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読書メモ1「喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima」

8月末、9月に3人の子供たちの分散登校が決まってから、在宅でしていた仕事をいったん止め、月1の中学受験ブログ(ビタミンママにて『ペンギン』で連載中)だけにしました。

子供達が登校したりしなかったり、給食があったりなかったり、いつ家族が感染or濃厚接触者になるか分からず、スケジュールが不定になったので、しばらく仕事の予定を入れるのをやめ、ゆったりした気持ちで家のことや家族のことをしたいと思ったからです。

仕事の予定があるとどうしても、子供の体調が悪い時に「どうして今日なの!?」とイライラしたり、「早く給食再開してよ」という気持ちと「感染がこわいからできるだけ自宅でみたい」という相反する気持ちがぶつかってストレスを感じたりしてしまいます。

仕事がないと、いつ誰がどんな状況になっても「うんうん、OK」と、余裕を持って対応できます。これが本当に助かる。私のメンタルの安定にかなり貢献しています。

ただ、コロナという大変な状況で、こういう決断ができるのは外で稼ぐという役目を全面的に担ってくれている夫がいてくれるから。男女の固定した役割ではなく、今の状況では、私が家にいて、家のことをして、夫がお金を稼ぐという分担になっているということです。いつでも、逆転したり、バランスが変わることは十分あり得ますよね。

さて、そんな生活をはじめて約2週間。

意識してパソコンに向かう時間を減らしているということもあり、読書の時間が増えました。

以前は、図書館で「これもあれも」と手当たり次第に借りた本を、読み終えないうちに返すことが多かったのですが、だいぶ読めるようになりました。

嬉しい。

ここ最近で、一番心に響いたお気に入りの本は、森博嗣さんの「喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima」です。


森さんを知ったのは、数年前(もっとかも?)に、ドラマ「すべてがFになる」を見たことがきっかけ。原作を読んで好きになりました。

しかし、当時は子育て真っ最中だったので、読書をする時間が圧倒的に少なく、その少ない時間に読むのは、子育て・教育本が中心だったため、「すべてがFになる」以来、ずっと遠ざかっていました。

前述した理由で読書をする時間ができ、森さんの本を意識して読むようになったところ、数冊読んで、この本が一番自分の好み。

元国立大学の工学部助教授という経歴を持つ森さんの自伝的小説で、ある男子学生が大学に入学し、研究に没頭し、研究者となっていく過程が、大学で出会う喜嶋先生とのやりとりを中心に書かれています。

「静かな世界」とタイトルにある通り、ほんとうに物語の中には静寂が満ちていました。その中で、主人公の学生が、学問の本質や研究に深く深く潜っていく思考が、分かりやすく書かれていて、理系科目全般が苦手な私には、理系の人の頭の中が垣間見えて、とてもおもしろかったです。

世界は1つのようでいて、実のところは、見る角度によって姿が変わる、いくつもの異なる視点で見える姿の総体なんでしょうね。主人公、喜嶋先生、彼らをとりまく人々、それぞれが持つ世界が、なかなか興味深かったです。それぞれの世界を大切にしつつ、お互いの世界も尊重しあう、静かで素敵な関係でした。

読み始めると、ぐっと引き込まれてしまう本。あるていどの時間があるときに、腰を据えて読みたい本だなと思いました。

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