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プロフィールサイトlit.link代表が「UI、デザインは中学時代に『RPGツクール』から学んだ」と断言する理由

プロフィールサイト「lit.link」、コミュニティSNS「WeClip」の開発・運営をするTieUps株式会社代表取締役の小原史啓(おはら・ふみひろ)。

「日本一、SNS発信のエンゲージメントが低い起業家じゃないですか(笑)」と自嘲する小原だが、そのキャリアは「美大出身」「デザイナー志望」「家電量販店で携帯電話の営業」などなど、多岐に渡り捉えどころがない。

彼のキャリアを掘り下げると、「『lit.link』のデザインやUI/UXの思想の源は『RPGツクール』です」という意外な発言が……。

キャリアを振り返ってもらいつつ、現在の事業にも活きる「詰め込むデザイン」「言語の多様性」という彼にまつわるキーワードを解説してもらった。

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“デザイナー志望”も、小さな広告代理店で「手と受話器をガムテープで固定されて電話営業」の日々……

僕は、いわゆる“昭和の働き方”を教えられて、現在ITの事業をしている「狭間の世代」だなと思うんです。

――美大出身とおうかがいしているのですが……。

そうですね、美大にいながら、働く必要が出てきて、小さな広告代理店にデザイナーとして入社したんですよ。代理店と制作会社が一体化したようなところで、そこのデザイン部門です。印刷物系のパンフレットとかの制作を行っていました。

ただ、給料は10数万円だし(笑)、「小原くん、キミの仕事ないから自分で営業してとってきてね」っていう状態。

――なかなかブラックな。

そうです。飛び込み営業もしますし、「はい」って紙の電話帳を渡されて、“100件電話終えるまでやめるな”みたいな営業手法。

今だから言えますが、「受話器にガムテープで手を固定されて、ひたすら電話をかけ続ける……」みたいなこともありました。

それなりに頑張りはしましたが、本音でいえばデザインをやりたいと思ってるので、なかなかついていけずに結局半年ぐらいで辞めてしまって。

――その後、家電量販店に入社されてるんですよね?

そうです。本当に“つなぎ”のつもりで、大手家電量販店の派遣社員になりました。

ところが、売上がやたら出てしまったんですね。

――なぜそんな挽回劇が……?

当時、「FOMA」が出たばかりのころの携帯電話の販売店に配属されて、いわゆる「売り子」です。

ショッピングモール内のお店なんですけど、代理店のころに「1日100件架電」とかをさせられていた身からすると、「みんなお店で待っているだけじゃないか?」と思ってしまって(笑)。

営業経験が活きたんですかね。お客さんは自分から探しに行けばいいじゃないかと思って、ショッピングモールのなかでお客さんを探して……。

気が付いたら21歳で7店舗を担当するマネージャーになって、「最年少マネージャー」と呼ばれるようになってましたね。

――順調な出世ですが、現在の事業とはまったくかけ離れていますね。

そうなんですが、あるタイミングで、「アプリの立ち上げをやるから、小原やってみるか?」っていう話になったんです。

お店のポイントカードをアプリ化したようなもので、いま考えると特に機能もない単純なものでしたが、そのタイミングで顧客のデータ管理とかPOSデータの分析にも関わらせてもらいました。今の時代では難しいのかもしれませんが、当時は様々なデータにアクセスできて、貴重な情報の宝庫だったんです。「これはめちゃくちゃ面白いな」と。

そのあたりから「ITってインパクトすごいな」と実感するようになったんです。

――アプリを利用したマーケティングから、ITの世界にのめり込んだと。

ただ、当時は色々なデータを取得して分析しても、結局アウトプットは印刷物に反映しなきゃいけなかったんです。

どういうことかというと、データを分析して出た結果、“こういうものが買ってもらえそうだから、顧客にDMとかチラシを送ろう”っていう考え方で。

それで伸びしろの限界を感じたんですね。自分がやってきたことをさらに活かすには、データの領域しかないんじゃないかと思って、30歳でマクロミルに転職しました。


デザインの原体験は、カチカチとドット絵をつくっていた『RPG』ツクール

――マクロミルでのデータ分析が、現在の事業の礎になっているんですね。起業家や経営者の方は「あの衝撃があったから、今の自分がある」という“原体験”を語る方も多いですが、ほかに小原さんにとっての“原体験”はあったりするのでしょうか?

