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閉ざされた村社会と負の連鎖 映画『ヴィレッジ』

久しぶりにムビチケを購入してまで楽しみにしていた映画『ヴィレッジ』。都会の大きい映画館で公開から日も浅いのに1日1本に絞られていたのは、この重苦しいストーリーが万人受けするものではないという判断なのかな……。

映画『ヴィレッジ』ポスタービジュアルより引用

藤井道人監督の作品は、いつも切り取られる画がとても綺麗だと思う。今作も違わず、くっきりしたコントラストと影の濃い黒色で、作中で印象的に描かれるゴミ山さえも美しいものに見える。

閉ざされた村を舞台に、親子ともに村八分にあい希望のない日々を過ごす横浜流星演じる優は、黒木華演じる東京から戻ってきた幼馴染と再会し、闇の世界から引っ張り上げられる。ゴミの最終処分場でいじめられながら働いていた優は、少しずつ明るい生活を掴んでいくが、村社会という独特なシステムは、同調圧力、格差社会、貧困から逃してくれることもない。

映画終了後、一緒に観た同行者が吐き気を催すほど重苦しくて救いのない物語だったけど、なんでもあるように見える都会の向こう側で、環境への美しい配慮の言葉の奥の方で、こういう閉ざされた世界が実際にある。作品全体が能の演目「邯鄲」をなぞらえている通り、幸せで人並みな生活も夢のように一時のもので、現実は優と同じように闇を振り払うことができずに落ちていく。

村という狭く閉ざされた世界で、生きるために、生活を守るために罪を犯し、弱者が弱者であり続けなくてはならない負の連鎖。その連鎖が生まれるべくして生まれている村社会というシステムが重く心にのしかかってくるようだった。

同調圧力、過剰な血縁意識は、日本の闇だと思う。そんな闇を見せつけられた映画だった。


俳優部も豪華で全員素晴らしかったけど、個人的にはこの鬱屈とした優を演じ切った横浜流星に感動。


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