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君とバスケと恋と vol.14「文化祭」

10月も半ばにさしかかると、一気に文化祭モードに突入する。

私のクラスではうどんを出すことになった。

これは、私が出したアイデアで、粉タイプのだしがついたうどんを湯でほぐし、だしを合わせて出すものだ。

うどんは近所のスーパーに行って、格安で仕入れることが可能になった。

あとはお湯の問題だけだが、お湯を使うには少々難点があった。

クラスの中では火を使うことは禁止だ。

電気ポットを使うにしても、コンセントの数に限りがあるので、電気ポットだけでは足りない。

そこで、火を使っていい区域の外の駐輪場でお湯を沸かして持って行くことにした。

私の役目は一階駐輪場からやかんでお湯を運ぶ係りだ。

私たちのクラスは三階にあり、しかも駐輪場からは遠かったため、最初はこの案も却下されかかったのだが、電気ポットと並行してお湯を持っていかないと間に合わないということから、再度採用となった。

三年生は見るだけの参加なので、明広がクラスに遊びに行くね、と言ってくれた。

が、始まるとそれどころじゃなかった。

クラスのうどんは意外と人気が出て、私はやかんを抱えて、人を避けながら何回も階段を上がったり降りたりを繰り返していた。

途中明広とすれ違ったが、会釈しかする余裕はなかった。

何往復しただろうか、ようやくお客が減ってきて、やかん係りは男子にバトンタッチした。

ようやく他のクラスを回る余裕ができた。

ところが、肝心な明広が見当たらない。

明広のクラスに行くと、明広は寮に帰ったと言う。

私は寮まで呼びに行った。

明広は気だるい感じで降りてきた。

『今係終わったからさ、今から文化祭見ようよ!』

すると明広は

『俺一通り見たから、いいや』

と言った。

『えーっ!だって、一緒に見れるのって今年で終わりなんだよ?!』

食い下がる私。

『だって、一通りみちゃったもん』

と、明広。

『それでもいいからさ、一緒に行こうよ!』

『俺眠いからやめとくわ』

そう言って部屋へ戻ってしまった。

一人で見るなんて…。意味ない!

私は怒って校舎に向けて歩き出した。

『文化祭、一緒に見てくれないから別れます』

とだけメールした。

私立文系コースの友達と一緒に見て回る。

それでも私の気持ちは晴れなかった。

午後三時を回り、ステージが始まる。

そのときだ。

肩をぐいっとつかまれた。

明広だった。

『これ、なんだよ』

と携帯をつき出してきた。

『だって、一緒に見ないっていうから』

文系コースの友達に、ごめん、と言って席を外した。

『なんでこういうメールしてくんの?』

私の両肩に手を置いて、頭を沈める。

『だって、今日一緒に回らないなら、一生一緒に回れないんだよ?この意味わかるよね?』

明広は深くため息をつくと、

『わかったよ、一緒に見よう』

と言った。

ステージを一通り見た後、各クラスの出し物を見て楽しんだ。

お化け屋敷なんかは見事なものだった。

怖いモノ苦手な私をわざと怖がらせようとした明広の魂胆だ。

案の定、私は腰を抜かしそうになりながら、明広の手だけを頼りに回った。

すごく怖かった。明広がいなかったら一歩も前に進めなかったに違いない。

うちのクラスのうどんも食べた。

努力の甲斐があって、超おいしかった。

私立文系コースの友達を冷やかしにも行った。

メイド喫茶をやっていて、友達のコスプレに超笑った。

写真もたくさん撮った。

そして二人のツーショットも何枚か撮ってもらった。

幸せだった。

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