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博報堂の過大請求の問題:広告代理店の費用請求の不透明性はコミッションビジネスと密接な関係が。自浄作用があることを理解して業界を上げた透明性を加速させるチャンスにしたいというメモです。

博報堂の「過大請求」問題、今後の広告代理店ビジネスを考えるときに大事なニュースです。
ビジネスモデルの話でもありますので、日本での広告の健全な発展についての議論する機会です。
なかなか育っていない日本の広告領域でのジャーナリズムの充実を期待しつつ個人的な見解をメモ書きにします。



広告代理店の報酬に対する不透明さ


広告代理店ビジネスにつきまとう「不透明」な部分が世の中に誤解を与えています。
客観的に見てよくわからない存在ですので「広告代理店陰謀説」みたいなものが広告代理店ビジネスで何か起きると浮上してきますね。

過大請求問題をめぐる報道


博報堂からのプレスリリースはこちら↓
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2023/11/20231122_2.pdf

起きてしまったことについて対処している博報堂のアクションについて広告代理店業界からも何かコメントを出すべきだと思いますが、現時点(2023年11月24日)まではありません。

冒頭にも書きましたが、広告代理店ビジネスの進化を支えるジャーナリズムが未成熟であることも影響していると思います。

代理店ビジネスへの不信感は日本だけではない


広告代理店の費用のあり方への不信感は世界的なものです。

繰り返しになりますが、「不透明」ということを指摘されます。
その原因は報酬体系(ビジネスモデル)にあります。

1:手数料(コミッション、マークアップ)モデル
2:(メディア売買)手数料を最大化するための売上至上主義

欧米を中心に代理店ビジネスで、メディアを日本型広告代理店では、売上・収益の大きな部分を占めるメディアコミッションです。
日本型広告代理店は得意先の代理人集団であるよりもビジネスモデルにおいては媒体社の代理人(セールス部隊)という理解をされることもあります。

不透明の原因でもあるコミッションについては海外市場、特にフランスでは厳しく統制されています。

メディアコミッション


日本市場でもメディアコミッションについては議論が起きています。
メディア費用の明細を開示をしないことが日本の商習慣です。

得意先との取引が一括発注・受注による請負型ビジネスであり、広告業としての納品が必要なことも背景にあります。広告代理店だけでは解決できない問題です。

人件費モデルへ


フランスのように広告代理店に限らず「代理業」の報酬体系が問題視された市場では、コミッションモデルから人件費+明細開示モデルへ移行が進んでいます。

欧米では人件費モデルが普及しています。
欧米のエージェンシービジネスの影響度の強いアジアの地域でも人件費モデルは導入されています。

メディアコミッションでの収益を確定するモデルから解放された広告代理業は得意先の課題解決業にドメインを設定し直して、プラニングとクリエイティブ優先順位をおきました。

一社での課題解決提供サービスから、エージェンシーグループ内でクリエティブ開発業務、PR業務やメディア業務、デジタル業務などを分業化・役割分担をしています。

また透明性確保のために一業種一社制の原則など日本のビジネスとは異なる成熟をしています。

日本では引き続きマルチクライアントに対して、総合サービス・ワンストップ・ソリューションサービスを得意先に提供する構造です。

Price what you pay Value is what you getで整理すると、広告代理店に払って、手に入るものは「メディア」と「便利」ということに尽きると思います。

担当営業が売上拡大を狙うとメディアでの報酬、広告制作における手数料に加えて必然的に広告隣接領域や、非広告領域での業務を求めて領域を広げていきます。

幅広い領域にサービス提供ができますが、結果的にビジネスのドメインが見えにくくなるという問題があります。それでも、どんどん仕事をとります。

電通の国内オペレーションはコンサルティングにドメインを設定する意図を感じています。世界でも最大規模の一つになる1万人のコンサルティング会社ですね。


現状に話を戻します。
クライアントさんも代理店を便利に使いたいのでともすると手間がかかる広告隣接領域や場合によっては非広告領域についても一括発注の中で依頼していきます。
従来は領域が拡大することは双方の思惑にかないます。

問題は広告代理店への対価


広告代理店への人件費での報酬・支払いについて、クライアントさん側も企画人件費での支払いについての理解が進んでいません。

コンサルティング会社については人件費を対価として支払います。
制作物やメディアなど具体的な納品物がある広告代理業に対する対価は納品主義+手数料になるケースの方が多いです。

例えば長期にわたるソリューション開発業務であっても最終的には広告出稿などでの納品(費用の回収+収益の確定)をせざるを得ないところがあります。

「無駄な広告領域の仕事を発注」=「無駄な広告代理店への支払い費用」=「ビジネスから見たときによくわからないお金」が発生します。


広告代理店ビジネスの透明性に関する二つの側面


今回のケースからの学び


サントリーさんは広告と広告代理店の背景情報にはとても詳しいクライアントさんです。
上記のような背景はよく理解しているはずです。

博報堂も報酬体系には課題意識を持っていますので、「双方で取り決めた」フェアなルールがあることが推察できます。

そのルールを逸脱する過剰な請求あったことに気づき、自主的に対応している=自浄作用が働いていると理解しています。

本件を糧にして今後健康なサービス体系に戻すには


まず広告代理店業務を統合マーケティングにおけるプロモーション領域に「戻す」こと=業務スコープを明確にする、報酬体系を人件費型+明細の開示にすることを薦めることが「無駄な広告費」を削減する一つの方法です。
透明性が生まれることによって広告代理店自体の本来の機能が活性化します。
それによって得意先が得られる便益もプラニングやクリエティブ周辺で拡大します。


透明性を確保してもっと広告代理店のクリエイティビティを活用しましょう

今回の件はサントリーと博報堂の個別の問題でありますが、同時に広告代理店の仕事とフェアな報酬体系はどうあるべきかを考えるきっかけになることを期待します。

今年は代理店ビジネスの変革が始まった年です。
それを意識して広告業務に専念していきましょう。

僕も微力ではありますが、その変革に協力をしたいと思います。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

広告代理店の報酬体系のあり方について得意先購買部のみなさんへのコンサルティングも行っております。


お気軽に以下までお問い合わせください。

h-mori@threeplussix.com

それでは、また。

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