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日記

ゴールデンウィークが、さらに延長。
起きたのは朝の8時50分で、今から急いで支度をしたとしても授業には到底間に合いそうになかったので行かないことにした。
僕はこういう決断を下すことに微塵の迷いがない。いつからか危機感を手放してしまった。

11時30分。昼食に3きれのサンドイッチと生スコーンを食べた。気晴らしにベランダへ出てみると5月の暖かい陽射しがぼんやりと照射して小鳥の哀しげなさえずりが聞こえた。ペースト状のポテト(例えるならポテサラのポテトオンリーバージョン)を薄切りの食パンに挟んだサンドイッチを口に含みながら、日々薄れつつある未来への展望を冴えない頭脳で思い描く。ハムとレタスが乱雑にプレスされたサンドイッチをヤケになって口に押し込みながら昨日読んだ小説の内容を思い返す。最後に、大ぶりの白身が目立つたまごサンドイッチを口に詰めて、ぷつりと途切れたままの学校生活を思い浮かべた。

まるで無理やり引きちぎられた夢の名残のようにはかない。

ねじまき鳥クロニクル

入部届けを出したものの、初回以降顔を出していない百人一首部。保健室横のひっそり閑とした部室。活動日は週に一度、木曜のみで。障子をカラカラと開けると、4人の女子生徒が畳の上で正座をしてそれぞれにかるたの前で真剣な表情を浮かべ構えている。蔓延する一切の静寂を裂かんばかりに、録音された機械音声が上の句を読み上げた。部長が先手を切ってパァンと乾いた銃声を響かせる。否、畳に平手打ちを食らわすようにして札を取ったのだ。インスタのストーリーで何度か目にした1つ上の彼女はフィルターを通さなくても十全に可愛かった。目眩がするほど遺伝子の構成が複雑に美しく絡み合っていた。

彼女が笑うと、歴史が少しだけ正しい方向に向けて進みはじめたような気がした。

ねじまき鳥クロニクル

青春と僕の2地点間には超現実主義絵画のような透明な血管が横たわり絶えず脈を打っていて、この世に生きる人間が三途の川を渡れないように、僕は向こう側と完全に隔絶されていた。

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