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旅の途中
静かな場所に行きたくなった。
街の地図を見ていたら、とっておきの場所を見つけた。
そこへ行ったら、やはり思っていた通りの時間が流れていた。
さっきまで雨がぱらついていたせいか、誰も来ていない。
僕はしばらくその清閑な庭園の中に身を置いた。
「一人で寂しくないの?」
一人旅をしていたことに対して、こう聞かれたことがある。
「ひとりぼっちの旅」とでも言い換えたら、確かに寂しい響きになる。
しかし実際、一人旅は寂しいのだろうか。
確かに気の知れた家族や友人と一緒なら、会話も弾んで楽しいに違いない。
外国なら安心感も違うし、何より感動も一緒に分かち合うことができる。
だから余計、一人旅は寂しいという印象に繋がるのだろう。
ただ、当の本人はそれほど寂しいと感じていないかもしれない。
一人旅をする人は、自らそのスタイルを選んで旅をしているわけである。
そこには寂しいにとどまらず、さまざまな感情が沸き上がってくるはず。
そうした環境や時間を敢えて楽しみたい、とも思っているのではないか。
傍からは見えないかもしれないが、本人は一人旅の良さをかみしめている。
僕の父方の祖母は生前、一人旅をした。
数週間の滞在だったと思うが、旅先は香港だった。
僕の親父は、学生時代にヨーロッパへ無計画の一人旅にでた。1年の予定が、10ヶ月も遅れて帰国した。
僕も、学生時代に1年間休学をして世界3大陸を巡る一人旅にでた。僕は、ヨーロッパ、北米、アジアの3大陸の航路だけ事前に決めていたが、後は全て無計画だった。
時期も期間も場所も違うが、3人とも一人旅だったことは共通している。
15年前の秋、僕はパリの公衆電話から当時大阪に住む祖母に電話をかけた。
その時、祖母が電話でこう言っていた。
「一人旅はええで。全部自分で決めれるやろ。絶対ええ経験になるわ」
雨も上がり、空が少し明るくなっていた。
庭園の縁台に一人で座りながら、これまでの旅のことを思い返していた。
旅の途中だった。
日本が恋しくなる時はあったが、寂しさを感じることはあまりなかった。
むしろ、これから先はどんな旅になるだろうかと胸がいっぱいになった。
見たもの感じたものが、良くも悪くも全て自分に向かって跳ね返ってくる。
それは一人旅だからこそ味わえるもの。
一人でいる時間、一人で思いを巡らす時間。
旅にも人生にも、こうした時間があっていいと思う。
***
写真は、2006年11月にアメリカ・ポートランドの日本庭園にて撮影
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