僕の原体験は、『RPGツクール』ですね。

みんなが『スラムダンク』とバスケットボールに夢中になっている中学生のころ、「パソコン部」に入ってたんです。

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――『RPGツクール』。ロールプレイングゲームを自分でつくれるという人気ソフトですね。

そう。デフォルトで背景とかキャラクターの画像素材が入ってるんですけど、当時のソフトって自由度が高くて、僕はそれを全部消して、自分でつくり直してたんです。

いわゆる「ドット絵」でカチカチカチカチと……。1枚つくるのに4時間ぐらいかかって。

――すごく中学生って感じですね(笑)。

でも、僕にとっての「デザイン」の原体験はそこにあって。

グラフィックをつくるということもそうだし、ゲームをつくっていくとUI/UXの話になってくるんですよ。

たとえばストーリーのこの時期にこのモンスターと出会うから、ユーザーはこういう心理状態のはず。だからこれぐらいの恐怖感を与えるべき……とか。

次にこういうアイテムを使わなきゃいけないから、そっと何かに気付かせる……とか。それは誰にも教わってないけど、感覚としてゲームから教わったと思ってますね。

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今の世代だったら、何かをつくるにしても、環境的な制約がない場合がほとんどですよね。それは自由度が高くてうらやましいと思う一方で、僕は「制約がある環境」で生まれ育ったことがよかったとも思っていて。

僕の考えるデザインは「ギャルっぽい」と言われることが多いんですよ。

――ギャルっぽい!?

「制約の中で詰め込む」というか……。iモードのサイトとかもそうでしたよね。小さい画面のなかで、絵文字とかをつかって何とか表現しようと詰め込むという。

僕らが90年代に触れてきたものって、幕の内弁当のようにギュッと詰め込まれているんです。

RPGツクールでも、当時はデータ容量に限りがあるから、同じデータを使いまわして何とか詰め込むということを考えていた。木に見えるパーツでも、文脈を変えたらお城の壁に見えないか……みたいな。

――初期の『ドラクエ』も容量を節約するために、使う文字を制限していたと聞いたことがあります……。その感覚が今に生きている?

そうですね。日本のデザインの悪いところって、分岐条件が多すぎることだと思うんですね。

家電で言うと、テレビのリモコンとかがそうですよね。

「わかりやすく伝える」ことを考えたときに、本来はもっともっとシンプルにしたほうがいいはず。その感覚は、やっぱりカチカチとドット絵をつくってた少年時代に培われていたと思いますね。


軸のない“グラグラキャリア”のおかげで手に入れられた「言語の多様性」

――ゲームからUI/UXを学び、社会人になってからは営業、データ分析とかなり多岐に渡るキャリアですが……。

僕は正直、自分のことを“グラグラキャリア”だなと思っています。一貫性がない。

そういうコンプレックスは、正直学生時代からあったものなんです。運動も勉強もそこそこにはできるけど、何かに打ち込んで大会に出る……みたいなことが苦手だった。先生からも「お前は全部中途半端だな」と言われてきたんですね。

「一流」と胸を張れるものがない、と言ってもいいかもしれません。

ただ、今となってはそれがよかったかなと思っていて。グラグラキャリアの人は、色んな言語が理解できるっていう強みがある。

――言語というと?

たとえば一流の営業マンって、普段は「もっとこういうマーケティングをすべき」とか「こういうアプリをつくるべき」っていくらでも言えるのに、いざ「じゃあデザインを考えましょう」ということになって、そういった場に出ると、なぜか口下手になってほとんど話さなくなってしまう。

――よくある現象かもしれません。

これは逆の現象もあるんですが……。結局、「発言する能力」って、環境に依存してしまうと思うんです。“自分たちの職種、業種のルール上でだけは喋れるけど、外に出ると何も言えない”という。

僕はキャリア的にも、ある意味で全部が中途半端。でも「営業、デザイン、UI/UX、データ…」という複数の言語がわかるというのは、経営者としては強いなと思うんです。

――それぞれの専門家を束ねるときに、すべての人の主張を理解できるという。

そうなんですよ。昔は「美大に行ってデザイナーになりたかったのに……なんで小売業界にいるんだろう」みたいな苦悩もあったんですけど、今になって考えれば、複数の言語を理解できるという希少性を手に入れられた。

キャリアの後半では意図的に“次はこれを手に入れよう”と動いているところもあります。

ジョブズの「Connecting the dots」じゃないけど、バラバラに手に入れたものが経営という軸で結びつくことがある。今の仕事が何につながっているのかわからないという人も、そういう視点で見てみると面白いんじゃないかなと思いますね。

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小原史啓 lit.link:https://lit.link/ohara

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