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君が恋をしたなら vol.13「麻美」

海も満喫し、ルンルン気分の土曜日。

いつものカラオケで待ち合わせ。

今日はいつもより爽快にとばして走る。

いつもの道が心なしか清々しく感じる。

私『あれからさぁ、マルオとどうなのよ?』

ふ『どうって…。進展なしかな。メールは毎日するけど』

私『どうせなら、どんどん押してみるのは?』

ふ『あんたと違って私は慎重かつ冷静なの!』

いつものカラオケに着く。

今日もマルオの車がある。

中でスロットをしながら待っている様子。

私『お待たせ〜♪』

ユ『待ったぜ、でも一回かかっちゃった、ラッキー』

そのとき、目の端にとまった一人の少女。

ユ『今日は後輩連れてきた』

ペコンと頭を下げる美少女。

色白で、華奢というのはこの子のためにあるんだなと思うほど線が細い。

私『あ…。どうも。』

いきなり過ぎてよくわからなかったが、職場の後輩を連れてきたらしい。

職場の後輩とかって、職場の人に私を紹介って、なんて彼女フラグなの!

もしかしたらこのまま親御さんに挨拶、とかって展開?

ユ『麻美、彼女だよ』

彼女とか、いきなり素敵すぎー!!

あさみ『へぇ、この人が噂の彼女ですか』

じろじろ見ないでください…って、『彼女』の意味が違う?

あ『初めまして。いつもユウタ先輩からお話うかがっています。麻美と言います。』

私『話って…なにを?』

あ『犬みたいな女がいる…って、あ、犬みたいな女の人が、ですね』

ユ『な、犬みたいだろ?俺の言うことはなんでも聞くんだよ、な、まゆ』

顔がかあぁっと赤くなるのがわかる。

ふ『犬みたいなって…失礼じゃない?!』

ふみが庇ってくれているが、どうしようもない。

私『なんでも、っていう訳じゃないですけど…。』

否定したいけどできない自分。恥ずかしい。

とりあえず自己紹介をすると、ボックスへ入った。

ユウタの横を陣取る麻美。さも当然という顔をしている。

それからは悪夢のような時間だった。

ユウタが歌うたびに盛り上がる麻美。

おでこがくっつきそうなほど顔を寄せて選曲する。

歌ってないときは常にユウタと腕を組む。

ポテトをあーん、と食べさせる。

まさに悪夢の二時間だった。

カラオケを出て、いつものところでたべるかと思いきや、

ユ『こいつ、門限あるから送って帰るわ』

と、いつもの焦らしもなく、すんなり帰るユウタ。

私は結局一曲も歌わずに、二時間を過ごしただけだった。

ふ『なにあの子、気に入らねぇ』

そういうふみをなだめつつ、大きなため息をついた。

ポテトをあーんなんて、私でもやったことがないのに…。

ユウタにメールする。

私『もう帰ったかな?』

10分ほどして返事が来る。

ユ『まだ』

まだってなに?と思いつつ、

『まだ帰ってないの?』

とメールする。

『まだ、麻美が帰りたくないって言うから海にきてる』

と返事。

『なんで…。私だって一緒にいたいよ…。』

口をついてでる。

ふみが異変に気づいて携帯を奪い取る。

ふ『なに、こいつ!まゆりのことをなんだと思ってるの!?』

私『犬だって思ってるんでしょ…。』

ふ『あんた、横からひょっと出た女にユウタ盗られて平気なん!?』

ふみのお怒りはごもっともだが、彼女でもなんでもない私にできることなんてないんだ。

すごい勢いで電話を始めるふみ。

『もしもし?!マルオ?あんたどこにいんのよ?』

『はあっ?!』

『うん…うん…。』

『で、なんでおいて帰ったのよ?!あんたとはもう口きかない!』

最後は怒鳴り声になってふみは勢いよく電話を切った。

私『な…なんだって?』

ふ『二人が海に行きたいって言い出して連れてったけど、なんかいづらい雰囲気だったから帰ったって!!』

私『私、なんとなく想像できる…。』

ふ『とにかく、一旦戻ろう!海なんてこの辺じゃあそこしか思い当たる場所ないし!』

ふみが言っているのは、一番近くの港のことだ。ユウタにせがまれて、何回か行ったことがある。

でも、私は行かないことにした。

涙を拭うと、家へ帰りはじめた。

ふ『あんた、いかなくていいの?』

ふみが横でギャーギャー騒いだが、私は家へ帰った。

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