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都構想が話題なので敢えて市町村合併を振り返る

今日の話題は大阪都構想です。これは愛知県に住む私からすると非常に不思議な現象に見えるんです。それについてお話します。

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 実は最近、大阪にぼっちで遊びに行くことが増えています。やることは大抵散歩なのでマジでコスパ悪すぎるんですが…。

 そんな中で、実際に大都会である大阪市を回ったり、大阪にお住いの方々とお話したりすることを通じて、外の人間が思ったことを書いてみようと思います。要は他人事なので雑魚が何か言ってるくらいに思って下さい。

実はマクシムは大きな市を解体するのは割と賛成

 私は分割解体は場合によってはアリだと思っています。というのも、細かい行政区のほうが地域の意見を吸い上げられるというのが大きい。

 また、平成に入ってからの市町村合併の進展は基本的に反対です。何故なら、特に近年の合併の主な目的は歳出削減と議員定数・公務員削減だからです。マジでアレはやりすぎ感があった。

 そして主導が維新とか、二重行政云々とか政令指定都市という各要素を敢えて抜いて単純に言うと、市の分割・解体というのは市町村合併の真逆の政策でしょう。コレまで日本で行われてきたのは殆どが合併であり、このタイミングで出てきた分割解体というのは画期的な考え方という見方もできます。

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愛知県の市町村合併の結果 左:合併前,右:合併後 from.愛知県

 実は驚いたことが一つあって、大阪府ではココ40年で市町村合併が行われたのは美原町の堺市編入だけなのですね。愛知県では平成の大合併において、実に88あった市町村は、54市町村まで減少しました。約8分の5です。これは大都市圏を有する東京、大阪、神奈川と比較しても大きな変化です。

分割解体の逆・市区町村合併は多くの場合で上手くいかなかった

 上の写真を見ていただくと、右の新・愛知県では中央部に異常なほどデカい市があるのがわかると思います。これはあのトヨタ自動車を有する豊田市です。トヨタ自動車のある場所は元々は旧挙母町という場所なのですが、そこの周辺部が集まって豊田市という形になり、更に大合併で足助町や稲武まで併合して超巨大行政区になりました。トヨタにタカ・・・大企業が地域にあるメリットを活かそうという意図ですね!()このように合併が次々と進んだのが愛知県。

 しかし、問題も非常に多いです。

愛知県では市町村会議員は合併により60%削減

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公務員は15%減少

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 各図のように、合併により圧倒的に公務員・議員が減らされまくったということが分かると思います。実際に合併後の窓口サービスの減少、住民の声が届きにくいということが各地で露呈しています。特に上で触れた豊田市はマジで広すぎて過疎部のサービス低下は深刻です。豊田市には都市部もあれば山間部(旧足助町、旧稲武町)もあり、山間部は旧町役場の機能は縮小し、住民サービスが低下しています。旧町役場は一般窓口業務のみになり、道路改修の要望など予算を伴う市民要求は支所では判断できず、豊田市にある本庁に行かなくてはなりません。一方で、豊田市側からしても経済的繋がりも大きくなく人口の少ない場所の行政サービスを拡充するとなれば都市部からの反発は必至でしょう。豊かさを享受しようとして合併したら権限だけ奪われ、過疎化も酷くなったという結末です。

 では、なんで合併したんだと言えば国が「合併するなら金を出す」といったからという理由です。国策だったんですね。

 でもこの予算は特例であり、今後はコレが減額されていくのでトヨタ有する豊田市はともかくとして他の地域ではどんどん軋轢が深刻化すると思われます。

じゃあ、分割したらうまくいく?

