「やらないではいられないこと」ってなに?『ムーミン谷の11月』
ムーミンシリーズのこと、実はずっとずっと気になってました。
去年の夏、初めてムーミンを読んでからいつかシリーズ通して読んでみたい。ムーミンのことをもっと知りたいって考えていて。
よしゃ読むぞ!と決めてから、どうせならとお友達を誘ってムーミンバレーパークにも足を運びました。
これが最高に楽しかったです…!物語のシーンがあちらこちらで再現されていてここかああああと興奮しました。
何よりよかったのは、「KOKEMUS(コケムス)」という施設。ここはムーミンや、作者のトーベヤンソンの生涯について深く知ることのできる美術館のようなところです。
立体絵本でムーミンの世界に入り込めたし、登場人物紹介や名言がわかりやすく展示されているので理解が深まったし、なぜトーベヤンソンがムーミンを描き始めたのか、ムーミンとはそもそもなんなのかにふれて、朧げながら思いを馳せることができて、とてもとても良い時間を過ごすことができました。
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ムーミンは読んだ!と簡単に言ってしまうのをためらうくらい、奥深い世界観だし、詩的な部分も多くて、受け取り方が間違っているかもしれないけど、でもシリーズ通して読んでみてムーミンのことがだいすきになりました。
そのなかでもわたしがいちばん心打たれたのは『ムーミン谷十一月』。
これは全部で9巻あるムーミンシリーズのなかで唯一ムーミンたちが出てこない、最終巻にあたるものです。
【あらすじ】
いやしを求め、ムーミン屋敷に集まったフィリフィヨンカ、ホムサ、ヘムレン、ミムラねえさん、スナフキン、スクルッタおじさん。だけど、ムーミン一家は旅に出ていました。仕方なく共同生活を始める彼らですが、対立してばかりで…。
ムーミン屋敷にあつまる彼らは、それぞれ今の生活がうまくいかなくなってきて「きっとムーミン一家に会えばなんとかなるだろう」と考えてやってきます。
寂しさや不満を抱えてる知らないもの同士が、いきなり一緒に暮らし始めてもそりゃあうまくいくわけないよなあと思いながら読んでいたのですが、案の定ぶつかりまくるし、みんなムーミン一家が恋しくて仕方なくなります。でもぶつかるからといって誰かが態度を改めたり、話し合う描写はほとんどないのに、みんなが勝手に自分たちの問題を解決していくのが面白い。
けっこうそれぞれがめちゃくちゃなことを話していて、それがまた魅力のひとつなのですが、特にすきなのはスクルッタおじさんとミムラねえさんのこのやりとり。
「これはね、川でもないし、小川でもないのよ。どうして、あなたは、ほんとうにないものや、ほんとうは起きなかったことばかり、わあわあいうの。」
「胸をわくわくさせるためさね」
この返答!
さらにミムラねえさんに対して
「なんでそれをわざわざ口に出して言う必要があるんだい。いや、おそろしい子どもだよ。なんでわしをかなしませるんだい。」
「わしのたのしいゆめをぶちこわさないでくれよ。」
たとえ間違っていたとしても、胸がわくわくするならそれでいいじゃないかと当たり前のように反論するスクルッタおじさんのめちゃくちゃさが愛おしい。
ミムラねえさんは集まったものたちのなかではもっともフラットなタイプでみんなのいざこざを傍観しているだけなのですが、彼女がいちばん大切にしていることは「たのしくすてきに過ごすこと」。
ベッドの潜り込んだミムラねえさんのこの部分が最高にすき。
いまは、ぬくぬくと、なにもかもわすれて、あったかにしていればいいんです。ミムラねえさんには、いま、すっぽりとからだをくるんでいる、大きなやわらかなふとんだけが、この世の中すべてでした。ほかのことは、みんな関係のない、よその世界のことでした。ミムラねえさんは、ゆめなんか見ません。ねむたくなればねむり、起きたほうがいいときに起きる。それがミムラねえさんなのです。
おふとんだいすきなわたしからすれば、ほんとうにこれ以上の言葉はないくらいにおふとんのことを言い表していてすき。(夢はめちゃくちゃ見ちゃうけど)
それぞれが勝手だからこそ、お互いの勝手を尊重しあっていて、それゆえにみんな勝手に自分が「こういうことがあるんだ」「こういうふうにしか生きられない」と気づくのです。
自分のことは結局自分しか見えないし、わからないっていうスタンスがとても気持ちいい。誰かが無理に諭したり、律したりするんじゃなくて、自然とわかる感じ。
ムーミンシリーズに出てくるキャラクターは見た目からして、明らかにそれぞれが違う種族で、明らかに個性的なので、重んじることがもしかしたら容易なのかもしれません。どうしても似通っているわたしたちは、だからこそどこかで「わかるはず」を押し付けあってるのかな……なんて考えたり。
もっともっと自分勝手に生きてみてもいいのかな。だって違うのは当たり前なんだから。そのなかで「やらないではいられないこと」を見つけて忠実に生きられたら、と思うのでした。
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きっと読み返すたびに発見がありそう。知りたい!と思って浸かってみるだけの価値のある出合いでした。
3月は指輪物語を読んでいます。また更新します。
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