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あと74日(妊娠8ヶ月:29週3日)

皆さんには、干した布団を取り込みながら泣いた経験があるだろうか。


妊娠後期。この頃の私はというと、何かと不安定な日々を過ごしていた。
増していく食欲に不安を感じては病み、思うように動けない歯痒さに病み、健診のエコーで見れる我が子のかわいさに泣き、帰りが遅い夫に腹が立って病んだ。物事の全てが自分の敵に見えて、なんとも安心できなかった。

これじゃいけない、自分のストレスはお子への悪影響になる、と気持ちを切り替えて長めに散歩をしたり、落ち着いた雰囲気の図書館に足を運んだりしてみた。効果は抜群で、あんなに荒んでいた気持ちはすぐに穏やかになった。が、そうは簡単じゃないのがこの産前産後マタニティブルーなのである。またすぐに涙が出た。そろそろ干からびてしまう。


にしてもなんでこんなに涙が出てくるんだろう。ホルモンバランスのせいだとはいえ、何をしても気持ちが浮上しないのはさすがに辛かった。おいしいものを食べても幸福感がない。ささいなことで腹が立ってしまう。夫のいつもの行動がなぜか許せない自分がしんどい。シンプルに、体がしんどくて心もしんどい。

お子の誕生はすごく待ち遠しいし、妊娠したこと自体すごく幸せなのに、どうして気持ちがついてこないんだろう。どうして神様は母胎の精神状態が不安定になるようにホルモンバランスを調整したんだろう。もはや恨むべきは神様なのかもしれない。ただでさえ身体がきつくなるんだから、気持ちくらいハッピーになるようにプログラミングしてくれてたっていいじゃない。母胎に何個試練を与えればいいんですか、神様。


と、憎んでも状況は変わらないし、ふざけた妄想で誤魔化せるほど軽いもんじゃない。とにかく、体より心がしんどいのだ。潤いを、潤いをくれ。



ふとベランダに出て、冬と春が入り交じった空気を吸った。とてもいい天気とは言えない曇り空だったけど、それがまた柔らかく感じて、干したての布団のいい匂いを嗅ぎながら、涙が止まらなくなった。いよいよここまで沈みきってしまったか、と思ったけど、泣くだけ泣いたら驚くくらいすっきりした。たまには感情に任せて大泣きするのもありかもね。


妊娠初期からぐらぐらしていたメンタルは、妊娠後期になったからって上手に付き合えるようにはならなくて。でも不思議といつも、1回大泣きしたら気持ちが軽くなることが多かった。人と話すよりも体を動かすよりも、1回思いっきり泣いちゃう。私に合った解決方法を一つ知ることができたから、これもお子のお陰だと感謝して今日もお腹を撫でるのでした。