 ココまで話を聞いて、大阪に在住の人からすると「じゃあテメーは大阪市解体に賛成なのか」という話になるでしょう。待って下さい。名古屋の人は歩く速度も遅いんでちょっと待つことが大事です。

大きな市であることのいい点の一つはスケールメリットです。

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 余談ですが、名古屋市をグーグルアースで囲ってみました。上図を見ると、庄内川という川が流れています。この川が昔は名古屋市の境界線でした。尾張徳川家の意向によりこの川の堤防は名古屋市の逆側だけ低くなっており、水を外側に流すことで名古屋城が守られるというやり方で名古屋の人々を守ってきました。故に昔から名古屋に住む人としてはその外側まで名古屋というのはちょっと理解しがたいというような感情もあったのですが、昭和30年の合併を経て、現在は港区・中川区・北区の一部で川の向こうまで併合されていることが分かるかと思います。これらは元々富田町・南陽町といった別の自治体でした。

名古屋市となったことで下水道が整備

 合併により名古屋入りした市外地域ですが、名古屋市という巨大都市に編入されたことにより恩恵を受けています。たとえば、下水道が整備されています。道路も拡張され、一体的な都市風景が広がっています。

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 ではこの紫でくくったところはどうでしょうか。ここには大治町やあま市、清須市が入っており、名古屋とも経済的に非常に繋がりが深い地域なのですが、なんと大半の地域で下水道が未整備であり、道路も"県道"なのに何故か市境を境に名古屋より狭く設計してあるなど名古屋市と比較して不便さを強いられているというのが実情です。特に大治町に関しては何度か合併話もあったのですが、不祥事などで実現に至りませんでした。

"大都市圏における"大きな市は「スケールメリット」を享受できる

 ではなぜ中川区や北区は道路も広く下水道も整備できたのでしょうか。基本的に道路や下水道は巨額の投資が必要な固定資本であり、そして利用者が増えれば増えるほど一人あたりにかかるコストが削減できるという「規模の経済(スケールメリット)」を享受できます。名古屋市の場合ですと人が多く、都市の中心に大きな施設を作って一気に処理して、ガスや水道などを整備可能です。人口密度も高ければ一人あたりのコストは大きく低減できます。道路だって、名古屋と一体になって都市計画ができればビジネス利用の需要に答える開発が可能です。しかし清須市や大治町単体にはまだそこまでの”規模”がないのですね。

 このように、中核となる大都市及び周辺の経済的に一体化した市町村で捉える場合は、勿論単純には言えませんが一般的には私は合併は比較的上手くいき、分割解体は良い選択肢とは言えないのではないかと考えます。

…では大阪はどうでしょうか?・・・

大阪市は"巨大政令指定都市"としてスケールメリットを活かした行政を続けるべきじゃない?

 私自身は、大阪市域は大阪市域で一つの自治体として都市計画をしていく方がうまくいくだろうと考えます。

ていうか、広域的な都市開発したいなら"合併"すれば良くね?

 例えば隣の地域が実質的に大阪市の衛星市になっているのであれば大阪市が合併して一体的に都市・住環境を整備すれば良いんじゃない?って思います。現状の都構想案では財政調整制度により一般財源が大阪府に奪われてしまうという問題があります。


そもそも、どうして"維新が"分割解体を望むんだろう

 分割解体により大阪府に財源と権限は奪われるとは言え、今後は各区で独自に選ばれる区長、区議会議員が選出され、それぞれ特色ある政策が打ち出されると思います。学童保育料、公立小中学校の給食費、ごみのルールなど細かなところまで各区でバラバラになります。そうなると勿論、地域密着で細かい意見を吸い上げて反映出来るようになる部分もあるでしょう。しかし、トータルで見たときの行政コストは間違いなく増えるでしょう。二重行政の解消を通じたコスト削減効果は非常に疑問です。ただ私自身は、このコスト拡大の分、行政に関わる人の数が増えることでのメリットも小さくはないだろうと思っています。


・・・って、なんで改革政党の維新がそれを望んでるんだろう?


っていうのが遠くから見た時の疑問だったりします。


 ちなみにコレを大阪市在住の都構想反対派の方々に聞いてみたら「いやオレもわからん、維新のことやからどうせ何も考えとらんやろ」って言われました。




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