分にとっての「佐々木」の存在に、私は気付いてあげられていただろうか。そんな切ない気持ちになりました。
佐々木は「ヒーロー」ではなく、とても孤独な寂しい子どもだったように思います。
みんなの記憶にいる「佐々木」
佐々木(細川岳)は石井(藤原季節)の高校時代の同級生です。明るくてお調子者で、手拍子とともに「佐々木コール」をされると全裸になって踊ってしまうような目立つ男の子です。
いたよね。こういう破茶滅茶に明るいクラスメイト。
いるよね。こういう何年も連絡取っていないのに心の中に住み続ける「ヒーロー」みたいな友達。
ここまでであれば学生時代の楽しい思い出を思い返すだけの懐かしい物語ですが、話が進むにつれて佐々木の孤独が胸を尽きます。
高校生である佐々木の食事がいつもカップラーメンなこと。家が足の踏み場もないくらいに散らかっていること。床が少し抜けていること。そして、父親が滅多に家に帰ってこないこと。
一度だけ父親が一緒に遊んでくれたテレビゲームで、深夜までたったひとりで遊ぶ佐々木の姿はあまりに孤独です。
置いてけぼりのヒーロー
小さい子どものように寂しがっていて、でもどこか大人びている佐々木。お調子者に見えて、深い深い穴の中でひとり立ち止まっているひどく孤独な友だち。
大人になって久しぶりに会った佐々木を見て、同級生たちは「相変わらず」と懐かしい気持ちを感じます。でも本当は「相変わらず」孤独で、寂しい、置き去りにされた子どものままであるように感じました。
駆け抜けていく時間を横目に見ながら、追いつけずにいるやつ。
あの頃、身近にいたと思った自分にとっての「佐々木」に、私は気付けていたのだろうか。そう考えてしまいました。
余談
ラストシーン付近、石井(藤原季節)の怒涛の舞台セリフは圧巻です。堪えていた涙目が一気に込み上げてきます。
スキ♥もして頂けると泣いて喜びます(スキはログインなしでも可能です)