見出し画像

フィンランドアントレプレナーシップ レポート①

皆さんこんにちは、タイガーモブCOO中村寛大(なかむら・かんだい)です。

ただいま、フィンランド滞在中です。先週39°の熱が出て、海外出張行けないかと思って、本気で焦って体調を治すために、ウイダーインゼリーを全種類飲みました。(その後、食当たりだと発覚。)

壮絶な戦いを制して、無事フィンランド3日目。とてもたくさんの学びがありました。

今日は、【アントレプレナー】というキーワードで皆さんに学びをシェアできればと思います。


1. 今回参加した理由

画像4

ものすごくざっくり言うと、

教育を軸にした起業家創出の仕組みができているから、それを参考にタイガーモブの実践教育にもエッセンスとして加え、ユーザーの皆さんにお伝えできることや提供できる価値を高めていきたいからです。

実は、今回のプログラムは自身が企画者でもあり、一緒に運営している、田中航さんは、以前からの知り合いでもあります。

▼田中航さん
リクルートコミュニケーションズ、仕事旅行社を経て、独立。未来を描くをもっと楽しくするをテーマに合同会社aademoを設立。「旅」×「ビジョンづくり」を切り口に、北欧への旅をプロデュースしている。現在、フィンランドのOulu市に夫婦で在住。フィンランドを中心に、個人が個人の未来を描くためのヒントを日本に向けて発信し続けている。趣味は、アウトドアと旅行。テント片手に観光ガイドにも載っていないとっておきの場所や人をいつも探している。マイブームは「森」。森の中でソーセージを焼くのが至福の時間。

奥さんでもある、田中潤子さんが、オウル大学に進学することをきっかけに、移住されて、そこから話が具体的に進んできました。8月から話をスタートして、12月に企画をローンチしました。

僕自身、アントレプレナーとしてのアイデンティティが芽生え始めていることや、検証したい仮説がたくさんあるエリアということもあり、社員ですが、トラバケ(タイモブのリカレント教育の社内制度で、虎とバケーション。虎に化けるを掛けた造語。)を活用して参加することにしました。

 Facebookにも投稿しているのですが、事前の企画段階や、書籍を読んでいる中で立てていた仮説の一部がこちら。

・小学生の頃から「WHY」を大切にした学びの設計がされており、TEACH(教える)ではなく、COACH(コーチする、指導する)が先生の役割
・NOKIAが倒産しかけたことや、自分の時間をコントロールできている人が多いから、「自分の足で立つ」ことを意識できている人がとても多いのではないか
・自然と共生することが当たり前になっているからこそ、そんなに意識せずに気候変動やエネルギーへの取り組みができているのではないか。
行政と企業の連携が日本とは異なる形になっているからこそ、起業に対しての意識が芽生えやすく、支援もわかりやすくなっており、お互いが手を取り合って、新しいマーケットの創出、イノベーションの創出に向けたアクションがなされているのではないか。

こんな感じで考えていました。


2. フィンランドってどんなところ?

画像3

(ヘルシンキの空港着いたら、いきなり味千ラーメンは衝撃だった)

詳細はWikipedia さんに譲ります。


現在の気温は-9°。寒い感じがしますが、意外と耐えられる感じです。(ヒートテックの極暖様様。)

北極圏に近い、オウルという街に滞在しています。

画像5

アントレプレナーシップ以外で驚いたフィンランドの側面は、

・10時間くらいで着く。ヨーロッパの玄関口になっている。
・8時〜16時の就労時間で、みんなさっさと仕事を切り上げて帰る。(5時とかまで残っているとラストになるとのこと)
・福祉国家の側面も強くあり、とても税金が高い。すなわち物価も高い。(空港でホットドックとビール頼んだら、それだけで18ユーロ。2000円…マクドナルドが余裕で1000円超える。)
・家族の時間をものすごく大事にする。外で飲む文化があんまりない。
・ケバブのお店がなぜか多い。(参加者の方に聞いたら、ヨーロッパは結構そうらしい。)
・フィンランド語が全くわからない。(完全に呪文。英語が頼みの綱。)
・家にサウナが普通にある。(神!)
・家の中があったかい。(外は寒いけど、中は半袖でも楽勝。)

