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02. 使いたい、をカタチにするための3本柱

この連載は、UXに強みを持つデジタルエージェンシーであるタイガースパイクが、自分たちも悩みながらも日々進化させているデジタルプロダクトの作り方の知見を、皆さまにも共有したいという目的で公開する記事です。

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タイガースパイクのUXデザイナー、マイマイこと佐藤麻衣子です。
前回に引き続き、2021年5月12日にタイガースパイク 東京オフィスとして、はじめて開催したウェビナー講演内容をご紹介します!

前回は、「デジタル開発を取り巻く環境」についてお伝えしました。いよいよ今回から、より具体的なアプローチ方法のご紹介に入っていきます!



「使いたい、をカタチにする」際に大切な3つの要素

さあ、いよいよ、ここから本題に入って行きます。
「使いたい、をカタチにする」を実践する時に大事なことが3つあります。
それが、本講演のタイトルにもなっている以下の3つです。

「体験のデザイン」「リーン」「アジャイル」


まず「体験のデザイン」は「ユーザーの使いたい」ものをつくる。「使わねばならぬ」ではなく「使いたい」ものをつくるということです。

次に「リーン」ですが、これは「最適な順番と内容でつくる」ことです。
最後に「アジャイル」ですが、「アジャイル=早い」と解釈されることも多いのですが、そうではなく「変化に対応しながらつくる」ということです。
この3つが組み合わさることで「本当に良いものができるよね!」というのが、私たちが考える「最新のデジタルプロダクトのつくり方」です。

なお、前回の記事で述べたアジャイルは、組織のアジリティも含めた広義のアジャイルを指していましたが、より具体的な内容を述べる今回からは、アジャイルはアジャイル開発を指します。

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この3つは一つでも欠けてはいけないもの「劉備・関羽・張飛」のような。「かしゆか・のっち・あーちゃん」のようなものと考えるわけですが、各々が欠けるとどのような状態になってしまうか、お話ししていきます。

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それぞれの要素が欠けると何がいけないか?

まず「体験のデザイン」が欠けるとどうなるか。それは即ち「ユーザーの欲しいものにならない」ことを意味します。そして「競合との違いが出せなくなる」ことも起きてくると考えます。

「一般的に求められている機能」を「よくある導線で」設計したものとなると、ユーザーは「使わなければならない状況」であれば、使ってくれる可能性はあるものの、少しでも「体験のデザイン」を考慮したものが出てきた時にそちらに乗り換えてしまう可能性は高いですし、「コスト」や「スピード」で勝負する必要が出てくるため、ものづくりの現場を疲弊させる原因にもなってしまうと考えます。

次に「リーン」が欠けるとどうなるか。まず「MVP(Minimum Viable Product = 実用最小限の製品)が定義できなくなる」問題が生じます。そして「計画よりも予算や期間が膨らむ」問題も出てきます。

ミニマムで開発していく。とにかく先ずは「出してみる」という考えがチーム全体に浸透していないと、プロジェクトのやりたいことはどんどん膨れ上がってしまいます。

例えば、自社の開発期間中に競合他社が出した類似アプリに、ユーザーからとても評判の良い機能が搭載された際、それが開発中のアプリのコアなユーザー体験には全く影響を与えないにも関わらず「追加でこれも載せましょう」などという判断が行われたりしがちです。

小さく区切った期間で常にミニマムな目標を設定し、それをクリアしていくやり方を取ることで、足取りの軽いものづくりが実現できると考えます。

最後に、アジャイルが欠けているとどうなるかですが、「状況に応じた変更ができない」ことや「開発がたまって、リリース頻度が下がり、リリース単位が大きくなった結果、品質に影響する」という問題も起こりがちです。ですので、この3つが全て揃っている状況を作ることがとても重要であると考えます。

ウォーターフォール型の開発が合うものづくりの現場(とても大規模なシステム開発など)もあると思います。しかし、今回お話ししているような「ユーザー体験」を重視した「デジタルプロダクト」の開発現場においては「アジャイル開発」を用いることで、何か大きな変更が生じた際に対応しやすくすることや、どこかでトラブルが起きた時に柔軟に対応出来る体制を築く方が効率的であると考えます。

