君が恋をしたなら vol.7「出会い系」
このままじゃいけない。
そう思った。
花見の時にどさくさ紛れで告白したけど、伝わってないに決まってる。
そう、こんな目にあっても、私はまだユキトのことを諦められなかった。
『一対一で話がしたい』
そうメールした。
『一対一でもいいよ…。』
と、投げやりなのか優しさなのかわからないメールがきた。
とにかく一対一で話をきちんとしないと、また友達まで巻き込んでしまうから。
土曜日の夜にいつものカラオケで、と約束した。
それから一週間は全く仕事にならなかった。強制早退させられなかっただけましなのだが。土曜日になり、ユキトからのメールを待つ。
♪明日今日より素直にな〜れる〜♪
『友達連れてこいよ』
…。
一対一で話すのオーケーって言ったやん!
『今日は一対一がいいの』
ごねてみた。
いつもなら
『いいから連れてこいよ』
というのに、この日だけは違った。
『わかった。いつものカラオケで待ってる』
メールを終えて出発すると、
♪明日今日より素直にな〜れる〜♪
『五分でこいよ』
とまためちゃくちゃなメール。
シカトして店へ向かった。
ユ『おせーよ』
いつものユキトがそこにいた。
私『今日は話があってきたの』
ユ『なんだ、カラオケじゃねーの?』
私『とりあえず車に乗って。』
行き先は前に夜景をみた、その場所だった。
私『…。』
ユ『話ってなに?』
私は震える声で話はじめた。
私『…私、ユキトのことが好きなの。だから、きちんとほんとのこと話してほしい』
ユ『話すも何も、嘘ついてねえし』
私『名前も年齢も、嘘、なんだよね?私、カラオケで聞いちゃったの』
ユ『あぁ…。お前起きてたのか…。』
私『うん…。』
ユ『しかたねえな、俺のほんとの名前は』
つばを飲み込んだ。
ユ『ほんとの名前はユウタ。年齢は30だよ』
私『それって、ほんとのほんとだよね?』
ユウタは免許証を見せてきた。
私『でも、なんで嘘の名前…。』
ユ『だって、お前、出会い系で知り合ったのにいきなり本名とか教える??って、お前は本名か…。』
??
出会い系?
私『出会い系ってなんの話?』
ユ『お前が出会い系にメルアド載せたんだろ?俺はそれ見てメールしたんだから。』
私『ちょっと待って、意味がわからない…。』
ユ『はぁっ?お前が出会い系に書き込みしたから俺はメールしたっつってんだろ?』
意味がわからない。わけがわからない。
頭がガンガンしてきた…。
私『それって、誰かが私と偽って、メルアドを載せてたってこと…?』
ユ『え?そうなの?』
私『どこのサイト?見せて?』
ユ『どこって…。教えるけど、もうお前の書き込みなんて埋まってしまってると思うぞ』
そういいながらユキト、いや、ユウタはサイトを見せてくれた。
一体だれがこんなことを…。
ユウタと別れて、ふみに連絡をする。
事情を一通り話すと、
ふ『こんなことしそうな知り合いとかっているん?』
と聞いてきた。
私のアドレスを知っててこんなことする子なんて、いない。
ふみはため息をつくと、こう言った。
ふ『あんたの元カレとか、どーなんよ?』
元カレ…。
あれから連絡も取ってないけど…。
ふ『あんたと二股かけてた彼女はどうなんよ?』
言われてハッとする。
そういえば、最後別れる理由の決定打になったのは彼女が理由だ。
私『元カレに連絡してみる…。』
元カレに電話をし、事情を話した。
元カレ『あいつがそんなことするはずないけど…。一応聞いてみてやる』
と言ってくれた。
しばらくふみと電話をしながら、返事を待つ。
キャッチホン。元カレからだ。
元カレ『…ごめん、彼女がやったらしい』
話によると、別れる少し前に、別れて欲しくてほんの出来心から出会い系に書き込みしたらしかった。
元カレ『ホントにごめん、彼女も泣いて謝ってる』
私『もう、いいよ。ありがと。ホントにありがとう。』
不思議と、彼女を怒るよりその恋心に感心してしまった。
そりゃ、やってはいけないことをやったのだから、褒められた行為ではないが、そこまでして欲しい人がいるなんてこと、私にはなかったから。
ユウタにこの話をするにも、電話番号を知らない。
メールで懸命に説明するが、通じてるのか、返事はない。
はあぁー、とため息がでる。
ユウタにわかってもらえたからって、何が変わるというのだろう?
というか、ユウタはまだ出会い系をやっているのか?そんなことばかり頭に浮かんでは否定する。
そういえば、最初にもらった写メ、異様に慣れてたっけ…。
考えるとつじつまが合う。
私はなんどもため息をつきながら返事を待った。
昨日は返事がなかった。
今日こそは!と思う。
返事がなかったら…。そのときは…。
♪明日今日より素直にな〜れる〜♪
きたーー!!
『事情はわかった。今から来れる?』
行く行く、行きますともー!
明日から仕事だからそう遅くまではいられないけど、話が通じたことが嬉しかった。
『誰か連れてきて』
しかたがないので、ふみに連絡してみる。
いいよ、と返事をもらい、ふみを迎えに行った。
しかし、なぜいつも二人では会わないんだろう?
そう思いつつもいつものカラオケに向かった。
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