素材の持ち味
私の部屋にはコンロが一口しかないので、自炊をしたての頃は時間短縮のために肉も野菜もとりあえず何でもかんでもフライパンに放り込んで、味付けも手当たり次第調味料を加える豪快な炒め料理をしていた。
だけどある時、料理は1つの素材だけで作ると、その素材の良さがシンプルでありながら十全に活かされることを発見した。
肉なら肉だけで焼いて塩を振るのが一番美味しいし、野菜もナスならナスだけで炒めてポン酢を垂らすと本当に美味しい。
何もかもいっしょくたにして、みりんやら砂糖やら加えて味を整える必要はないのだ。
考えてみれば、素材によって一番美味しく仕上がる調理器具や調味料、焼き時間や火加減など異なるのに、それらをいっぺんにまとめて作ろうとしたら見た目上は揃ってても、一つひとつの素材の良さが活かしきれないのは当然だ。
人間にも同じことが言える。誰しもが自分に合ったタイミング・方法・道筋などに則れば、たくさんの調味料を加えるように理論武装しなくても、少ない纏いもので素材の良さが最大限に表れる。
でもそれを周り全員ひっくるめて画一的に進もうとするから、他人にとっては良いかもしれないが自分には大して合わない飾り方をして、気付かぬうちに本来の魅力が引っ込んでいたりする。
でもやっぱり日々生活しているとついつい忘れそうになるから、そんなときはおんなじキノコでも、エリンギも舞茸もしいたけもなめこも全部違う美味しさがあることを思い出すようにしたい。
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