見出し画像

銀行のポジショニングチェンジ:若者向けの銀行になりたいので、CRM観点でサポートしてもらえますか?---マーケティングミックス、CRMに広告代理店がチャレンジできるのか?---

金融系の知人とCRMについて対話したことをまとめます。
金融サービスにおける顧客関係性とポジションニングについて議論したことからこちらに話が進みました。
CRMに加えて広告代理店の上流工程への関与はどうあるべきかの対話をしています。
みなさんの参考になればと思いこちらにアップします。

なお、僕は広告代理店は商品開発そのものは出来ない派です。
広告に関わる方は自分のクリエティブ力で商品開発をしていらっしゃる方がたくさんいます。僕はあくまで「広告代理店」ということでその業種が提供するサービスの中で(広告代理店のリソースマネージメントの中で)何ができる・何をすべきかを考える派です。
そもそも経営資源は人しかいないのが広告代理店です。
だからこそCreativity=創意工夫=洞察に基づく豊かな発想力があり、それをビジネスにしています。

ターゲットの視点を入れて、マーケティングミックス(リソースアロケーション)に貢献することが広告代理店ができる商品開発でできることという前提から出発します。


Three Plus SixにおけるCRMの解釈


僕のCRM(およびマーケティング全般)についての理解は、日立総合経営研修所と Wharton Schoolが開催していた若手経営幹部育成研修プログラムに2008年に参加した際のマーケティングについて受講した講義が基礎の一つになっています。
CRMについての解釈はその講義での影響が大きいです。

CRMは改めてですが、Customer Related Managementです。
CはConsumerではありません。
顧客関係性をマネージ(なんとかする)ということです。
お客さんはこちらの思い通りにはなりませんが、なんらかの企業努力を提示して、例えば育てて行くことは可能です。
努力の対象になるので、KGIに対してKPIやROIが設定できるということですね。
だからControlではなく、Manageなんだなーと思った次第です。

CRMは時間軸で考える顧客との価値づくりと規定します

マーケティングはまずSTPから

STPは基本方針の設計です。
Segmentation、 Targeting、そしてPositioningです。
それを誰に(To Whom)何を(Waht)どうやって売る(How)かを実行計画にすることがマーケティング4Pの立案。その立案と実装において特にPromotion領域を担い、ターゲットとの対話を通じて価値を創っていく・体験価値として体系化していくことが広告代理店が行うこと=ブランディング活動です。
広告はPromotion領域なので、僕の理解ではHowの領域です。

選択と集中:リソースマネージメント


SegmentationとTargetingは「選択」です。
対象を選ぶということです。
Positioningは提供価値(機能+情緒)により構成されます。
Positiiningは競合との兼ね合いで相対的に確定することはあります。
僕は、経営者が目指すもの(思いも含む)で主体的に出来上がるものと規定しています。
つまり、Positioningは選べます

そして手元にある経営資源をどう組み合わせて、目的を達成するか、
これがマーケティング(マーケティングミッスク)です。

STPは「選択」で、マーケティング4Pは「(経営資源の)活用」ですが、Priorityをつけての活用と理解するので、あえて「集中」とします

Howの重要性はご存知の通り


ロジカル・分析的に考えるとSTPで4P(さらには3Cとか洗練されたフレームワークがありますね)ということなのですが、僕の考えを支えている概念がいくつかあります。特に人間は合理的な存在てはないという行動経済学全般や、田坂広志さんがおっしゃった「解剖した魚は元に戻らない」という言葉を持って複雑系の考え方とアプローチを大事にしています。


この記事でも何度も取り上げていますが、Simon Sinekさんのゴールデンサークルのビデオをご覧ください。Howは企業の価値づくりにおいて重要なことがわかります。

顧客との関係性を時間軸で考えるとCRMに


マーケティング4Pを時間軸で考えていくと、CRMになるというのが僕の結論です。

お客さんを「選ぶ」そして「対話」を続ける


お客様は神様なので、顧客に選んでもらう・選ばれる企業を目指すということを考えがちです。
でも、お客さんは選びましょう。
企業は自ら選んだPositiningを達成する必要があります。仲間が必要です。

ブランドとは「価値の共有活動」の結果生まれるアイコンなので、価値の共有を時間軸で考えることは、価値を育てることになり、STPとマーケティング4Pと何も矛盾することはなく、むしろ統合的に考えるべきです。

