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君とバスケと恋と vol.17「ドライブ」

年末年始はバイト、バイト、バイト。

バイトづくしだった。

年末年始は明広に会うこともできないので、ちょうどよかったと言えばよかった。

年末は最後の日に、バイト先の人たちと打ち上げカラオケに行った。

大盛りあがりしたのは、大塚先輩の歌と踊りだ。

大塚先輩は、私とはちょっと違う店舗でバイトしている大学生だ。

いつも何かと気を使ってもらっている。

決してイケメンではないけれど、優しく親切なムードメーカーな人だ。

今日の企画も大塚先輩が中心。

明るくて、いい人だ。

午後10時になって、私たち未成年組が帰るとき、大塚先輩が車を出してくれた。

順番で、私が最後に送ってもらうことになった。

『先輩、すみません、ありがとうございます』

と私が言うと、

『いやいや、俺もそろそろ帰らなきゃだしね』

と言ってくれる。

『それはそうと、』

と先輩が話を切り出す。

『りさちゃん、今度ドライブに行かない?』

『え…。』

『嫌ならいいんだけど、りさちゃんとは話が合いそうだなと思って』

『はい、連れていってください!』

私は何も考えずにその場のノリで返事をした。

その日から、頻繁に私の店舗に大塚先輩がやって来た。

お昼休憩のとき、先輩のぶんだけ、牛天丼にしてだしたり。

可愛がってもらえるのはとても嬉しかった。

学校が始まって、またいつもの日常がやってきた。

バイトは楽しい。

もうすっかり慣れて、他の部署の人たちとも仲良くなった。

そんなある日のこと。

大塚先輩がまたお店に来てくれた。

私は牛丼を牛天丼にして出した。

『りさちゃん、明日休みだろ?』

と大塚先輩。

『はい、珍しく日曜休みなんです』

『明日さぁ、よかったらドライブ行かない?前に約束したじゃん』

『明日…いいですよ!特にすることもないですし』

『じゃあ、明日、店の休憩所前に、11時で』

『はい!わかりました!』

私は元気よく返事をして、バイトに勤しんだ。

翌朝、準備をするときに、何を着ていこうかなと迷ったが、普段通りにジーンズで行くことにした。

先輩は先に来て待っていた。

『すみません、お待たせしちゃいました?』

『いや、構わんよ』

私たちはドライブに出発した。

一時間ほど走って、山の中を抜けていく。

夏だったら綺麗だろうな、明広と行ってみたいな。

山の途中で休憩所のようなところがあり、私たちはソフトクリームを食べた。

寒い中で、エアコンをがんがん効かせて食べた。

それがおかしくて二人で笑う。

もう少し行ったところに、石屋さんがあって、そこにも立ち寄った。

先輩が、ブレスレットをプレゼントしてくれた。

ローズクォーツなどのピンクでコーディネートしてもらったオリジナルだ。

『なんか、悪いです、こんなに…。』

『いいのいいの、お土産お土産』

山は途中から雪景色で、とても綺麗だった。

途中から雪で登れなくなって、私たちは引き返すことにした。

『ごめんね、せっかくのドライブなのに』

と先輩。

『いえ、とても綺麗だったです』

山道を下っていく。

ふと、先輩が進路変更した。

左へ曲がる。

その先はラブホだった。

ホテルの駐車場に入るまでは、もしかしたら違うかも、と思い黙っていたが、先輩は平気でラブホに入っていく。

『ちょっと、ちょっと待って先輩!』

先輩は無言だった。

無言のまま駐車を終えると、

『行こう』

と言った。

『私そんなつもりじゃ…。』

『いいじゃん、行こうよ』

『私、彼氏いるんで』

『遠距離なんだろ?ばれなきゃいいって』

結局私は車を降りず、先輩は諦めて帰路についた。

『今日はごめん、俺…。』

『いえ、いいです…。』

私は車を降りると、急いで自転車で駆けて帰った。

一連のことを明広に話したら、激怒された。

『ドライブに誘うって、そのくらいのこともわからないんだな、お前は!!』

『ごめんなさい…。』

『一歩間違っていたら大変なことになっていたんだぞ!』

『ごめんなさい…。』

私は明広の怒りが静まるまで謝り続けるしかなかった。

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