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君とバスケと恋と vol.1「付き合ってください!」

『付き合ってください!』

あーぁ、とうとう言っちゃった。

バスケ部の憧れの先輩に告白するつもりで呼び出してもらったら、違う先輩が来てしまった。

でも、この流れで

『間違えました〜』

なんて言えるわけもなく。

そのままの流れで告白に。

違う、違うんだよ…。

私が呼び出して欲しかった先輩、名前は結局なんなんだ?

『いいけど?』

これが私たちの付き合い始めだった。

そもそも、先輩の名前をなんで間違えておぼえていたのか、それがわからない。

確か、部活中に呼んでた名前で呼び出してもらったんだけど…。

なぜ違う?

リサーチ不足?

結局付き合うことになっちゃったこの流れ。

流されていいのか?

いいんだな?

仕方ないんだもん…。

呼び出されてきた彼の名前は堀川。

ずっと違う先輩を堀川先輩だと思ってきた。

超恥ずかしい。

友達にも堀川先輩が好きって自慢気に話をしてしまった。

友達はもしかして、勘違いしてることに気づいていたのかな?

気づいていたら、なにかしらアクションはあった…はず。

私が気づかなかっただけなのかな?

私は仕方なく

『よろしくお願いします』

と言った。

めんどくさそうなの、ばれたかな?

『こちらこそ。えーと、』

『りさ、です』

『よろしくね、りさちゃん』

全然違う先輩に告白をするはめになった私。

かわいそうな私。

今日は体育祭の日。

私のお目当てだった先輩は、応援団をしていて、ちょっと悪そげでかっこいい先輩。

部活を見てる時から気になっていたけど、応援団をしてる姿を見て、これだー!!と思った。

先輩はタバコを吸っていて、部活が終わると部室でタバコを吸う、その姿に見とれていた。

そもそも、私がなぜバスケ部を覗くことになったかというと、クラスメイトの園田くんが、

『部活に女っ気がない』

となげいていたからちょっと見に行っただけなのに、なぜかマネージャー扱いになり、そのままずるずると居座ってしまったのだ。

園田くんとは特別仲がいいわけではなく、ほんとに、ほんのぼやきのつもりの発言から今に至る。

うちの学校には女子バスケ部はなかった。

それに、体育館は他の部活にとられていて、正確には同じ校舎にある違う高校が体育熱心で、使わせてもらえなかったのだけど、外のコートでバスケをするから、余計女っ気がなかったのだ。

うちの学校は中高一貫教育の私立の進学校で、同じ校舎にもう一つ違う高校が入っている特殊な高校だった。

私は滑り止めでこの学校に入った。

一年の時は、年下の彼氏がいて充実していたんだけど、その冬に喧嘩して別れてしまった。

そのせいもあって、冬から今、5月までずっとマネージャーまがいのことをしてきた。

マネージャーまがいと言っても、バスケのルールもわからなくて、ただ見てるだけ。

マネージャーが要るほど人数もいないこの部活は、毎日それなりに練習をしてきた。

そう、堀川先輩はその指導の中心にいた。

いつも何か指導という名の文句を言ってる、そういう印象しかなかった。

私は例の、別の先輩に恋していたので、堀川先輩など、アウトオブ眼中だったのだが…。

こうして向き合ってみると、そうカッコ悪いわけじゃない。

背も高くて普通に好きになれそうな好印象な先輩だ。

いつも文句を言っている姿を除けば、充分付き合っていけそうなそんな先輩だった。

ただ、実はその文句、の部分が私には問題だった。

私はグダグダ文句を言う男が嫌いだからである。

多少は目をつぶるけど、あんまりひどかったら別れよう…。

私は告白しながら、そう思った。

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