君とバスケと恋と vol.7「指導」
第二試合は、嘘のようにぼろ負けした。
そりゃあ、そうだ。
技も体力もない弱小校ですもの、第一試合に勝てただけでも奇跡というものです。
三年生はこれで引退。
最後にすごい試合ができてよかったね、と思う。
抱きついて喜んでしまったことは置いておいて、みんなが一つになる瞬間を味わえてよかったと思う。
しかし、引退するはずの明広はまだコートに出てくる。出てきては後輩の林君に指導と言う名の文句を言っている。
『引退…しないの?』
と恐る恐る聞く私に、『当たり前だろ?!俺が居なかったら、こいつらまともに練習にならないんだから』
あぁ、そうでした、この人はそういう人でした。
しかし、国立理系コースともなると、課外がものすごい時間あるので、明広がコートに現れるのは、ほんの少し、短い時間だけになった。
『お前、まだバスケ見にくんの?』
唐突に聞かれる。
『うん…。一応園田くんとも約束してるし…。』
『はぁっ?!園田見にきてんの、お前。』
『いや、そういう訳じゃないけど、みんなを見守りたいっていうか…。』
『お前は俺のことだけ見てりゃいいの!』
ん?このセリフどこかで聞いたような…。
『俺のことだけって、練習少ししかできないじゃん』
『だから、もうお前はバスケ見にこなくていいの』
『そんなむちゃくちゃな…。』
明広ってこんな人だっけ?というほど束縛してくる。
やっと少し好きになれそうだったのに、そりゃないよ…。
私はがっくりと肩をおとす。
すると、それに気づいたのか、
『不満があるなら、ちゃんと言えよ?』
と優しく聞いてくる。
私は思わず
『バスケ見てやってるって言うけど、文句言ってるだけじゃない』
と言ってしまった。
『…文句?』
『そう、文句。特に林に。』
『林は才能があると思うから厳しく言ってるんだよ!』
『でも、文句だよね。指導するなら、もっとだらだら言わないで、叱るばかりじゃだめだと思う。』
『お前、なんでそんなこと俺に言えるわけ?バスケのバの字も知らないくせに』
『バスケしてなくても、いい指導かどうかなんて、すぐにわかるよ!』
『お前がそういうこと言うやつだとは思わなかった。知らん、勝手に練習見に行けば?俺は行くけどね、それでも』
結局大喧嘩になってしまった。
その日も私は部活を見に行く。
明広が遅くにやって来た。
けど、今日は文句を言わない。
ただ練習に参加するだけだ。
私とは目も合わさない。
部室でそのことが話題になった。
『今日は堀川先輩、無言でしたね…。』
言い出したのは、林。
『虫の居どころがわるかったんじゃない?』
と、酒井。
園田くんは薄々勘づいていたらしく、
『堀川先輩となんかあったの?』
と聞いてきた。
『別に…。ちょっと喧嘩しただけ』
その言葉に反応する一年生たち。
『りさ先輩って、もしかして堀川先輩と付き合ってるんすか?』
園田くんが、
『今まで気づかなかったほうがおかしいだろ?』
と吹き出した。
林も酒井も
『そうなんだ…。』
動揺を隠せないでいた。
『でも、先輩と喧嘩したなんて…りさ先輩ってすげーっすね』
『なんで?』
『だって堀川先輩ってめちゃ怖いじゃないっすか!』
やっぱりそうなんだ…。
『でも、俺は堀川先輩の愛のムチだと思ってますけどね』
と林。
『そう…?そんなものかなあ』
『俺も変な意味じゃなくて愛を感じます』
と酒井。
他のメンツはただ怖いだけだということがわかった。
確かに、明広の指導相手は林と酒井と園田くんに集中している。
その三人が怖くないというなら、問題はないのかな…とも思う。
とりあえずゆっくり考えることにした。
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