ですので、この3つが全て揃っている状況を作ることがとても重要です。

源流には「日本のものづくり」がある

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ここまでにご紹介してきた考えの源流をたどっていくと、80年代の日本のものづくりにぶつかります。まだ『Japan as No.1』だった頃に、アメリカなどで日本のものづくりが学術的に研究され、そこで生まれた考えが逆輸入され、日本に入ってきたのです。

日本人はそこにもっと誇りを持って良いと思いますし、日本人は、そのようなものづくりができる人たちなのではないかと思っています。

具体的には「LEAN」は、トヨタ生産方式(TPS)をアメリカで研究した結果「LEAN生産方式」と呼ばれ、今「リーン」という形で再来しています。

アジャイル開発にも色々な方法がありますが、そのうち70%を占めると言われている「SCRUM」も、元々は日本のものづくりの現場から生まれたものです。一橋大学の名誉教授である野中郁次郎先生がホンダとキヤノンを研究した結果、彼らの「一体となって作る、ものづくりのやり方」を「SCRUM」と名付けました。それを、ソフトウェア開発の現場で応用したものが「アジャイル開発」という形で戻ってきているのです。

つまり、今の最先端のものづくりは、80年代の日本のものづくりが原型となっています。しかも、たとえば野中先生のSCRUMの概念の中には形式知化できない暗黙知の要素も多々あります。アメリカで形式知化されて削ぎ落とされたそれらの要素を、その源流である日本人は歴史的に持っています。ですので、日本人がこの新しいSCRUMを逆輸入し、そこに再度暗黙知の要素を組み込めば、より高みを目指せるのではないかと思っています。

代表の根岸は、いつも「タイガースパイクの仕事を通して、クライアントを輝かせ、日本をもっと元気にしたい」と言っています。

その背景にも、こうした底力を持つ日本だからこそ、それが実現できるという確信があるのだな、と今回改めて私も感じました。

「最先端のものづくり」のプロセス

ここからは、具体的にものづくりをどのようなプロセスで行っていくかについてのお話です。下の図は世界中の様々なフレームワークを組み合わせた上でタイガースパイクのオリジナル要素を加えたものです。

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こちらの図において重要なポイントをStep by stepでご紹介いたします。

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まず、左側の円が「体験のデザイン」を。そして右側の円が「リーン」と「アジャイル開発」を示しています。

「体験のデザイン」のプロセス

まず、左側の円の「体験のデザイン」のプロセスについて。
「体験のデザイン」の効能として「 『ユーザーが使いたいもの』が作れるようになる」というお話をしましたが、実現するのはとても難しいことです。

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ユーザー視点に立ち「誰が・いつ・どこで・何を・なぜ、求めているか」を探ることによって、サービスやデジタルプロダクトの要件を明確にします。

最終的に「コアバリュー」と呼ばれるものや、「ユーザーストーリー」と呼ばれるものを描くことがゴールとなってきます。

そのために行う具体的なアクティビティとしては
・ペルソナ作成
・ユーザージャーニーマップ作成
・仮説アイディアの創出
・ユーザーテスト/現場観察の実施
・ユーザーストーリーの作成

などがあります。

「リーン」と「アジャイル開発」のプロセス

リーンとアジャイル開発とは何かというと、左側の円で定義した「ユーザーが使いたいもの」に必要な要件を満たす「最低限の製品(MVP)」を定義し、素早く作る。そして作りながら計測し、変えていくことです。

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具体的なアクティビティの例としては
・MVPの定義
・プロダクトバックログの継続的な作成
・スクラム手法による開発
・計測ポイントの設定
・データに基づいた改善施策のリリース

などがあります。


さて、次回はこの2つの円の中で重要だと思う5つのポイントに話を絞って「体験のデザイン × リーン × アジャイル」を進めるコツをご説明します。
お楽しみに!

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