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シンガポール タイ料理レストランガイド

「シンガポールなのになぜタイ料理?」という疑問はさておき、シンガポールでこれまで食事をしたことのあるタイ料理レストランの写真や感想をまとめて記録しておきたいという純粋な気持ちから本エントリをしたためようと思い立ちました。

自分は結構タイ料理が好きな方だと思ってます。東京に住んでいた頃は代々木公園で催されるタイフェスに足繁く通い、ガパオライスという言葉や生春巻きを出すタイ料理店、タイ料理=パクチーというレッテルに違和感を覚え、自分で食材を揃え料理することもしばしばあります。

さてシンガポールは感覚的にタイ料理店の数が東京より多い気がします。タイは仏教国で中華料理と同じく食材の禁忌がほとんどなく、またスパイシーな味を好むという共通点もあるためシンガポール人にも人気を超えた定番料理ジャンルとして愛されてます。チャイニーズの人と連れ立って食事に行く時にも割と喜ばれるチョイスだと感じます。

さて評価については①価格帯と②味(Value for Money)の2つの軸を切り口としたいと思います。①の価格帯は酒類を除く料理の1人あたり価格が★エコノミー〜$25 ★★カジュアル〜$50 ★★★プレミアム$50〜 とします(単位:シンガポールドル)。また価格帯の全く異なるレストランを絶対的な味の良し悪しで比較するのはフェアではなく、満足度の高さは期待を超えた時にこそ得られることから、②は★値段相応未満 ★★値段相応 ★★★値段以上の3段階で測ります。

プレミアム編

1. Jim Thompson

①価格帯 ★★★ ②Value for Money ★★

シンガポール随一のお洒落エリアのDempsy Hillにあるコロニアル建築の外観が秀麗な有名レストランです。ワインなど酒類のラインナップも豊富。間接照明で夜には大変ムーディになりデートにもぴったり。一方で料理の味は比較的平凡でポジティブサプライズはありません。雰囲気代も込みで値段相応という評価にならざるを得ませんが、利用シーンは多く使い勝手は良いです。バースデーにはタイ伝統舞踊(ナータシン・タイ)のダンサーが祝福の舞を披露してくれます。

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2. Thanying

①価格帯 ★★★ ②Value for Money ★★★

Tanjong PagarのAmara Hotel内にあり冷房がやたらと効いてます。ホテル内のレストランらしくサービスも恭しく料理の一品一品が複雑な味わいで、丁寧に作られているという印象です。おすすめはトムヤムクンです。なお店員にタイ語が通じないと同行者が憤っていましたが、それはまた別の話ですね。

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3. Patara 

①価格帯 ★★★ ②Value for Money ★★★

オーチャードの外れのTanglin Mall内にあり背もたれの高い円形のボックスシートはプライベートな空間を演出します。場所柄客層に欧米人が目立つことからワインリストも充実。料理は上品ながら食べ応えがあり、華やかな盛り付けも映えます。おすすめはappetizerの盛り合わせとマッサマンカレーです。

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4. Tamarind Hill

①価格帯 ★★★ ②Value for Money ★★

Keppel Bayの近く、Labrador Park内にあるコロニアル建築の一軒家レストランでJim Thompsonよりさらに隔絶された場所が非日常感を演出します。インテリアにもこだわりが感じられ、この店を知っているという玄人感を醸すのにはうってつけです。他方料理は特別感動を覚えるほどではない割に値段がかなり高いので、Value for Moneyは低いと感じざるを得ません。実質星1.5くらいです。

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5. Sabai Fine Thai on the Bay

①価格帯 ★★★ ②Value for Money ★★

Marina Bayを望むCustom Houseの一角にあり窓際の席は絶好の眺望を誇ります。店内はファインダイニングの雰囲気でゆっくり食事とお酒を楽しむのに適しています。料理は女性シェフの繊細なセンスが感じられる一方で正統派タイ料理の刺激的な辛さや味の濃さなどを求める人にはやや物足りなく感じる可能性はあります。値段が前述までのレストランよりはややリーズナブルなのでVfMは低くありません。

カジュアル編

6. Sawadee Thai Cuisine

①価格帯 ★★ ②Value for Money ★★★

MRT Bugis駅D出口目の前という好アクセスで、店内はボックスシート中心のゆったりした雰囲気から一見高級店と思いきや価格帯はリーズナブルです。味はややマイルドで上品目ですが、fish cake (トードマンプラー)、魚の浮袋ともやしの炒め物、そしてリブアイステーキwithグリーンカレーソースといったsignatureは強く推せます。低予算でゆったりとタイ料理を味わうのに良い店で割とリピートしています。

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7. Baan Ying (閉店)

①価格帯 ★★ ②Value for Money ★★★

バンコックの人気店のシンガポール支店ということもあって、料理は非常に本場の味でクセも含めてタイの現地の雰囲気を感じます。一方、インテリアは白と木目を基調として大きな窓からの自然光で店内はとても明るく、お洒落なカフェを彷彿とさせます。オススメは川海老の入ったトムヤムクンとカオソーイです。雰囲気と料理の本格度に対してリーズナブルな価格なのでCB前までは最もよく訪れていた店の一つです。※2020年9月現在臨時休業中で新コンセプトで再オープンを乞うご期待とのこと ※Permanent closeのようです

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8. A-Roy Thai Restaurant

①価格帯 ★★ ②Value for Money ★★

旧Funan DigitalLife Mall(現Funan)の改築に伴い、Novena Squareへの移転を経て、20年以上の業歴は立派な老舗です。店構えは気取らないまさにカジュアル店の装いで、価格帯も中程度です。Fish Cakeのココナッツ詰めや蟹の甲羅の肉詰め揚げといったsignatureは逸品です。味は全般に良く本格度(現地度)もそれなりですが値段は割安とも言えないためValue for Moneyで言えば星2つが適当と思います。お近くにお住まいならリピートできる店かと。

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9. Basil Thai Kitchen (閉店)

①価格帯 ★★ ②Value for Money ★

ファミレス的な位置付けのチェーン店で、白を基調とした明るい店内の雰囲気で居心地は悪くありません。しかしながら異なる支店に延べ数回訪れているものの、その度に若干の後悔を交えた後味の悪さを覚えています。料理は代表的なタイ料理メニューを揃えていますが、いかにもシンガポールで揃う食材で作りました、という感じのなんちゃってタイ料理といった印象です。例えばグリーンカレーにゆで卵が添えられていたり、青パパイヤではなくマンゴーのサラダしかなかったりと言った点がとても残念に思います。とはいえデリバリーなどの評価は悪くなく、シンガポーリアンにはそれなりに受け入れられているということなのかもしれません。

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10. ThaiExpress

①価格帯 ★★ ②Value for Money ★★

今回改めて初めて気づいたのですが前出のBasil Thai Kitchen同じ系列のレストランチェーンによる経営で、こちらはオレンジ色を基調としたポップな雰囲気で違いを出しています。チェーン店のご多分に漏れずこれは?と思うメニューはありつつも、Basil Thai Kitchenほどの失望感は無く、まぁタイ料理かなという無難な味のため、どちらか選べと言われたら確実にこちらを選びます。ただしヤムウンセンやマンゴーサラダ、カレー・スープの類は激烈に辛いので普通の味覚の人はless spicy推奨です。(とりわけ不味いわけではない)

11. Yhingthai Palace

①価格帯 ★★ ②Value for Money ★★

Raffles Hotelの近くPurvis Streetにあり、2016年のミシュランガイドのシンガポール版創刊から現在までビブグルマンの座をキープしてます。店内はタイ料理店にしては珍しく円卓が配されていて、Thai Chineseを称する通りcosyな中華料理店の趣もあります。料理は高級店のような丁寧な仕上がりながら価格は抑えられており、ビブグルマン選出は妥当と思う一方で、インパクトのあるSignatureメニューがあるわけではなく、リピートしたいかと言われると微妙なところです。

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エコノミー編

12. Nana Original Thai Food

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★★

端的に言うと自分がシンガポールで最もオススメするタイ料理店です。シンガポールのLittle ThailandことGolden Mile Complexの店に始まり、その人気から気づくとここ数年で多店舗展開をするに至りました。かなりリーズナブルな価格ながら、まさにタイの現地そのものの味が再現されていて、かつ夥しいメニューの数で来店者を決して飽きさせません。この店の本格度を感じるのは、例えばソムタムに入っているピーナッツが通常の楕円形ではなく正円に近い丸型の品種のものをきちんと焦げ目がつくくらい乾煎りしているといったこだわりポイントです。自分はデリバリーの注文も含めると通算30回以上は食べています。オススメメニューは生のflower crab*入りソムタム、ガイヤーン、パッガパオです。*(!)当たりやすいのでデリバリーでは回避かつless spicyにしないこと(唐辛子の殺菌効果を活かすため)

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13. BeerThai House Restaurant

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★★

Golden Mile ComplexでNanaと双璧をなすと勝手に思っている店で、リーズナブルながら極めて本格的な味です。signatureメニューがNanaとは少し違うことから、最近Nanaに行きすぎてるかな…と感じた際の次点の選択肢に必ず挙がる店です。異様に多いメニューのうち、オススメは青パパイヤの切れ味鋭いソムタム、パンダンチキン、イサーンソーセージ、豚肉の生胡椒炒め(めちゃくちゃ好き)です。

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14. Diandin Leluk

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★

Golden Mile Complexにあるためどうしても上記2店には見劣りしてしまいますが本格度・味は決して悪くありません。1980年代創業という実力に裏打ちされた老舗です。一風変わった見慣れないメニューもあり変化球的に訪れるのも良いです。オススメはコーンのサラダです。店の境界が曖昧でGolden Mile Complex1階のどこからどこまでがこの店の席なのか判然としないことや、WebサイトがあるのにメニューのページがGoogle DriveにアップされてるPDFだったりするあたりに、タイっぽい適当さを感じます。

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15. Nakhon Kitchen

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★

Golden Mile界隈ではない店の中ではリーズナブルさと味の本格度は頭一つ抜きん出ています。立地が悪くないにもかかわらず低価格で提供できるのは店内に冷房がなかったり、ほとんどタイ人店員しかいない(英語で注文を取れる店員が少ない)からなのかもしれません。値段の安さからか行列が絶えず週末にはメイドの間でも人気の店です。オススメはグリーンカレーです。過去Holland Villageの店舗ではネズミが出たことで一時閉店の憂き目にあったものの、再オープンすると何事もなかったかのように引き続き人気を博しており、底力を感じます。

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16. First Thai *

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★

Yhingthai Palaceと同じくPurvis Streetに位置し、コーヒーショップのような扉や壁の仕切りがない店構えのため冷房は無く、晴れた日の店内はかなり暑いです。fb含め店のWebサイト、SNSアカウントがないため、席の予約は出来ず、自分もシンガポーリアンからその存在を教えてもらい、知る人ぞ知る店という趣です。極めてリーズナブルな価格ですが、料理はどことなく中華料理のフレーバーが加味され、評されているようにauthenticかと言われるとやや疑問です。青パパイヤではなくマンゴーが多用されているのも違和感の要因かもしれません。ただしどういうわけかブロガーなどシンガポーリアンからの支持は厚いようです。*2020年9月現在Google Mapの情報によると臨時休業中とのこと。デリバリーなど対応してなかった(出来なかった)のかも? ※Purvis St.の店は閉鎖、Instagramによればイーストの自宅でセルフピックアップ限定でオーダーを受けているようです。

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17. Jai Thai

①価格帯 ★ ②Value for Money ★

またもやPurvis Streetからですが、こちらは一応冷房の効いた店内で食事ができます。イメージはアジアの地方空港内のレストランといった雰囲気でシャビーな店内です。料理の値段がかなり安く感じますが、これもまたシンガポールで手に入る食材をタイ風に仕上げたという装いで特別不味くも美味くもありません。ただこの店も知らぬ間に多店舗展開していたようで、シンガポーリアンからは支持を得ているようです。自分は積極的に行きたい店ではありませんが、シンガポール人は値段が安いものに対する期待が日本人のそれよりかなり低い気がするので、結果的にValue for Moneyは悪くない、という評価なのでしょう。

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18. Joe's Kitchen

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★

Alexandra Rd.のIKEA近くのHDB階下にある煮炒餐室風の佇まいの店です。内装等含めあまりタイ料理店らしさは感じられず、庶民的な中華料理店がタイ料理を出しているといった趣です。料理の方は同行者と評価は割れましたが、タイらしさを求めないと割り切ってしまえば、料理自体が美味しくない訳ではないと自分は思いました。ただし料理の辛味はかなりパンチが効いているので、注意です。HDBが建ち並ぶ住宅エリアであることも手伝って地元民に支えられているのか、CBを経ても元気に営業を続けているようです。

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19. Hungry Thai

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★

One Northのオフィスビル内のフードコートの一店で、一見ありふれた店なのかと思いきや、出す料理はどうしてなかなか本格度が高く、ポジティブサプライズでした。フードコートのストールということもあって財布にも優しく普段使いできそうです。ドリンクがキティちゃんやドラえもんの素焼き(風)の入れ物に入って提供されるのはやや謎です。

20. Noodle Thai Thai Kitchen (現 Thai tai)

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★

ゴールデンマイルに向かう少し手前、ビーチロード沿い、アラブストリートにほど近いエリアにあり、その特色はメニューにチェンマイ名物のカオソーイがあることに尽きます。(前出7.Baan Yingがオープンするまではここ以外に出す店を知りませんでした)他方(これはチェンマイで食べた時も同じ感想だったものの)カオソーイのスープがやたらとぬるく、期待ほどの感動はなかったのと、それ以外の料理が標準以下のレベルだったので、総合的な満足度は低めでした。VfMは星1.5くらいです。料理がザルに載って出てくるという見た目の特徴はあります。しかしここもいつのまにかBalestier Rd.に2店舗目をオープンしており、ウェブサイトも洗練されたものに変わっていたことからも、価格とクオリティのバランスは悪くないと受け止められ、一定の支持を得ているということなのかもしれません。(最後に訪れたのが2018年3月なのでその後料理が進化した可能性もあります)
※"Thai Tai"とリブランドしてToa PayoのZhengshanモール一店のみになりました

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21. Kin Moo*

http://kin-moo.com

①価格帯 ★ ②Value for Money ★★★

MRT Bugis駅D出口目の前のTan Quee Lan St.沿い、前出6. Sawadeeの並びにある小さなラーメン屋くらいの広さの店ですが、名物の汁なしボートヌードルは絶品です。サイドメニューはありますものの野菜のサラダや炒め物などはなく、ラーブなどの肉サラダや肉類のAppetizer中心なのでちょっとジャンクにキメたいシチュエーションに向いています。こちらもToa Payoに2店舗目がオープンしており人気の高さが伺えます。ちなみにTan Quee Lan St.には他にもAh Roy Thaiというそこそこ有名なタイ料理屋(筆者未訪)もありますので、仮にウォークインで入れなかったり思わぬ休業だった時もリリーフには困りません。
*Bugis店は閉店、Bendemeer Rd.一店のみとなりました

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コラム タイ料理自作のススメ

日本に比べると地理的に同じ東南アジアということもあり、シンガポールではタイ料理に必要な食材は揃いやすいと思います。FairPriceなどごく普通のスーパーでもタイ料理エッセンシャルの調味料、香辛料、野菜は容易に手に入りますが、やはりタイ直輸入のものを揃えるならGolden Mile Complex2階のThai Supermarket(そのまんまですがそういう名前のようです)に行けば百戦危うからずです。このスーパー、入った瞬間から漂うタイ感が尋常ではなく、亜空間に入り込んでしまったかのような錯覚を覚えます。パッガパオに必須のシーズニングソースやカオマンガイのソース向けのシーユーダム、トムヤムクンのチリインオイルなど正式な調味料は全て揃います。

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さてタイ料理のレシピは今やインターネットでいくらでも見つかりますが、本格度、出来上がりのおいしさ、工程の分かりやすさなどは玉石混交です。それゆえにお金を出して買う書籍のレシピ本の価値を改めて感じる次第ですが、自分が最も推薦するタイ料理のレシピ本は長澤恵さん著のずばり『長澤恵のタイ料理教室』です。この本の良さは①材料は全て現地のものである(安易に代替品としない)②調理工程を細かく写真で解説している③タイ特有の食材・調味料の説明が豊富であるー点です。日本に住んでいると、このレシピ通りの食材・調味料を揃えるのは大変ですが、シンガポールにお住まいの方は比較的容易に(そしてタイスーパーに行けば確実に)入手可能です。特にオススメのレシピはグリーカレーチャーハンとガイヤーンです。

最後に

今回改めて自身が訪れたタイ料理店を振り返ると、上記以外にも、諸行無常のシンガポールF&B業界にあって惜しまれつつも閉店してしまった店もあり、感慨深いものがありました。シンガポールローカルフードに飽きた方は、シンガポールのタイ料理を掘り下げてみるのもまた一興です。高級店からフードコートまでバラエティに富んだチョイスがあり、自身のお気に入りがきっと見つかるはずです。


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