キャッシュレス

自分にピッタリのキャッシュレスはどれ?! 決済を整理してみた。

キャッシュレスを官民挙げて推進したり、ビットコインなど仮想通貨が話題を集めたり、PayPayが大規模なキャンペーンを行ったり、「決済」に関するニュースを毎日のように目にします。また、消費税引き上げのタイミングでは、消費落ち込みの緩和とキャッシュレス推進の二兎を追って、キャッシュレス決済へのポイント還元が行われるようですね。

このように、いろんな仕組みが登場して注目されている「決済」ですが、本当に便利なのはどの決済方法なのでしょうか、自分に合っているのはどの方法なのか、ちょっと整理してみました。

<目次>
・「決済」の整理
・どれがよいのか、評価の観点
・まとめ

「決済」の整理

「決済の種類」、を整理するにあたっては、「何を支払うのか」と「どうやって支払うのか」に分けると考えやすいです。

■何を支払うのか
モノやサービスを購入して、その「代金」として相手方に渡すものは何か、ということです。

具体的には、
・法定通貨である「円」
・仮想通貨
(最近、「通貨」ということの適切性に鑑みて、英語のcryptoassetに合わせて「暗号資産」と呼称することにした、という記事を目にしていますが、まだあまり定着していない感もあるので、ここでは仮想通貨と記載します)
・各種ポイント・マイレージ
などがあります。

suicaやnanaco、waonなどの電子マネーや、PayPay・LINEペイなどのスマホ決済アプリなどは「円」をチャージして使っているので、支払っているのは「円」と考えていいでしょう(一度チャージしたら払い戻しができない等は、全く同じという訳ではないと思います。またiDのようにチャージ不要でその分クレジットカードに請求されるタイプもあります)。ギフト券も同様です。
〇〇コインのように、円とは異なるデジタル通貨を標榜していながら、〇〇コイン1単位は1円のようにpeg(円に対する価値を固定)しているものもあるようです。

■どうやって支払うのか
実際にモノやサービスを購入する場面で、何を媒介として支払うのか、どのように支払うのか、ということです。

具体的には、
・円のキャッシュ(現金)
・磁気カード(クレジットカード、J-debit、各種ポイントなど)
・ICカード(クレジットカード、電子マネー、各種ポイントなど)
・携帯・スマホのICチップ(おサイフケータイで電子マネー)
・スマホのアプリ・QRコード・バーコード
(ビットコイン、PayPayやLINEペイなどのQR決済、各種ポイントなど)
・ネット決済(クレジットカードなど)
などがあります。

先ほどの「何を支払うのか」の組み合わせで言うと、
・「円をクレジットカード(ICカード)で支払う」
・「円を(電子マネーとしてチャージしたうえで)ICカードで支払う」
・「ビットコインをスマホアプリで支払う」
という整理になります。

ちょっと違う観点ですが、毎回支払うのではなく、一定期間の権利を購入する「サブスクリプション」という方式もあります。「サブスクリプション」すると毎回毎回のモノ受け取り、サービス利用時には支払いをしないこともあります。

■チャージ・資金手当て
電子マネーなどは予めチャージする必要がある、などのように、支払う「バリュー」をどのようにいつ手当てするのか、にも種類があります。

円キャッシュは現金そのものなので資金手当ては不要ですが、
それ以外は具体的には、
・前払い:多くの電子マネーやスマホ決済などでは、事前にチャージする
・即時払い:デビットカード(J-debit、VISAデビット)は銀行口座から同時引き落とし
・後払い:クレジットカード
のようになります。

suicaをクレジットカードからチャージした場合は、前払いと後払いの組み合わせですが、最終決済(銀行口座から引き落とし)は後になります。iDをクレジットカードと組み合わせる場合はチャージの必要がなく、その場では電子マネーでお店に支払い、一方でクレジットカードにその分請求される、ということになります。
ビットコインなど仮想通貨も、まずは事前に円を払って購入(両替?)しておく必要があります。

給与を電子マネーで支払う、仮想通貨で支払う、などとなってくると、このあたりの「バリュー手当て」の考え方が少し変わってくるかもしれません。

また各種ポイントやマイレージは、基本的には直接的にお金を払って購入することはできず、そのポイント・マイレージの発行者や提携店舗でモノやサービスを購入したことに伴って付与されます。

どれがよいのか、評価の観点

■利便性 ~使える地域・店舗~
「どこでも使える」ほうが利便性が高い、と言えます。

まず、リアルの店舗での利用を考えてみます。

円キャッシュ(現金)は、国内であれば、どこでも、どの店でも使えるので、この意味では最強です。(ただし、ロイヤルホストで現金お断りの店が出現しているように、今後利用範囲が徐々に限定される可能性はあります。)
電子マネー、クレジットカード、スマホ決済などその他の支払方法は、その仕組みに参加している「加盟店」のみで使えるので、「加盟店」が地域的にも店舗数の面でも多いほうが利便性が高いです。
ポイントやマイレージは、一般的には使える店舗が限られていることが多いようです。

地域通貨は、使える地域が狭いことがマイナスですが、一方でその地域では加盟店が極めて多いようであればその地域の中のみでの利便性は高い、ということになります。

また、広く考えると、円でもドルでもユーロでも、それぞれの通用する範囲での「地域通貨」という見方もできます。「地域」をまたがる場合には「両替」が必要になります。この面では、ビットコインなど仮想通貨は国境を超える利便性がある、とも言えますが、一方で加盟店が少ないと使える店舗は少ないので、実態的には法定通貨を超える利便性には中々ならないと考えられます。

