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君が恋をしたなら vol.14「8」

今週は特にきつかった。

あんなことがあって意気消沈しているのに、仕事が山ほどあった。

仕事に集中してれば考えなくていいかと思っていたが、山ほどあるルーチンワークのせいで、余計に考えてしまうのだ。

彼女でもないし、浮かれていた私がバカでした。そんな時期が私にもありました。

よく考えると、麻美と二人の関係ってより親密じゃないか?わたしなんかよりずっと麻美のほうがユウタを知っているのでは?

忘れた方もいらっしゃるかもですが、わたくし、ユウタの電話番号をいまだに知りません。

このジレンマに、うーうー唸っても、あるのは仕事だけ。

それでも一週間が過ぎていった。

土曜日。

♪明日今日より素直にな〜れる〜♪

聞き慣れた着信音にため息をつきながらメールをみた。

『今日何時ごろこれる?』

まだ、このメールが来るということは、挽回のチャンスがあるってことなのかなぁと、ボーッと考えてみる。

挽回もなにも、サイズアップしたら…。って最後はいつもそれ。

ちなみに未だに努力は続いています。

結論出ず。

とりあえず行くか、とふみに連絡する。

ふみは、『たまにはこっちに呼ばない?』と言ったが…。

ユウタがこっちに出てくることなんてありえないし…。

一度来てくれたときは、それなりにピンチのときだったから、もうあれもないよな、と思う。

そんな考え事をしていたら、着いていた。

ユウタは今日も上機嫌。今日はドライブにいこうぜ!という傍らにはやはり麻美。

私が運転したくないと拗ねていると、ユウタが運転することになった。

グーパーで相手を決める。

結局、私、ユウタ、麻美と、マルオ、ケンジ、ふみに別れてしまった。

貧乏くじ引いたぜ…。

と思い、車の後部座席に乗ろうとすると、ユウタが言った。

『俺の横はお前に決まってるだろ?』

麻美はちょっと不満顔をして後部座席に乗った。

他愛もない話をただ、ユウタがしゃべり、麻美が大袈裟なリアクションで返す。

私は終始無言だった。

窓を開け、快適な九月の風を受ける。私はただ、ボーッと、ほんとにボーッと考え事をしていた。

ブーンという羽音が聞こえて我に返る。

嫌な音だ。車内をみまわすと、その音の主は、ユウタの服にとまった。

今まさに服の中に入ろうとしている。

『ひっ…。』

と言ったきり、後ろにずさる麻美。

私はとっさに、手で、それを取ってしまった。

ユウタが危ない、それしか考えられなかった。

『いだーーーっ!!』

声にならないような声をあげた。

何が起きたかわかっていないユウタ。

『蜂が…。蜂に刺された!』

ようやく状況を飲み込むと、麻美に携帯を渡し、今から病院へ行くことになったことを伝えた。

手がだんだん腫れてくる。蜂は蜜蜂だったようで、ポロっと手からこぼれ落ちた。

病院で手当てを受ける。針も残っていないし、大丈夫とのこと。

簡単な消毒で終わった。

私『よかったぁ、ユウタが刺されなくて』

ユ『お前は無茶しすぎなんだよ』

久しぶりにユウタとまともに会話した気がした。

蜂のおかげで、すっかり元通り、と思っていたが、そうはいかなかった。

麻美が帰りたいとごね始めたのだ。

そうなると結局ユウタは麻美の機嫌をとるために懸命になる。

半年前までの自分をみているようで、不安とかわいそうに、という気持ちで一杯になる。

結局麻美は帰ってしまった。しかも、私の車、ユウタ運転で。

そりゃ、話の中心が自分でなくなるのは不快だろうけど、そんなあからさまにならなくても…。

これもどこかで見たことがある、わがまま男と似たようなもんだな、と思った。

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