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ベルゲンの魚市場

 ベルゲンは、ノルウェーの首都オスロに次ぐ第二の都市だというが、“都市”が持つ騒がしさを感じない。

 それは、港町の美しい景観もさることながら、とりわけ地元の人たちが旅行者に対して親切だからだろう。

 実際、僕がこの街で接した人たちに嫌な思いをすることがなく、この街をを去る直前までそれは変わらなかった。

 フィッシュマーケットのおっちゃん、バスの運転手、両替所の人、観光案内所の人、宿の受付の人、道を教えてくれる通りすがりの人。誰もがみんな愛想がいいのだ。

 バックパックを背負って歩く僕を見るなり、向こうから声を掛けてくれるマダムもいた。そして、この街を去る日、駅のホームで優しくほほ笑んでくれた可愛いベルゲン娘もいる。

 ベルゲン滞在中、僕は街を一望できるフロイエン山に登った。登ると言っても、標高320mの山だからそれほどの事ではない。それでも頂上から眺める景色は良かった。

 小高い山々が湾内を囲み、包丁の刃のように突き出した港には小さな漁船から大型クルーズ船が停泊していて、雲一つない青空に恵まれて遠方には北海に浮かぶ島々まで見渡せた。さっき立ち寄った魚市場も見える。
 
 「ここのエビは、スーパーで売ってるエビとは違う!スーパーのは歯ごたえがチューインガムのようだが、ここはサクッサクッと噛み切れる。ほら、食ってみな!」
 
 前置きのプレゼンがなされたあと、魚市場のおっちゃんはエビ、まぐろ、サーモンを次々と目の前で捌き、切り身を食べさせてくれた。

 フィヨルドクルーズの玄関口とされるベルゲンの街は、ヨーロッパはもちろん世界中から観光客が訪れる。

 この魚市場の看板には、日本円での現金払いもできると書いてあった。試食をさりげなく堪能した後、1円も払うことなく魚市場からそっと立ち去った。



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