次に、インターネットなどバーチャル店舗での利用です。

ここでは一転して、円キャッシュ(現金)は何の役にも立ちません。
どのサイトでどの決済方法が使えるのか、それぞれのサイトごとに異なりますので、リアル店舗での「加盟店が多いほうが有利」と同じ状況です。これまでのところ、VISAやMASTERなどインタナショナル・ブランドのクレジットカードが使えるサイトが多いようです。

■支払い時の手間(消費者・店舗)
円キャッシュ(現金)は、財布から出して渡すわけで簡単ですが、消費者・店舗側とも金額を数えて確認する必要があります。

ICチップ(カード、携帯・スマホ)による電子マネーの支払いは、カードなどを「かざす」だけで支払いが完了するのでかなり楽で素早いですね。数える必要もありません。一方、スマホのアプリを使うQRコードや仮想通貨は、アプリを立ち上げたりQRコードを読み込んだり、金額を入力したりとそれなりに手間がかかります。

クレジットカード(磁気・IC)はサインや暗証番号入力があり、中々の手間です。ただし、コンビニなどでの利用というよりは、もう少し高額での利用が多いので、そこまで気になる場面は少ないということも言えるかもしれません。また小口の利用ではサインレスも出てきています。

■管理の手間(消費者・店舗)
よく言われるように、店舗側の円キャッシュ(現金)の管理負担はかなり大きいですね。支払いのときに数えるほか、おつりの準備や一日の「締め」での確認、銀行への入金があります。
ICチップ(カード、携帯・スマホ)なら、端末があれば即時に支払いが終わり、数える必要も諸々の管理もありません。QRコード決済では、支払いの場面での金額入力などの手間は少しありますが、その後の諸々の管理はありません。

消費者側も、現金の場合にはATMから下ろして持っておく必要がありますが、一方電子マネーなどその他の支払い方法でも、残高が減ってきたらチャージする手間があります。残高減少時に、自動的にクレジットカードなどからチャージされる、というのが便利ですね。

■割引・ポイントなどの特典
一部の電子マネーなどでは、利用の際に割引になったり、ポイントがついたりすることがあります。セブンイレブンでnanacoを使う、イオンでwaonを使う、というように、系列の電子マネーの場合が多いようです。
もちろん、決済方法に依存しない、一般の割引・ポイントも色々あるほか、家電量販店の場合には決済方法によって付与するポイント還元率が異なります。
また、ポイントは電子マネーやQRコード決済の残高・チャージに変換できる場合もあり、決済に使えるバリューにもなり得ます。

■通貨としての機能
通貨の3大機能として、交換手段、価値の尺度、価値の保蔵・保全があります。仮想通貨は加盟店のみで通用し、また対法定通貨の価値が変動するので、3大機能を充足していない、と言われています。
一方、価値が変動するからこそ、仮想通貨は投資・投機の対象にもなるのです。

法定通貨もインフレ・デフレによる価値変動はありますし、ドル・円レートように他の法定通貨に対する価値、という点では変動しますが、その通貨の流通範囲においては価値の尺度として通用し、また価値の保蔵・保全が安定的になされる、ということです。

■その他
・コスト
電子マネーやスマホ決済は、運営主体において、それを運営するためのシステム装備にコストがかかります。これをカバーするため、利用時に「加盟店手数料」を徴収することが必要になります。円キャッシュ(現金)は、そのようなシステムは不要ですが、社会全体で見れば印刷・鋳造にコストがかかっているほか、店舗や銀行などでのハンドリングコストがかかります。
店舗では、電子マネーやクレジットカードの利用には専用端末が必要です。円キャッシュ(現金)はハンドリングコストはかかりますが、専用端末は不要です。QRコード決済では、そのような専用端末が不要で「紙」にQRコードを印刷して提示すれば済むので安上がりで、中国などでは露店などでも利用されているようです。日本でも、屋台などでは普及していく要因になるかもしれません。

・匿名性、マネーロンダリング
円キャッシュ(現金)は匿名性が高く、資産隠しの手段ともなります。インドで、これを防止するために高額紙幣が廃止されたりしています。また、仮想通貨も匿名性が高く、マネーロンダリングへの利用が懸念されています。法定通貨での取引に対しては(現金については上記のような問題はあるものの)、これまで諸々のアンチマネーロンダリングの対策が講じられてきていますが、仮想通貨に対する仕組みは確立していないのが現状です。

・インフラへの依存
スマホ決済は、ドコモ・au・ソフトバンクなどの回線がダウンすると使えなくなりますし、電子マネーも停電すると使えません。そういう観点からは、円キャッシュ(現金)が優位です。
リスク回避を重視するのであれば、いくつかの支払い手段を備えておく、現金もある程度持っておく、などの対応が考える必要があります。

まとめ

「決済」については、
・「何を支払うのか」と「どうやって支払うのか」の組み合わせによって、いくつかの種類に整理される。
・それぞれの決済方法について、利便性、支払い時の手間、管理の手間、割引などの特典などの特徴が異なる。

これらの特徴のなかで自分が気にするのはどれか、どれが感覚・趣味に合うか、よく利用する店ではどれが使えるのか、特典が得られるのはどれか、ネット決済はどうするのかなどを参考にして、自分にあった決済方法(多分、一つではなくてその組み合わせ)を見つけてみましょう。


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