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君が恋をしたなら vol.25「トラブル」

今日はユウタをうちに呼ぶ日。

母も張り切って料理をする。

私も横でお手伝い。

今日は嫁にいった姉も家族でやってくる。

賑やかな1日になりそうだ。

12時にユウタを実家まで迎えにいく。

今日は昨日とはうってかわり、ラフな格好だ。

姉がついた。

姪っ子二人を抱っこして、大荷物を抱えてきた。

『言ってくれてたら荷物取りに行ったのに』

『このくらい子供がいたら当たり前よ。』

12時になり、ユウタを迎えにいく。

『昨日はご馳走になりました。』

と挨拶をして、車に乗り込む。

『カラオケいきてぇー』

と、カラオケ魔神がのたまわる。

『後でふみたちも暇してるか聞いてみようか』

『いいねぇ、それ、実に面白い』

あるドラマの主人公の真似をするユウタ。

そんなユウタも愛しく思える。

それは、もう少しで家につく、というタイミングで起こった。

『おねーちゃんから電話だ…。』

路肩に車を停めて、電話にでる。

なにか興奮している様子だ。

『もしもし〜?』

『もしもし?まゆり?お母さんが、倒れたの』

『倒れた?』

『今から日赤に行くから、あんたも直接来なさい(ブツッ)』

『え…。』

電話を持ったまま固まっている私にユウタが言う。

『ねーちゃん、なんだって?』

『…お母さんが倒れたって…。』

呆然とする私にユウタが言った。

『病院はどこ?運転代わる』

『日赤だって…。救急車の音がしてた…。』

頭がガンガンする。

さっきまで普通にしゃべってたのに…。

ユウタが素早く運転を代わり、走り出す車。

それでも私はぶつぶつといい続けていた。

ユウタに手を握られ、はっと我に返った。

『まだ症状もなにも聞いてない。落ち着け。』

ユウタがいてくれてよかった、と心から思った。

少しずつ落ち着いていくのがわかる。

ユウタ…。ありがとう…。

病院に着くと、人でごった返している待合室に姉の姿を見つけた。

その側でおろおろする父。

『とりあえず、心臓とかではないって。脳波とか、MRIとかしてみないとわからないから…って』

姉の話では、料理を運んでいるときに、ふらっと意識がなくなって倒れたとのこと。

『ユウタくん、ごめんね。何時間かかるかわからないから、今日は帰ってもらったほうがいい…。 』

父がそう言った。

が、ユウタは頭を振ると、

『俺も待ちます』

と言った。

『ありがと…。』

私はそういうのが精一杯だった。

姉がジュースを買ってきて手渡した。

『ちびたちは?』

『旦那がみててくれてる。』

『お母さん…大丈夫かな』

おそるおそる聞く私に、ユウタが

『大丈夫だよ』

と言ってくれた。

四時間は経っただろうか、医師からの説明があった。

心臓は弱くないし、MRIもCTスキャンも特段異常はないとのこと。

ただのてんかんかなにかだろうと、今までにてんかんを起こしたことがないかなどを聞かれた。

今日1日は点滴をするので、入院になります。

とのことだった。

とりあえず命の危険はないという医師の話を聞き、腰が抜けたようになった。

そんな私をユウタが支えた。

ユウタをアパートへ送っていこうかと考えたが、姉たちはいるが、一人でいるのが不安だったため、泊まっていってもらうことにした。

と言っても、姉夫婦が客間の布団を使ってしまっているので、眠るのは私のベッドで、ということになった。

初めてのお泊まりは私のベッドで。

普段の私なら両手放しで喜ぶところだが、不安で仕方なかった。

『大丈夫だって。お医者さんも言ってたろ?』

ユウタが頼もしかった。

本来なら明日からユウタは仕事始めの予定だが、今年は運よく?明日は土曜日で休みだから、安心して泊まってもらえた。

ユウタに髪をなでられながら、その日は寝たのだった。

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