外国人との「文化の違い」
外資系の製造業メーカーでの勤務経験があり、外国人と触れ合う機会が非常に多くあります。日本人だと当たり前だと思っていることも、外国人には一切通じないことが多々あります。その経験を基に、外国人とどう付き合っていくといいのか、私なりの考えを記載したいと思います。
「もったいない」が通じない?!
ある外資系企業で、製品を開発するエンジニアとして働いていたときのことです。その当時は、エンジニアと言っても製品の設計・開発の進捗を管理するプロジェクトマネージャー(PM)寄りの仕事をしていました。あるとき、お客様の製品を試作するために必要な部材として、お客様から注文を受けたので、工場(アメリカ)に対して製品を作って欲しいと依頼しました。こちらの製品も試作段階でしたので、不具合が多く歩留まり率(投入した材料から実際の製品が作れる率のこと、不具合が多いと率が下がる)は、ほぼ50%でした。つまり、投入した材料の半分はゴミ箱行きの状況です。日本人であれば誰もが「もったいない!」と感じ、歩留まり率を上げる改善を試みようとします。
しかし、アメリカ人の考え方は「受注数量はちゃんと作れる。歩留まり率が半分なら、投入する材料を倍にするだけだ!」というもの。それじゃ、かかる費用が倍になってしまうと反論すると「だったら売値を上げて利益を確保すればいい」の一点張り。もったいないの感覚がまったく通じませんでした。このときは唖然としましたが、見方を変えるとこの論法も理に適っています。この体験は、外国人と付き合っていく上で初めて感じた文化の差でした。
「明日までにやっておく!」は信用ならない?!
別の外資系企業で勤務していたときのこと。そのときは、中国とインドのエンジニアを活用して、製品の開発を行うPMをしていました。PMですから、進捗管理は重要な仕事です。毎週、チームでの打ち合わせをWebExというZoomみたいなシステムを使って、進捗管理や問題点の共有等を行っていました。
進捗を確認して、遅れが発生している場合は、遅れを取り戻す計画をその場で立案します。ですので、中国人やインド人に対して「この仕事は〇〇までに必ず終えること」を必達事項として伝えます。そのときは「分かった、ちゃんとやる!」等の返事をもらい、一安心します。
しかし、次の打ち合わせで進捗を確認すると、まったく進んでいないことが多々あります(というか、ほぼ毎回進んでないのが当たり前・・・)。理由を聞いてみると、理由は出てくるものの、言い訳にしか聞こえません。会議後に、その担当者に直接聞くと「ごめん、忘れてた」の一言。会議でちゃんとやる!と答えたのに、忘れるわけです。
日本人だと、やるとコミット(約束)したことは必ずやるし、やってなければ申し訳ないという感覚が一般的だと思います。しかし、外国人の場合はコミットしても、やってないことの方が一般的な気がします。そして、なぜやってないのか理由を聞くと、あれこれ理由をつけて自分は悪くないと主張してきます。
この理由攻撃をいかに回避して、「コミットしたのにやってないことが悪い」を認識させるかが、PMの腕の見せ所になっていました。具体的には、会議の内容を議事録に残し、コミットしたことを証拠として残します。その上で、この議事録を基に相手を淡々と説得します。このとき、感情は一切挟まず「コミットしたよね、なんでやってないの?」をひたすら繰り返します。まさしく「論より証拠」の世界です。
日本人だと阿吽の呼吸を理解することができます。ちょっと前に流行った言い方ですと「KYな人はダメな人」と認識されてしまうと思います。しかし、外国人は阿吽の呼吸は通じませんし、空気を読むなんてことは一切しません。言葉や文章で明確に伝えないと、まったく伝わりません。言葉や文章で伝えた以上のことはしてくれませんし、伝えてないことは一切やりません。
なぜ日本語は主語が省略できる?
これを端的に表しているのは、日本語と外国語の文法の違いでも説明できると思っています。日本語は主語が省略可能です。しかし、外国語は(少なくとも私が知っている言語では)主語が省略できません。なぜでしょうか?
それは、日本人は行間を読む習慣があるので、主語がなくても主語を想像できるからです。それに対して、外国人は行間を読む習慣がまったくないので主語を言わないと相手が理解できません。
ですので、日本人が思っている以上に外国人に対して言葉で説明しないと、自分の意図が相手に伝わらないと思った方がいいと思います。これもまた文化の違いの一つだと思います。
「文化の違い」を理解した先は?
文化の違いは、どちらが良い悪いではないと思います。ただ「違う」だけです。ですので、違いを理解した上でどう共存していくかを考えることが非常です。違いを理解していれば、外国人が自分の思っていたことと違うことをしても、びっくりすることなく対処することが可能になります。また、違いを理解していれば、先回りして問題を回避することも可能です。
ですので、違いをなくそうとせず、違いを理解し、その違いを楽しむくらいの気持ちでいる方が、物事に柔軟に対処できるし、いい経験として次に生かすことも出来ると考えています。
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