とこれだけでも、かなり気づきがあります。


3. フィンランドでアントレプレナー意識が芽生える秘密

画像10

フィンランドの人は、もともと全く起業なんて選択肢になかったそうです。そんな国民の皆さんが、アントレプレナー意識が芽生えるきっかけとなったのは、世界でも有名な通信・携帯会社の「NOKIA(ノキア)」(日本で言うとTOYOTAさんくらいの国民の認識)の倒産の危機がきっかけだそうです。

もともとは超大企業思考のフィンランド国民でしたが、「あのNOKIAでも潰れるの!?」と衝撃を受けました。そんな中アメリカのシリコンバレーを視察したフィンランド人の若者が、現地にインスパイアされたことで、SLUSH(スラッシュ)などのピッチイベントや、STARTUP SAUNA(スタートアップサウナ)などのインキュベーション施設が生まれました。

また、実際に失業者が街に溢れ、その人たちを救う手段として起業の選択肢が提示されたりする中で、教育改革も相まって、アントレプレナーシップが芽生えてきたと現地の人は口を揃えて語ってくださいました。

そんな、フィンランドのオウル市に今回は訪問しました。

4. フィンランドのオウル市の情報

画像11

オウル市は、フィンランドの中で5番目に大きな都市。人口は20万人から25万人います。(留学生が多く、正確な人数はあんまりわからないそうです。)フィンランド全体は少子高齢化が進んでいますが、オウル市は学生が非常に多いため、平均年齢38歳と若い街になっています。

オウル市は、通信技術の発祥の地と呼ばれています。
2Gや3Gはノキアの無線通信の研究開発拠点があり、ここから生まれたと言われています。(今の携帯電話の通信の基礎を作ったと言うことですね。)
今メインストリームとなっている、5Gもここオウルから生まれたと言われています。研究開発はオウル大学と連携して進められると言われており、フィンランドの国家プロジェクトでもある6Gの舞台にもきっとなるはずです。

知っている方もいるかもしれませんが、エアーギター選手権は実はオウル発祥なんです。(このビジネスモデルも結構秀逸で面白かったです。)

5. どんな起業家がどれくらい生まれているの?

人口20万人の街で、2014年から2016年の間に500件のスタートアップが誕生しました。これも毎回のことで皆さん聞き飽きているかもしれませんが、オウルは、「フィンランドのシリコンバレー」と呼ばれており、NOKIAのネットワーク部門が拠点を置いていたこともあり、ハードウェア系の起業家が非常に多いです。

画像9

なぜ、このような起業家が多いかと言うと、もともとエンジニアの大量の失業者が出たが、その人たちが起業したことにあります。そして、学術都市でもあることから、研究開発をする土壌があり、且つ物づくりをしやすい環境がオウルにあったことにある、とオウルのスタートアップを支援するBusiness Oulu(ビジネス・オウル)の貴子さんが教えてくれました。

画像7

今ではオウルは、都市としてもV字回復を果たしました。その回復の象徴として、一人当たりのスタートアップへの投資額はヨーロッパでTOP3に入ります。(オックスフォードとケンブリッジに次ぐ投資額を誇ります。)

その要因は、ハードウェアだから、お金がかかることとも言われていますが、何れにしても多くのお金を集めるだけの魅力的なスタートアップが生まれている震源地であることは間違いありません。


画像6

(訪問した難民や移民を支援する企業さん)


画像2

(スタートアップを支援する投資家)

6. なぜここまでスタートアップが伸びているか。

僕なりの結論は、「行政・学校・企業の連携が非常にうまくいっていること」です。トリプルヘリックスモデルイノベーションとも表現されていましたが、とても面白いと感じたポイントはここです。