Simonさんの言葉を再びお借りすると「Loyalty」を「売買」していることになります。

SimonさんのLikedInより

では銀行の話に戻します


すでに3Cをはじめとした定量的、定性的な分析を終えていることを前提にします。

Segment & Targeting
プロアクティブな人(心身ともに「若い」人)→実際の業務では最も深掘り・洞察が必要なところです!
*お金を貸すことを生業とする銀行にとってはメジャーニッチ市場ですかね…
*小口でロングタームは実入りがいいそうです。なるほど新社会人向け口座開設キャンペーンは納得いきます。

Positioning 
人生を選ぶ人(選べる人)のための金融サービス

マーケティング4P
Product:年齢が若い人や健康な人への金利優遇、資格をたくさん持っている人へのポイント優遇
Place:インターネットバンキング、コンビニなどなど 
Price:年会費型(利用するだけ得する仕組みなどなど)
Promotion—---????------口座開設キャンペーン:「銀行選ぶならあの先輩に相談しよう!」編でしょうか。プロモーションのキモはターゲットとのボンディングの強いタレント選びと制約ノベルティ勝負でしょうか…

なんだか今までと変わり映えしないですね…

広告代理店が「あるべき論」で商品開発にチャレンジする?!


近年広告代理店が上流工程から関わることが増えてきました。
商品サービス開発や流通開発などに得意とするターゲットインサイト(市場インサイト)を提供することでマーケットイン(消費者・市場面目線)での商品サービスの開発に関わるものです。

とても大事なことですし、それによる成果が出ているケースもあります。
広告代理店の機能拡張とビジネス機会拡大においても素晴らしいことです。

客観的な視点を生かして商品サービス開発(経営課題)に関われることは広告代理店としても名誉なことです。

よくある問題なのですが、広告的な視点(例えば表現視点)が強すぎて「(コミュニケーションからの)あるべき理想論」を主張をするあまり途中で得意先のマーケティングチームや商品サービス開発チームから「何もわかっていない」ということでプロジェクトが頓挫してしまうことがあります。

また「経営資源」についての理解不足を指摘されてしまって経営者やマーケティングマネージャーから失望を買ってしまうケースも。

プロダクト関連、例えば、製造ラインの費用とか広告代理店の担当チームはわからないのが普通です。
ですから得意先ビジネスの発展性を考えて、特に営業機能を中心に勉強が必要なのですが、現状はまだまだです。
同時に代理店は万能ではない=だから業務発注時のブリーフィング(期待値の設計・納品物の明示)が重要です。

せっかくのチャレンジがクライアントさん、エージェンシー双方にとって残念な結果になってしまうこともしばしば…。
これも現実です。

アウトサイダーとして新鮮な視点が求められる


マーケティングミックスにおけるリソースアロケーションに貢献する「視点」が求められています。
こちらは以前紹介したカナダの「不滅のキャンペーン」事例です。


マーケティングミックス(リソースアロケーション)の観点でケースを見直してみましょう。

Product/商品いわゆる「味」など商品の根幹に関わる部分には広告代理店が関与するのではなく、顧客インサイトを持って関与しています。

これはプロモーション領域からネーミングやパッケージでの鮮度をアップしたケースです。
パッケージデザインの改訂にコストをかける必要があったかも知れませんが、製造ラインを新しく準備するよりはリーズナブルです。

プロモーションミックスにおけるメディア費用の配分を調整することなども含めて得意先のマーケティングマネージャー(場合によっては経営者)と一歩踏み込んだ議論があったはずです。
メディアでの報酬ではなく、人件費での適切なリワード交渉があったかも知れません。

この点は日本の代理店が抱えている課題ですが、同時にマーケティングでリードしているクライアントさんからアウトサイダーとしてのエージェンシーに期待されている点です。


JWTがベイクドサンドを開発した?

ここから先は

2,618字

マーケティングをプロモーションの観点で研究します。 気になるマーケティング事例の分析と応用ケースの共…

プロモーションリーグメンバーシッププラン

¥10,000 / 月
初月無料 あと10人募集中

よろしければサポートをよろしくお願いいたします! みなさまのお役に立てるようにこれからも活動を続けます! 今後ともどうぞご贔屓に!