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家に住めない人との旅 4

前回はロードトリップへ出た初日に、奇跡的に見つかったガソリンスタンドにギリギリのところで救われたところで、話を締めくくりました。

パートナーの二コーラは今まで出会った人(大きく言って普通の人)と違ったところが色々とあります。たとえばこのガソリンスタンドに到着するなり一人でお店に入って行き、フライドチキンを買ってきて一人でムシャムシャと食べ始めるようなところです。私はプラントベース(ヴィーガンのようなもの)の食事なので、典型的アメリカンフードで育った彼とは食生活は大きく異なるのですが、彼は私のそのライフスタイルを何でもないことのようによく無視します。そして自分と同じものを食べさせる傾向があります。

私はその日は朝からてんてこ舞いで何も食べるチャンスがなかったため、午後3時を回り空腹なのは言うまでもありませんでした。彼は半分くらい食べた後で、残りのフライドチキンを私にくれました。このような扱いを受けることはよくあります。それをお利口な介助犬レニーと一緒に食べました。ネコ達も一口ずつ油のないところをもらいました。

空腹な時はチキンだろうがハンバーガーだろうが有難く戴きます。そのような空腹時を共にするのは、この人とは珍しくありません。クリーム色のラブラドルレトリバーのレニーを見ていると、私もまだまだ我慢しなきゃとよく思います。実際彼は私を犬だと思っているのか、同じような扱いをすることがよくあります。

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アメリカのハイウェイ沿いのガソリンスタンドは、日本のサービスエリアとちょっと似ています。これは私はいろんな国で訪れてみたい所のひとつです。国民性が現れる面白いところだと思います。
日本でもたくさんのレストランが並んでいて、お土産屋さんがあり、自販機がたくさんあり、、とそのくらいしか覚えていませんが、アメリカのも広いです。

同じくハイウェイ沿いにあるレストエリアは、お手洗いやピクニックテーブル、散歩できる小道、場所よってはペットを散歩させるスペースなどがありますが、ガソリンスタンドやお店はありません。

これはトラックストップと呼ばれる所でガソリンの給油の台が20-30台位あり、売店もデパートのような広さで、何から何まで入手できます。長距離運転者が数時間休憩時間をつぶせそうで、また夜間睡眠を取っていくドライバーのためのシャワー設備がある所もあれば、私はまだ見たことはありませんが、ムービーシアターがあったりもするようです。彼はSemi truck(セマイトラック)というタンクローリーのような大型トラックのドライバーをしていたこともあり、この辺りのカルチャーには明るいようです。

食べ物は典型的なアメリカンフードで、バーガー、フライドチキン、サンドイッチ、サラダ、そんな感じです。ありとあらゆるデザート、ドリンク、アイスクリーム類も充実していて、健康を考えなければおいしそうなものもたくさんあります。ところが彼はこの手のフードで育って体を壊しています。今一番食べてはいけないもの、たとえばフライドチキンだったら、過度の塩分、低品質の揚げ油、劣悪な環境で育てられたくさんの薬物を注入され殺戮されたチキン、を平気で食べます。そして数時間後に体のあちこちに痛みが走り、血圧を上げ、一晩中苦しむことになっても、たくさんの錠剤を口に放り込むだけで、また同じことを繰り返します。

私達はこれについてもう何十回と議論を繰り返して来たので、今では何も言わないようにしています。子供ではないし、自分の人生だし、他人を変えることはできないし、助けを必要としていない人を助けることはできません。彼の妹も私と似ているライフスタイルですが、

「馬を水際まで連れていくことはできても、水を飲ませることはできない。」

と言います。一方私は20代の頃から健康オタクで、それでも幾つかの疾患と闘いながらマクロビ、ベジタリアン、ヴィーガン、そして現在はプラントベースと移行しながら、食事だけでなくあらゆる角度から生活を見直す Life Style Medicine を励行するようにしています。つまり私達は両極端にいる変わったカップルです。なんで一緒にいるのかよく疑問に思います。

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慌ただしかった初日が暮れかかっていました。私は助手席でカリフォルニアからネバダへ向かいながら夕陽を眺めています。一つ付け加えるべきことは、二コーラは私の家へ到達する前日に既に10時間の運転をしていることです。なので私より更に疲れていて、無口なのは仕方ないかもしれません。

音楽もラジオも聴かず黙々と運転を続けます。元々音楽の趣味がとても違うので私は何も音がなくて幸いなほどです。また運転を交代することは彼には考えられないようです。自分の車を他人が運転するのが嫌なのです。私も彼が横にいると自動車教習所の日々を思い出して、ちっとも落ち着いて運転できないのでちょうどいいのですが。

どうやら今夜中にタホー湖まで辿り着くことは難しそうなので、ネバダ州のカジノの街Renoでキャンプ場を探すことになりました。例のごとく勝手にファーストフードのドライブスルーへ入って行き、これはきっと夕食だな、と思いながらバーガーを食べました。私は少しでもファーストフードを減らすためにフードを持って来ましたが、今はとてもその荷物に到達しません(積み過ぎていて荷物を容易に出せない)。彼が積んだので、何がどこに積まれているのかさえわかりません。たとえフードが家にあっても、節約しないといけない時でも、彼はその時食べたいもの以外は頑として食べないタイプなのです。なので彼と一緒にいるといつも彼が食べたい時に、彼の食べたいものを一緒に食べることになり、彼が食べない時は私も半日でも空腹を我慢することになります。私のこれまで知っているパートナー(普通の人)だったら、

「お腹すいた?」
「何食べようか~?」

が通常の会話なのですが、この人とはそういう会話はまず発生しません。そういう意味でも私はレニー(彼の介助犬)の延長だなと思うことがよくあります。

まぁ今日は初日でガタガタしたし、明日から私の持ってきたインスタントポット(電気圧力鍋)や電磁調理器をソーラーを使って稼働しよう、と思い直して、とにかく今夜泊まれる所を探さないといけなくなりました。ネコ達も既に5時間くらい缶詰でそろそろケージから出してあげたいところです。

それがどういうわけか、キャンプ場は10月だというのにどこも満杯でした。殆どの利用者はRV(モーターホーム、キャンピングカー)ですが、それにしても3つのキャンプ場を実際にぐるぐる回って探しましたが「満室」でした。
「こんなにキャンプ場を探すのが困難だったことは一度もない。」
と彼は言っていましたが、私はキャンプ場やキャンプやらについてはあまり知識がないので、助手席で急にスマホで探せと言われてもなかなか要領を得ません。もう辺りは真っ暗で時間は8-9時くらいだったでしょうか。


(つづく)

もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます