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銀行の店舗設計は顧客利便性とコスト効率で考えるべきと思っていらっしゃる方へ、店舗の重要性をマーケティングで設計してみませんか?

前回の続きです。

金融系のクライアントさんを長く担当したことがありこのテーマは割と力が入ります。
店舗数の削減は従来は「ピンチ」ですが、顧客と共有できる「価値」を中心に見直せば(マーケティングをすれば)「チャンス」になります。その観点で記事をまとめていきたいと思います。

日経の記事(メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦)を拝読させていただきました。
非常に興味深い内容でした。

そこで今回は【広告系提案箱 #12】としてマーケティング4P・プロモーションの観点でまとめていきます。


 

先行する三井住友Gを追いかける三菱UFJの構図の記事


読書にとって読みやすく仕立てるということもあると思いますが、三井住友Gを「新」、三菱UFJを「旧」という対立構造にして論点を浮き彫りにしています。

この記事にある論点をマーケティング・プロモーションの観点で整理していきたいと思います。

顧客データを統合する動きがより重要



出店(店舗)ベースで地域に密着して主に利便性で顧客(小口、中小法人)開拓を進めてきたのが従来の銀行のチャネル戦略だと認識しています。

店舗に優秀な人材を活用して、例えば「ミスがない(=お客さんは信用をテイクアウトする)」ということにプライオリティをおいていました。

結果的に「顧客情報」が店舗・個店についていて統合データベースがなかなかできない、せっかくの個人情報も名寄せなどの課題がありそこにコストを割けないような状況が続いています。

大手行の店舗戦略が変わり始めた要因のひとつに、長引く超低金利の出口が近づいてきたことがある。銀行の店舗は入出金や送金など事務処理の場であると同時に、預金を獲得する拠点だ。超低金利による運用難や資金需要の低迷が続くなか、ときに厄介者でもあった預金を集めるための店舗を減らすのは必然だった。

メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦

信用創造につながる動きに期待


経済の血流である銀行のビジネスは利鞘で稼ぐものです。
それにより間接金融において信用創造という経済的な効果をもたらします。
低金利が続く中、利鞘ビジネスが機能しなってきましたが、転換期が訪れています。
銀行業界(金融業界)が大きく動き始めます。

金利が上がり、預貸を中心とする伝統的なビジネスが息を吹き返せば、預金量が多い銀行ほど恩恵を受けやすくなる。金利が付く世界になれば、リテール戦略の前提が変わって「全く違う世界」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)に銀行は足を踏み入れることになる。東京スター銀行は9月1日から、給与や年金の受け取りを条件に普通預金の金利を250倍の0.25%に上げた。

メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦

Brick and Click


2000年前後にチャールズシュワブのビジネスモデルを解釈したものです。
インターネット店舗が持つ利便性を制約に感じる人も増えてきています。
金融リテラシーの高い人を中心に"Click"にシフトしていますが、同時に"Mortal"の重要性も認識されています。
金融業界は「信用」を売り物の一つにしていますが、Customer Experienceの観点を無視する訳にはいきません

Click and Brick

日本だけではない。総店舗数の削減を進めてきた米銀最大手のJPモルガン・チェースはこれから数年、年間約130店のペースで新規出店を進めていく。統廃合は続けるが、店舗数は近く小幅な増加に転じるという。今年春の米欧の金融不安で浮かび上がったのは、粘着性の強い小口預金をつなぎ留めることの大切さ。デジタル化を急ぐ同行だが、顧客の利便性を高める店舗の価値も見直されている。

メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦


多くの企業がサービス業化する中で、改めて「Brick」の概念が重要視されています。
マーケティング4PにおけるPlaceの活用についてどの価値(Core Value)を顧客と共有するかの重要性です
Core Value を体験できるBrick(実店舗)については多くのインターネット系の企業も模索しています。

一旦Clickに舵を切ったトラディショナルと言われている企業においてもマーケティング上重要なアセットになっています。

2000年から「顧客と共有すべき価値」を真ん中に議論が進んでいることを認識すべきです。

価値を共有する顧客は誰か?

