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君とバスケと恋と vol.18「バレンタイン」

2月。

バレンタインを目前にして、女子の目が光る。

当然私も気合い充分。

今年のバレンタインは平日だけど、サプライズで会いに行っちゃおうと思う。

クリスマスのときのように明広が出てこないよう、それとなく話を匂わせておいた。

デパートで、ゴディバのチョコを買って渡す予定。

デパ地下にチョコを買いに行くと、もうすでにすごい人だかり。

なんとかお目当てのお店に行くと、豪華なショコラを買った。

当日は学校をサボって会いに行く。

学校に母のふりをして、連絡をいれる。

『りさは風邪で…。お休みさせます。』

ドキドキしたが、なんとか先生も騙されてくれたようで、

『わかりました。お大事に。』

と言われて電話を切った。

明広の地元は遠い。

特急で二時間半かかる。

私は朝からいつも降りる駅を過ぎて、乗り換えの駅まで行った。

駅で特急を待つ。

朝ごはんを食べずに来たからお腹が空いていたが、特急の時間がもう少しだったのでそのまま乗ることにした。

青い色の特急が駅に入って来る。

これがその特急だ。

初めての一人旅に私の胸は高なった。

電車にのると朝だからなのか、乗客はまばらで、座ることができた。

明広の地元は駅の終点だ。

iPodを片手に、電車はスタートした。

しばらく行くと、お弁当売りのお姉さんがやって来た。

私は一つ買うと食べ始めた。

お腹が空いていたせいもあってか、食が進む。

初めての一人旅だから、余計に美味しい。

頬張っていると、やがて川が見えてきた。

明広の地元から流れている川だ。

川下りもあったりしているらしい。

ごうごうと音をたてながら、勢いよく流れていた。

電車は川沿いを走り抜ける。

一通りご飯も川も満喫すると、眠ってしまった。

『お客さん、終点だよ』

と起こされてみると、もう明広の地元だった。

私は大きく伸びをすると、荷物を持って電車を降りた。

駅前に立ち、明広に電話をする。

今日はレッスンが休みの日だと聞いている。

明広はしばらく電話に出なかった。

私が授業中のはずだから、電話がかかってくることはないだろうと思ってるに違いない。

私は地図で探した明広の家へと歩き始めた。

電話が鳴る。

明広からだ。

『もしもし?』

『はーい、りさです!』

『お前授業は?』

『今日は休んじゃいました☆』

『は?休んでなにしてんの?』

『実はー』

『ん?』

『来ちゃいました!』

『来るってどこに?』

『今ね、明広の家に向かってる』

『はぁ?!お前、こっち来てんの?』

『うん!今ね、家に向かって歩いてるとこ』

『まじで?!』

明広の驚き具合に満足する私。

迎えに行くから待ってろと言う。

はーい、と私は答えて明広が来るのを待った。

明広はすぐに走って迎えに来てくれた。

『お前、こっち来るならそう言えよ!迎えに行ったのに…。』

『サプライズだよ』

はい、とチョコを渡す。

『バレンタインか!』

明広がやっと気づく。

二人でのんびり歩きながら家に向かう。

意外と近くに家があった。

大きな家。

ここで明広が育ったんだと思うと感慨深い。

家に入ると、リビングに通された。

『今、俺の部屋ぐちゃぐちゃだから』

『えー、部屋が見たいのに』

『仕方ないなぁ』

結局明広の部屋を見に行く。

ぐちゃぐちゃと言えばぐちゃぐちゃだった。

スケッチブックや、油絵の具などが散乱していた。

でも、素敵な部屋だった。

私は半日そこで過ごし、駅まで送られて行く。

駅へ向かう途中で電話が鳴った。

母からだ。

『もしもし?』

と出ると、怒った様子の母。

『あんた今どこにいるの?』

『え…。いや、ちょっと。』

『学校の先生から連絡があったわよ、あんたが休んでるからって、わざわざ!』

『あ…。ちょっと、友達の家に…。』

かんかんに怒った母を鎮めることができたのは、家に帰ってからだった。

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