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【小説】バージンロード vol.12「別れ」

その週の週末に、レンの両親はやってきた。

私はかなり緊張して、どこでどう話したかも覚えていない。

ただ、一生懸命にレンを説得していた姿を覚えている。

「結婚なら卒業してからでもできる、子どもだってまた授かるから」

「あゆみさんには申し訳ないけど手術してもらって」

「とにかく学校をやめるな」

そう言っていたのを覚えている。


私は足りない頭で一生懸命考えた。

考えて考えて、

「やっぱり産まない。手術するよ」

と答えを出した。

レンは反対したけど、レンの将来のこと、産まれてくる子どもをどうやって面倒みていくのか、住まいのこと、仕事のことを考えると自ずと出てくる答えだった。


「また縁があれば子どもも授かるでしょう」

私はレンにそう言った。

私は男の子の泣く姿を初めてみた。

それはとてもきれいで、儚くて、今にも崩れてしまうような、ガラス玉のように見えた。

「ごめんね、俺がこんなだから、あゆを傷つけて……」

レンは泣いた。

ただただポロポロと涙をこぼして泣いた。



私は覚悟した。

手術をしたら元のような関係には戻れない、別れるだろうということ。



でも後戻りはできなかった。


手術の日程が決まる。

それが近づくにつれて私は緊張していった。

それはレンも同じだった。

私は手術までを実家で過ごした。

久しぶりの実家は、妊娠しているせいもあってかやけに親切というか、親身というか……

なんというか、今まで過ごしにくくて逃げていた家庭はそこにはなかった。

ヒステリーのない母、お酒を飲まない父。

理想の家庭像がそこにはあった。

今まで息苦しかったのが嘘のようだ。


その家庭の中でさらに私は考えた。

私が今子どもを産んでも、この家庭のような家庭は築けない。

私は間違っていないのだと。



手術の日、レンが迎えにやって来た。

顔を強ばらせ、どことなしか痩せたように見えた。

元々細身だったので、そんなレンは吹くとどこかへ飛んでいきそうな、そんな印象すら持った。


手術は眠っている間にあっという間もなく終わってしまったように感じた。

手術前に飲み薬をもらって飲み、ちょっとチクッとする注射、そのあとは目が覚めたらレンが横で俯いていた。


「目が覚めた?」

レンが優しく聞いてくれた。

「うん……もう終わったの?」

「うん、終わった」

「そっか……」

「ごめんね、俺がちゃんとできないばかりに……」

「それは違うよ、今もこうして側にいてくれてる」

私は精一杯微笑んだ。



この一件がこうして終わるとき、私にはもう一つしなければならないことがあった。

ソウだ。

私はこの一件があったことでレンからの愛の深さを知った。

こうして付き添いまでしてもらっている者として、ソウとの関係を……終わらせる必要があった。


手術が終わってしばらくして、私はソウに会いに行った。

そして、直接自分の言葉できちんと、

「友達に戻ろう?」

そう言った。

ソウも

「うん、そうだね、友達に戻ろう」

そう言った。



レンとは別れると誰もが思っていた。

だが、手術後、休憩をアパートでして、そのまま居着いてしまった。

結局別れることが出来なかったのだ。

こうなるともはや、周囲も何も言わなかった。


こうして私たちの生活は始まった。


それはとても楽しいもので、私はソウとも別れ、すっきりすっかりレンの彼女として生きていくことになった。

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