【連載小説】ガンズグロウ vol.3「ノートパソコン」
私は授業にノートパソコンを持ってのぞんだ。
キーボードの操作に慣れるためだ。
途中までパソコンで書いていたが、追い付かずに、結局ノートをとったものを休み時間にパソコンで書き換えた。
友達にはみんな「なんでノートパソコン?」と突っ込まれ、そのたびに「卒論に備えて」と返事をした。
って卒業まで二年あるっちゅうの!
どんだけ卒論に気合い入ってるんだよって話。
休み時間毎にノートパソコンを取り出してノートを書く。
いやはや、真面目な生徒に見えるよね!
まさかゲームのためだなんて、誰にも……
「チャットの練習?」
非情にも、レイナ姫にはわかってしまった。
「……そうだけど?」
「なかなかによい傾向」
レナはニヤニヤしながら言った。
「やってみてどうだった?」
「どうだった、も何も、チャットに追い付けなくてそれどころじゃない感じ」
「まあ、そこは慣れていくでしょ。キャラはいじった?」
「うん、まぁ、かわいい感じに」
「私のキャラは姫を意識してるんだ」
レナは伸びをしながら言う。
そういや、レイナ姫とか呼ばれてたもんな。
「私のは、水色でかわいい感じにしていこうと思ってる」
レナはうんうん、と頷くと、
「いやー、大学でまさかガンズの話ができるようになるとは思いもしなかったよ」
嬉しそうだ。
私とレナは中学の頃からの同級生。
中学のころから、アニメやら、ゲームやらにはまっていて、あまり友達がいなかった。
そんなレナをいじめる生徒が一部いた。
私はそういうのが大嫌いなので、彼女らを一喝した。
それからの付き合いになる。
レナのオタク趣味はいまいちわからなかったが、レナは私の一番の親友だ。
そんなレナと同じ趣味を持つ日がくるなんて、思いもよらなかった。
「上坂くんは何か言ってた?」
「うーん、慣れたら楽になるからって」
「それでこのノートパソコンかぁ」
「うん、やるからには極めたい」
「うほっ、極めたい宣言きましたー!」
そんなとき、私の携帯が鳴った。
上坂くんからだ。
『今日は何時ごろはいれそうですか?』
『上坂くんの都合は?』
「上坂くんからだった」
レナに報告しつつメールを返す。
『それじゃあ、夜八時からでどうでしょう?』
八時か、ならばご飯食べる時間もあるわね。
『じゃあ、八時からで!』
『それから、俺のこと、タツキでいいですよ。みんなそう呼んでるので』
いやいや、いきなり初対面の人を呼び捨てにはできないっしょ。
『じゃあ、タツキくん、で』
『まあ、それでもいいですよ。今日八時から、楽しみにしてますね』
「タツキくんてさぁ、いつもこんな感じなの?」
「うん、まあ、人当たりはいいね」
「ふうん……」
という訳で八時です。
ご飯もしっかり食べて、ジュースも準備して、いざ出陣!
こんなときは独り暮らしでよかったなぁとしみじみ感じる。
邪魔するものがないからね。
今日はチャットに少し慣れてきていて、顔文字を使う余裕ができてきた。
いいぞ、いいぞ、自分。
今日はチームメイトも増えた。
名前はゆらぎ。
多分ハンドルネームなんだろう。
今日はタツキと私、ゆらぎで小ボスを倒すことに成功した。
私は何の役にも立っていないんだけどね……
ゆらぎは男の子らしく、
『このチームをどこよりも強くしたい!』
そう言っていた。
どこよりもって、これ、一応世界的なゲームなんだけど……と思ったことは秘密にしておくことにした。
今日はマイキャラに水色の腕輪をつけてあげた。
こうしてはまっていくんだなということはなんとなく理解できた。
この日もそのまま睡眠に落ちていった。
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