世代が切り替わるこれからの30年を見据え、どんなサービスと価値を提供していけるのか。リテール戦略に求められるのは、それぞれの銀行のビジョンと洞察力だ。金融サービスを提供できるのは、もはや銀行だけではない。横並びや場当たり的な対応で銀行の未来は開けない。

メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦


銀行においても提供するサービスの差が「金利」だけではなくなってきています。企業の価値をブランドで語りたい方も多いですが、ブランドはターゲット顧客とのCore Value/価値をめぐるインタラクションで決まります。
ブランドイメージではなく、ブランドの実態に迫ることが都市銀行のマーケティングにおいても重要です。

顧客が求めるものは三菱FFJ、みずほ、三井住友などの都市銀行においてもそれぞれです。
地方銀行や新興金庫、ネットバンクなどを見渡せば、さらに顧客層そその顧客が求めるものは異なります。


ターゲットクラスターをどう設定するか?

改めて問われているのは、顧客が求めるサービスに真摯に向き合う姿勢だ。経営が厳しいから店舗を減らし、金利が上がってきたから再び預金を集めようという銀行の都合によるリテール戦略ではデジタル世代を引き付けることは難しい。

メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦

デモグラフィックや世代論で考えることからターゲット顧客が持つ価値をクラスターで捉えるようにシフトすべきです。
Core Valueと顧客クラスター分析のインテリジェンスにおいては先行する企業がたくさんあります。

例えばAppleの金融ビジネスへなぜ接近するのでしょうか…
ブランドエクイティの拡張とも見えますが、背景には顧客クラスターに対してのインテリジェンスがあると僕は考えています。


マーケティングにおけるデータ活用のインテリジェンス


そのためには顧客データとその分析のためのインテリジェンスが必要です。
クレジットカード情報を統合する三井住友Gは一歩リードしていると言えます。

顧客と価値を共有する場所としての「店舗」の設計


「店舗数」を持って「コスト」Vs.「利便性」の議論に変えるのではなく、「Core Valueの体験価値」に踏み込んで検証すべきです。
顧客の情報接点・体験接点ですのでマーケティングの4Pに戻って考えましょう。

デジタル戦略を担当する山本忠司・執行役常務は「駅ナカやショッピングモールで軽量型の店舗を柔軟に増やしたい」と語る。JR東日本とは今月29日までの期間限定で東京駅や新宿駅、横浜駅、大宮駅などの構内にあるブースで買い物客や通勤客がオンラインで資産運用を相談できる試みを始めた。店舗縮小の流れから一転、顧客との新たな接点づくりを模索する。

メガバンク、店舗削減に転機 金利ある世界に備え銀行変身 リテール戦線異状あり㊦



今こそ統合マーケティングの取り組みを


Click and Brickが Customer Experience 上重要ですが、だからと言って「デジマ」的な分析が優先されるという訳ではありません。

顧客クラスターとマーケティングファネル上のミドルファネルに注目してください。その分析の差が統合マーケティング(リソースアロケーションとその運用)の差につながります。

自らとターゲットとする顧客kのCore Vallueをめぐるストーリーがマーケティングです。

店舗数の削減は従来の価値観では「ピンチ」ですが、顧客と共有できる「価値」を中心に見直せば(マーケティングをすれば)「チャンス」になります。


さあ、一緒にブランドを創ろう!


金融機関の方、今こそ統合マーケティングを進めてブランドを創るチャンスです。
広告代理店がプロモーションの面からお役に立てると思います。
ぜひ、みなさんのエージェンシーに声をかけてみて下さい!

エージェンシーへの相談に方法などについて質問があれば、遠慮なくこちらまで:h-mori@threeplussix.com

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、また。

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