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君が恋をしたなら vol.11「大輔」

それから大輔とメールのやり取りが始まった。

大輔はいつも優しい。

おしゃれなカフェや動物が好きっていうこともわかった。

音楽の趣味も似ていた。

GReeeeNも好きだという。他にも湘南乃風も好きらしい。

カラオケでは控え目であまり歌っていなかったが、カラオケも好きだという。

だ『まゆりちゃんはどんなのが好きなの?』

私『GReeeeNは好き。あとはL'Arc〜en〜Cielとか』

だ『ビジュアル系も好きなんだ?』

私『まあまあかな…。』

普通の会話なのにドキドキする。

それはユウタに対してのドキドキではなく、なにか外れたことを自分が言わないか、それがドキドキした。

ユウタとだったら気楽に『ホルモン好きー!』とか言えたのに…。

おしゃれなカフェの話とか、楽しいけれどなにかもの足りない。

いつでもユウタと比較してしまう。

半年も一緒にいたから、無理ないか…。

また恋愛に臆病になってる自分がいる。

だめだ、だめだ、と自分に言い聞かせる。

ユウタとまた会えないかなとか考えてる自分がいる。もう、終わったはずなのに。

あれから、非通知の電話も着信拒否している。

もう連絡は取れない。

何度も携帯に手をやっては、着信拒否を解除しようかと迷う。

そのたびにだめだめ、と自分に言い聞かせる。

だってあの人には彼女がいる。

不毛な恋なんてごめんだ。

そもそも、なんで好きになったんだろう…。

あの歌声が、仕草が、笑い声が好きだった。

土曜日の夜に大輔と会うことになった。

おいしいおしゃれなカフェへ連れていってくれるという。

土曜日はいつもユウタのための日だった。

だから、土曜日に予定を入れるのは嫌だった。

その土曜日に予定を入れる。それはユウタを忘れる第一歩だった。

待ち合わせより少し早く着いてしまった。

カフェに行く前にコーヒーなんて邪道か、とコーヒーショップに入るのをためらった。

すると、メールが。

だ『待ち合わせより少し早く着いちゃった。ゆっくり来てね』

大輔からのメールだった。

急いで待ち合わせ場所まで戻ると、大輔が驚いて言った。

だ『ごめんね、急がせたかな?』

私『ううん、私もさっき着いたから。』

二人は歩き始めた。

私『大輔さんはいつもカフェに行くんですか?』

だ『そうだなぁ、時間があるときにゆっくりと、本読みながらって感じかな。』

私『そうなんですね。私は最近カフェからは遠のいちゃって…。』

だ『仕事が忙しいとか?』

私『いえ、仕事はそんなには忙しくなかったんですけど、友達がカラオケ大好きで、いつもカラオケばっかりで…。』

だ『ふうん、でも、楽しめる仲間がいるっていいんじゃないかな?』

私『…。』

友達、と言ったときに、胸がズキンとした。

お店に到着した。少し薄暗い店内に、おしゃれな椅子やテーブルがあった。北欧系…といったところか。

昔ならこんな店でデートなんて、きゅんきゅんしていたのが、年齢なのかユウタのせいなのか、きゅんきゅんこない。

むしろ自分が浮いて感じた。

私『私、こんなところほんとに久しぶりで…。』

だ『そうなんだ。ここのオススメはオムライスだよ。食べてみる?』

私『はい!』

こんな店にユウタと来れたらいいのに…。ってユウタの柄じゃないか。

オムライスは本当に美味しかった。

コーヒーを飲んでいると、電話が鳴る。

なんとなく見たことのある番号だった。

私『ちょっとごめんね。』

というと、大輔はどうぞ、とジェスチャーした。

私『もしもし?どちら様で…。』

ユ『俺。』

一瞬で凍りつく私。

この番号…!マルオの番号じゃん!!

私はできるだけ冷静に、

私『なんのご用でしょう?』

と言った。

内心焦りまくりだ。

ユ『今なにしてんの?』

私『ちょっと友達とご飯に…。』

ユ『男か?』

私『え…。まぁ、そんなところ。』

ユ『お前はまた、そうやって浮気するんだな。』

私『浮気って、ユウタには関係ないじゃん!』

思わず大声になって、辺りをキョロキョロする。

よかった、さほど気にされてない…。

私『とにかく、もう連絡はしないで。(ブツッ)』

なんなのさ、なんなのさ!今頃電話してきて、何をいう気だったの?

私『ごめんね、気にしないで』

だ『別に構わないけど、大丈夫なの?もしかして彼氏がいた?』

私『ううん、勝手に向こうが文句言ってるだけ。気にしないで…』

と、また電話が鳴る。

私『いい加減にしてよ』

ユ『相手の男に電話代われよ』

私『なんでよ』

ユ『話がしてえんだよ』

私『そんな失礼なことできないよ、電話を代われなんて、あんたなに考えてるの?』

すると大輔さんが、

『電話代わって』

と合図してきた。

いやいや、代われませんとも。この男、代わったらなにいうかわかりません。

それでもごねて聞かないユウタ。仕方なく大輔に代わった。

だ『はじめまして。まゆりさんの友達の大輔といいます。』

あとは、大輔さんが、はい、はい、と相づちをうっているだけ。

やがて会話は終わり、電話を代わった。

ユ『じゃ、そういうことで。』

といきなり電話を切られた。

私『ほんとごめんなさい。やつはなんて?』

大輔さんは優しく微笑むと、

だ『『あいつ、俺のこと好きなんです、よろしく』だって。いい彼氏じゃないの。』

私『彼氏ってわけじゃ…。』

私は結局大輔に今までのことを一通り話した。

コーヒーは三杯目に突入した。

あのやろー、いつも私を困らせてばかりで、ふががががが…。と内心思っていた。

一通り話を聞くと、大輔は、

『同棲してるかどうかはわからないけど、彼はまゆりちゃんのこと、好きなんだと思うよ。一度素直に話をしてみたらどうかな?』

と言った。

私は帰りの車の中でも、ずっと謝り通しだった。

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