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【読書】淡くてほろ苦い、あの頃(青春時代)をもう一度感じたくなったあなたへ

確かなものが一つもない海を、ゆらゆらと必死に泳いでいた学生時代

学生の頃は、早く社会人になりたかった。
学校が嫌いだった、というわけではない。
友達がいて、(それなりに)勉強や部活を頑張った。
きっと楽しかったことも沢山あったはずなのに、
なぜだろう、学生時代と聞いて思い出すのは「自分自身と常に戦っている不安な私」だ。
自分が何者なのか分からず、でも早くなりたい、ならなくてはならない、私が納得できて、皆に認められる「何者か」に。
未完成な状態は怖い。立派な大人になりたいけれど、それを求められるととたんに拒絶する自分がいて、なぜだろう、なんなのだろう、この感情は。
私は自由になりたいのか、安心したいのか、楽になりたいのか。。。

とにかく曖昧な輪郭にしっかりと線を引いて、私自身を確立したい。早く、早く。
そんな焦りと不安、もどかしさを抱えながら必死に泳いだ学生時代。

『短編少女 集英社文庫』 のご紹介

そんな学生時代を思い返したくなって読んだ本がこちら。
人気小説家9名が「少女」をキーワードに綴った短編集です。
多感な時期の憂いやときめき、時に不安で切ない気持ち。そしてそれらの先にある成長を思い出のアルバムをめくるように楽しめます。
あなたの”少女時代”にも、この9編のどこかで出会えるかも!?

ちなみに、私の一押しは加藤千恵さんの「haircut17」です。
高校二年生十七歳の優希の学校での一コマをえがいた話。
進路や恋や友人関係において「十七歳は中途半端」と感じていた優希が、仲良しの楓に「優希に告白した男子とこのまま中途半端な状態を続けるのはよくない、早く返事をしてほしい」と言われたのをきっかけに、十七歳の今を考え前を向き直すストーリー。

あなたの少女時代を探しに、読んでみてはいかがでしょうか。

中途半端な状態、と今さっき楓は言った。確かにそうなのだろう。
中途半端な状態。中途半端な好意。中途半端な仲の良さ。中途半端な言葉。中途半端な思い。中途半端な願望。全部、中途半端だ。勉強、運動、進路、恋愛、友情。十七歳は中途半端。
理由の分からない涙をこらえながら、中途半端なあたし、とあたしはつぶやく。結局のところ、あたしなんだ。中途半端なのはあたしなんだ。
             *******
今この瞬間、あたしは何も決められていない。倉野君の事も、進路のことも。本当はもっといろんなことも。でも、髪を切って何かを決める。無理やりでも決めていく。
「絶対に」

加藤千恵「haircut17」


誰かに言ってほしかった言葉。もらうのではなく、あげることで、救われることもあるなんて。

島本理央「きよしこの夜」

ごめんね、と思う。ありがとうね、と。ああ、どういうことだろう。心から好きだったら、こんなことは考えないのかな。どちらが本当に自分なのか、私には分からなかった。私は今、大切にされている。とても幸せなことだった。
なのに、ちょっと悲しかった。なんでかな。

橋本紡「薄荷」


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