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【小説】バージンロード vol.11「どうしよう」

しかし、ことはそれだけでは終わらなかった。


大輔に出会ってから2ヶ月が過ぎようとしているとき、私は異変に気がついた。

もっと早く気づくべきだったのだが……。



来ないのだ。

生理が来ないのだ……。


焦った私。そういえばなんだか体調も悪い気がする。

風邪かなと思っていたが、まさか……。

私はすぐに妊娠検査薬を使って検査した。


陽性だった。


それはつまり、妊娠しているということだ。


誰の子どもかわからない……。


誰の子どもかわからないことを三人に話さなければいけない。

特に可能性が高いのは大輔だ。

でも、聞き入れてくれるだろうか。


私は久しぶりに大輔に電話してみた。

つながらない……。

どうやら着信拒否にされているようだ。

メアドも変えられているようでつながらない。

それならばと公衆電話からかけてみる。

つながった!


大輔は不審がった様子で電話にでた。

『もしもし?』

『もしもし?私、あゆみ!』

『!』

『実は、話したいことがあって……』

『何』

大輔はかなり冷たい声で言った。

『実は、私、妊娠したみたいなの……』

『で、何?』

『で、って、多分大輔の子どもだと思うの。だから……』

『俺には関係ない』

と話す私に畳み掛けるように言うとガチャっと電話を切ってしまった。


私は途方にくれる。


次はソウに電話してみる。

そうは話を聞くと

『困ったねぇ、どうしようか』

そればかりを繰り返した。

私は、レンにも言ってみると言って電話を切った。


レンに電話する。

3コール目で電話をとるレン。

『もしもし?』

明るい声が聞こえる。

その明るさに、言い出せなくなりそうで電話を切りたくなる。

『もしもし?あゆみ……』

やっとのことで声をだす。

『実は、相談したいことがあって』

『なぁに?』

『私』

『うん?』

『私、妊娠したみたいなの……』

『えっ?本当に?』

『うん』

泣きそうなのをこらえて返事をする。

『今から会ってから話そうか』

意外に落ち着いているレンの声。

『うん……そっちまで行ったほうがいい?』

『いや、迎えに行く。どこにいる?』

レンの優しくしっかりした声に少しだけ安心感を覚えながら、私は返事をした。


レンはものすごい早さで迎えに来た。

かなり飛ばしてきたのだろう。


「アパートに一回戻ろうか。ジュースも買って帰ろう」

「うん……」

私たちはアパートに戻ると近くのコンビニで飲み物を買って帰った。


「大丈夫?」

レンに聞かれ

「大丈夫じゃない」

と泣き出す私。

私をなだめながら、

「検査はしたの?」

と聞くレン。

声はどこまでも優しい。

「うん、検査薬で」

「病院には行った?」

「まだ行ってない」

「そうか……でも妊娠してたのは間違いないんだよね?」

「うん、今時の検査薬は正解率が高いって」

泣きながら私が言うと、レンは少し考えてこう言った。


「結婚しよう」


「え……大学は……?」

「やめて俺も働く」

「そんなの無茶だよ」

「だって俺にも責任あるし、ほっとけないし。俺なりに責任を取る」

「だって誰の子どもか……」

と言いかけた私の声をふさぐように、

「とりあえず明日親に話してみる」

と言った。

「そのあと、あゆの親にも話にいこう」



私は期待していたわけではなかった。

誰の子どもかわからない子どもを、誰かと育てるなんて考えてなかったから。

でも、堕ろすのは怖かったし、せっかく授かった命なら産んであげたい、そういう気持ちもあった。



「産んで一緒に育てよう?」

優しく言うレンに、抱きついて泣いた。

泣いて泣いて泣きつかれてその日は眠ってしまった。


次の日、レンが誰かと電話しているときに目が覚めた。

何か言い争いをしている……?

私が起き上がると、レンは

「とりあえず今日は向こうの親に挨拶に行ってくるから!」

と最後に言って電話を切った。

親に電話してたんだ……

私はなんだか申し訳無さで一杯になった。

「起きれるかな?体調は大丈夫?」

レンが優しく私を抱き起こす。

私はこんなに愛されていたんだ……と感じ、涙が出た。

また泣き出しそうな私を抱っこすると、レンは、

「今日は体調が大丈夫なら、あゆの家に行こう」

と言った。

私はコクンと頷いた。



うちに帰ると、父も珍しく早く帰宅していた。

話があるというと、母は緊張した面持ちになった。

「実は、あゆみさんが妊娠してしまって」

レンが話を切り出す。

「俺なりに考えた結果、俺が大学をやめて働いて、結婚しようと思います」

「そんな、ご両親はなんておっしゃっているの?」

母が震える声で聞く。

「両親は反対していますが、俺がきちんと話をつけたいと思います」

父は考えて、

「レンくんが大学をやめて働くと言っても、このご時世、そう簡単に仕事があるわけじゃない。子どもを育てるのはきれいごとじゃない、お金も、自分の人生もかけなきゃいけないよ?それはわかって言っているのかい?」

レンは

「はい」

と言ったが、私の心はモヤモヤした。

「とにかく、ご両親とよく話し合って、今日は泊まっていきなさい」

と父は言った。


私のベッドの横に布団が敷かれた。

私はベッドで寝ようとしていたが、不安で眠れず、レンの布団に潜り込んで寝てしまった。

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