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歴史ロマンス大作『アンナ・コムネナ』2巻(佐藤二葉著)を読む。華麗な世界の可憐な皇女が、凄惨な王家と政治の世界を如何に生き抜くのか!?

佐藤二葉女史の作品には、歴史に対するひたむきなまでに真摯な畏敬の念が込められているように感じる。

歴史モノのエンタメ作品に触れる時、よく感じることの一つとして、

『こいつ歴史、知らねえな』

というのがある。
まあ、ちょっと聞きかじった歴史でストーリーを構築してしまう、テレビドラマや短編読み切り作品なんかだと、それが顕著だ。

もっとも、入れようとしても尺の関係で入れられなかったり、ばっさりとカットしてしまって、結局それ歴史モノでやる必要があったのか? すら感じてしまう、いわゆる駄作の一つに成り下がってしまうものが往々にしてよくある。
(この辺り自戒も含めてになるのだが)

それともう一つあるのが、

『こいつ歴史、語りすぎやろ』

というのもある。
書いている本人が歴史マニアであり、そのうち物語の進行そっちのけで、その時代の風俗や情勢などを長々と語ってしまうなんてことだ。

わざわざ例を挙げるまでもなく、大人気な某時代小説家なんかもそれに含めていいだろう。
作品としては素晴らしいのだけど、寄り道しだすと大変なのもなかなか読み手にはツラいものだ。


では、彼女、佐藤二葉女史の作品についてはいかなものであるか?
ということになるのだが。

これがまた絶妙な塩梅で成立しているのだ。

キャラクターとして主人公の皇女アンナが活き活きとしているところは、歴史背景関係無いし、東ローマ帝国を知らなくっても王族の権力争いとなればバンコク共通だ。

その中でも刑罰の制度が今と違ったりはしているが、そこはきちんと丁寧に注釈をしてくれている。
(2巻での刑罰の詳細がなかったのが、ちょっと残念に思われるが)

とにかく主人公であるところの東ローマ帝国の皇女アンナ・コムネナが皇族の中でも規格外で、才知にすぐれそして愛らしいところが見ていて微笑ましい。

厳密には彼女が美人であったと証明する記述はないらしいとはwiki情報ではあるのだが、そこは創作の範囲内。

だがそんな彼女が肉親である実の弟と皇位を巡っていがみ合う様は、またなんとも心が痛いのだ。

彼女の未来は歴史に記されてしまっているのだが、それでもこの作品は彼女の人生を新鮮な気持ちで読むことが出来るのも、実質佐藤女史の筆力によるものだろう。

あまり詳しく書いてもつまらないので、ただあどけないアンナ皇女とその婿ニケフォロスとの育む愛を、見守るのみである。


アンナ・コムネナ(Wikipedia)

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