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日本の広告市場におけるマーケティングミックスモデリング(MMM)が話題になっています。何のためのMMMかについて考えてみます。

日経XTrendの記事によると来年はマーケティングミックスモデル(以下MMM)が注目されるようです。
そのあり方について考えてみます。



記事にもありますが、MMM自体は古くからあります。
広告媒体の到達効率を設計するのが主な役割でした。

MMMの有用性


現在MMMに期待されることはビジネスとの連携です。
日本の広告費の半分を占めるテレビメディアにおいて視聴率のデジタル化・個人視聴率のデジタル計測が遅れが大きな原因の一つですがMMMが全ての情報をタイムリーに取り入れることが難しくなっています。
またデータは収集・分析するだけではなく、戦略を立案する必要がありデータアナリストに加えてデータストラテジストが必要になります。
MMMを使用し続けることでマーケティング投資の課題がどこにあるかは分かります。
広告業界の観点で一つ注意して置かなけれならないことがあります。

MMMはマーケティングミックス

MMMの最初のMに改めて注目しましょう。
それはMediaではなくMarketingであるということ。
つまり、メディアの到達効率の予測ではなく、ビジネスの需要の視点でしっかり運用していくことです。

広告費は固定費か変動費か?


日本でMMMが普及しきれない背景には広告費の扱いがあります。
引き続き日本では広告費=コスト=固定費として売り上げに対して一定の割合を維持することが多いです。
グローバル企業を中心にマーケティング費用はそもそも変動費であることを優先させています。
いわば投資費用として柔軟に使います。
そうなるとマーケティング費用の一部である広告費についてのリターンの説明の必要が出てきます。
効果を証明しなければならないことについてさまざまな技術の応用が起きます。
例えば、モデルリングでも金融技術の応用が起きています。
広告費の上位概念であるマーケティング費用が投資費用になる世界では無駄な広告=リターンがない広告ということになります。

日本市場の広告費の流動性


日本では広告費は流動性が低いように思います。
特に投資方向における積極的な流動性の確保がありません。
広告実務においてはマスメディア、テレビ媒体の買い付けが柔軟にできないこともその要因です。
歴史的に「節税」対策で広告費を使っていた企業もあったようですので…。
本来の商品・サービスの価値をより多くの顧客に届けるということとは異なった費用として位置付けられていたのかもしれません。

広告費が投資になる必要性は成長視点から

そもそもマーケティングに関わる費用は企業の成長のためにあります。
成長のために無駄なお金を使うことは当然避けるべきです。
広告についてはその効果についての説明の納得度が低く、結果的にカットするコストの対象になっています。

日経XTrendの別の記事で広告費について客観的な検証をしています。
これからの広告費のあり方を考える上で重要な示唆を与えてくれています。

価値を最大するための責任者


広告費を含むマーケティングのお金が投資になる時に事業会社の組織の変遷も見逃せません。

 お金の責任者であるCMOは顧客から収益を得る

結果成長や売上にコミットするCGOやCROに変遷する

成長のための価値の連鎖を起こすためにサプライヤーの選択と管理が重要になりCMO傘下で購買部が責務にあたる

という組織的なダイナミズムを見ることができます。


よい広告の定義


よい広告を作ることの意味が変わっています。 欧米系の得意先の中でマーケティング費用がコストから成長のための投資になりました。 広告費用もその一部なので費用対効果の説明が求められます。 その説明ができないで「美しいブランド広告」にこだわっている代理店はすでに淘汰が始まっていますね。

改めてですが、広告はマーケティングの一つの要素です。
マーケティングとは企業のリソースを活用して商品・サービスの価値を生み出して広め利益をつくるものです。
統合マーケティングによりパッケージされた価値の観点では、広告は商品・サービスの一部です。
そこを出発的に効果のない広告から効果のある広告へ役割を変えていきましょう。

株価とブランドランキング


この株価のランキングと世界のブランド力ランキングのリストと比較すると重なりがあって興味深いです。

ブランドは企業価値の総和を図る一つの物差しです。

パーパスではなく価値を実感してもらうことで初めて顧客になります。
パーパス広告やブランド広告は実態が見えにくいものです。理想は抽象的です。
その理想がマーケティングによってパッケージされた商品・サービスになります。
その価値を顧客に伝えるための手段として広告があります。

現状バイアスからの離脱のために成長に向けた言葉を選ぼう


人は言葉に支配されているのだなぁと考えさせられて事例です。
広告の世界ではグローバル企業は2008年前後からマーケティング費用をコストから投資費用に位置付けを変えています。
日本では引き続きコストであることは何度も書いています。
顧客へ価値を伝えるよりも、コストの効率化周辺の言語が引き続き流通しています。

不況が深刻化していった1998年にはこうした傾向がさらに強まります。人員削減や経費節減で頭角を現したり、コストダウンを優先課題に掲げたりする新社長は、この年、「新社長登場」で紹介した50人中、10人にのぼります。業種も鉄鋼や素材などのメーカーから製薬、不動産、エアラインなどへと広がっていきました。

「社員のやる気はますます失われていった」
“コストダウンがうまい人間”ばかりを重宝した日本企業の大失敗
『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』より #2

不確実性に支配される時代だからこそ言葉の選び方が重要です。
成長につながる言葉を大事に選びましょう。

ヒントは今年の夏の甲子園で優勝した慶應高校野球部にあります。

売上至上主義から成長至上主義へ

今年はコンプライアンス問題で社会的に話題になるケースがたくさんありました。

広告業界では博報堂の過大請求問題も…

きれいごとのように聞こえるかもしれませんが、売上至上主義から成長至上主義へと視点を動かしていくこと、適切な言葉で成長に向けて人を動かしていくことが重要な時代に思います。

今日のテーマの一つでもあるMMMについては特に将来の成長の指し示す道先案内として得意先+広告代理店+媒体社・プラットフォーマーが一緒に運用していきましょう。

その意識がないとMMMは単なるブームで終わってしまいます。
せっかくのシステム投資も無駄になります。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、また。

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