もう少し細かく表現すると、行政ゴール:「雇用の増加による税収増加」、学校ゴール:「生徒の雇用促進、研究開発費用の獲得」、企業ゴール:「事業成長」がうまく噛み合った相互扶助の形態が形成できたことが大きいと感じています。

具体的な支援の形として、行政機能を果たすBusiness Oulu(ビジネス・オウル)は、失業者の再雇用支援と、起業を考える全ての人にとって無料で相談・施設やネットワーク、外部への売り込みのサポートをしてくれます。

画像1

教育機関である、オウル大学、オウル技術大学は、学校カリキュラム内に複数の起業家育成プログラムを持つことで起業家育成に力を入れ、若くから技術力のある人材を育てたり、新しいビジネスシードを獲得していたりします。また、起業の擬似体験をすることで、人材レベルの向上も実現しています。

企業としては、行政を一緒になって歩みを進めたりすることで、基礎研究のスピードがアップしたり、インターン生を受け入れることで、優秀な人材を少ないコストで獲得できる環境が手に入っています。

また、お話の中で印象的だった点がもう一つ。「起業のハードルが低いこと」です。

10名弱の起業家の方にお話を伺う機会がありましたが、皆が非常にライトに起業をしている。(個人事業主などもアントレプレナーと呼んでいる。)そんな印象を持ちました。
その象徴的な事例として、「どんなミッションを持っているの?」と言う質問をした時に、「ミッションも何も、まずは楽しいからやってみたんだよ。」と言うような内容の返答があり、それをさらに深掘りしていこうとするが、そんなに別に小難しく考えていないと言うこともわかってきました。これは、福祉国家ゆえ、セーフティネットがしっかり形成されているからと言うことと、大学までの学費が無料だから、いくらでも学び直して、新しいチャレンジができる土壌があることが要因だと考えられます。

画像8

個人レベルでも、「失敗」と言う概念が存在せず、「学び」と捉えて、そこから次に生かせることはなんだろうと学ぶ姿勢が常にあることがとても印象的です。(本当に、驚くほど失敗したと言う概念がないのです。)


7. 個人の仮説に対しての検証

実際にフィンランドに来てみたところで、冒頭で書いた仮説の検証をしてみたいと思います。

・NOKIAが倒産しかけたことや、自分の時間をコントロールできている人が多いから、「自分の足で立つ」ことを意識できている人がとても多いのではないか
 →まさにそう。逆に他人にあまり興味がなく、「質問がないってことは、納得しているもしくは、何も問題ない」と言う解釈がされるほど。笑
 自分で責任をきちんと持ってやり切ることや、自由や信頼を大切にしているからこそ、裏側の責任もきちんと果たせる状態になっている。

・行政と企業の連携が日本とは異なる形になっているからこそ、起業に対しての意識が芽生えやすく、支援もわかりやすくなっており、お互いが手を取り合って、新しいマーケットの創出、イノベーションの創出に向けたアクションがなされているのではないか。
 →連携がうまく動き出すことに6年の歳月がかかったらしいが、非常に連携もうまくいっていて、取り組みを動かすフェーズから次のフェーズに移行している。(ちなみに、フィンランドはマーケットが小さいから、そもそもグローバルを意識したサービスデザインになっていて、そうでないと話にならないと言う理解が全ての起業家の中でされている。)

8. 日本に帰って実践したいこと

最後に、勝手に妄想していることが3つあります。

 1.フィンランドの起業家教育カリキュラムをタイガーモブのプログラムへ応用すること
 2.現地の「start up refgees」との連携
 3.この情報をより多くの人に詳細に伝える機会の実施

画像12

次回は、「教育」と言う切り口から記事を書きたいと思っています。

もし、記事を拝見して興味を持ってくださったら、あと数日フィンランドにおりますので、ご質問などをいただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします!

▼寛大が参加したプログラムはコチラ
【1st Entrepreneur camp】世界No1教育大国フィンランドで起業家マインドを発展させる7日間




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?