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「生きるとは何か」を考えることから、「生きる力」は生まれる――Think Out! vol.002 レポート

「”生きる”って、切実なテーマですよね。だから、対話も深刻な感じになるのかなと。そう思って今日来たんですけど、みなさん明るく話されていたのがすごく印象的で。人によってこんなにも考えが違うということがわかって、刺激を受けました。」

みなさんは、「生きるとは何か」という問いを、自分自身で考えてみたり、誰かと話し合ったりしたことはあるでしょうか。

あまりにも当たり前すぎて、でもだからこそ仰々しくも感じるこの問い。正面から考える機会は意外と少ないと思います。

哲学対話プログラム『Think Out!』の第2回は、そんな「生きる」をテーマに掲げ、実施しました。普段考えもしないような「生きるとは何か」という問いを、普段会いもしないような人たちと一緒に考えることができる。そんな場所になることを目指しました。

冒頭の言葉は、参加者のひとりから共有された感想です。「生きる」に対する考えは、実に人それぞれです。それを共有することで、自身の生き方自体が刺激を受ける。そう感じた参加者は多かったのではないでしょうか。

そんなThink Out! 第2回のレポートを、事務局のタガイがお届けします。

■土曜日の朝、コーヒーとお菓子片手に和やかなスタート

8月24日土曜日の朝10時、吉祥寺の「バツヨンビル」に男女12人が集まりました。年齢は20代から60代までバラバラ。普段からお互いに知り合いという人はゼロです。

開始までの時間、テーマ「生きる」について他の参加者に問いたい問いとその理由を、参加者ひとりひとりが「問いカード」に記入していきます。

そして、開始時間の10時に。問いカードに記入した問いを、理由とともにひとりずつ話していきます。「問い出し」です。

自己紹介は、あえてしません。言うのは、この場所で呼ばれたい名前だけ。どこ出身で、どんな仕事をしていて、という話は一切なし。なぜなら、「どこの誰かもわからない人」だからこそ、深い対話ができるからです。

■それぞれが問う「生きるとは何か」

Think Out!は、対話と同じくらい「問い」も大切にしています。それは、この先の見えない不確かな時代にあっては、答えを探すことよりも問いを立てることのほうがはるかに意味があると考えているからです。

では、今回はいったいどんな問いがこの場所で生まれたのか。ご紹介します。

「“幸せに生きる"とは、どういうことか?」
「人間らしく生きるとは?」
「人間は生きている以上、対立せざるを得ないのか?」
「何があれば人は満足して生きていけるのか?」
「一度きりの人生を精一杯生きるには?」
「生きるってそもそも、何ですか?」
「二度目の人生を選べるとしたら、もう一度生きたいですか?」
「生きることはなぜ大変なのか?」
「生きているのか? それとも生かされているのか?」
「不老不死の薬を手に入れたら、生きることをやめたいだろうか?」
「生きる情熱はどこから出てくるのか?」

最初にテーマとして出していたのは、「生きる」という言葉だけ。それなのに、ここまで多様な問いがひとりひとりから出されるということに、驚くほかありません。他の人の問いを聞くだけでも、ああ、そういうふうに考えるのか!と発見があります。

問いの共有が終わったら、4〜5名ずつにわかれ、それぞれの問いをもとに対話スタートです。

■互いの「生きる」に耳を傾け、自分の「生きる」を語る

Aさん「ときどき、仕事を辞めるみたいな感覚で、生きるのをやめちゃってもいいかなって思えるときがあるんですよね」

Bさん「それはなんでですか?」

Aさん「生きづらさを常に感じていて。なんかもういいやって思っちゃうんです」

Cさん「生きづらさを感じるのは、なぜ?」

Aさん「人生の目標があるのに、それを阻む壁があって。自分ではどうしようもないんです」

Dさん「そもそも、その目標って絶対に達成しなきゃいけないものなんでしょうか? 別の目標を持って、そっちを達成できればいいかなって、自分だったら思いますね」

誰かの「生きる」が、別の誰かの「生きる」によって、相対化されていく。そんなふうに考えることもできるんだ、とか、でもやっぱり、自分はこの考え方を大切にしたいな、といったように、対話によって「自分」というものが変化したり、あらためて見えてきたりする。

これぞ、「哲学対話」の力です。昨日までは赤の他人だった人たちと、普段だったら話せない「生きること」の本質に迫る対話をすることができ、それによって世界の見え方が変わっていく。

前半の30分はあっという間に過ぎました。

前半終了後、各テーブルの対話の様子を共有します。

「”生きる”を考える時に、”生きる”ことから考える人と”死ぬ”ことから考える人がいて、考えのスタート地点が人によって違うのが驚きでした」

「目標を達成できない時に
”生きづらさ”を感じるとしたら、そもそもの目標を“ずらす”ことで、その生きづらさを解消できるのではないかという話が出ました」

「ここは年齢が高めのテーブルだったからかもしれませんが、”死”を中心に対話が進みました。そして、”生きる意味は何か
という話になり、”人と人とのつながり”が大事なのでは、という話が出ました」

■問いに至る過程がその人の人生を映し出す

後半は、テーブルのメンバーを入れ替え、前半の内容を振り返りながら同様に対話を繰り広げていきます。

Eさん「今日は、“生きる"をテーマに十人十色の問いが出ているわけですけれど、なぜその問いになったのか、そこに至るまでの過程が大事なんじゃないかと思うんですよね。その人の生き方がその問いに反映されているというか」

Fさん「私は、ここに来るまでの間に”生きるって何だろう”って考えたんです。それで思ったのが、”自分の存在がここにあっていいんだよ”と認められた時に、人は自分が生きていることを感じるんじゃないかと。自分の価値観を人に認めてもらいたいんだと思います」

Gさん「ここに集まった人はみんな、”生きることを考えたい人”なんですよね。世の中には、それを考えなくても”生きる”ことを実感している人がいると思うんですけど、僕たちはそれを考える必要があった。その違いはなんなんでしょうね。たぶん、生きることを考える必要がある人もない人も、幸せを目指しているのは変わらないと思うんですけど」

後半が終了し、前半同様に各テーブルごとに対話の様子を全体に共有していきます。

「自分がどう生きていくかを決めていく、それを考えること自体が大事だと話していました」

「生きることを考える経験が、人生の中でどれだけあったか。それが、その人の人生を豊かにするポイントになるんじゃないかと思いました」

「不老不死の話をするなかでで、人は一回しか生きれないからこそ精一杯生きることができるんじゃないか、という考えが出ました」

■他の人の問いに答える過程で自分の考えに気づく

最後に、チェックアウト。全員でそれぞれの感想を共有します。

「他の人の問いに答える過程で、自分の考えに気づくことができました」

「自分は不老不死になっても、精一杯生きたいと思いました」

「問いに答える中で、自分の考えが至っていないと動揺する場面があって。まさに頭のワークアウト、Think Out!している感じでした」

同じ対話に参加していても、それぞれが違った形で刺激を受けていることがよく伝わってきました。

そのほか、みなさんに記入いただいたアンケートから、感想を一部ご紹介します。

・他の人たちのいろいろな考え方が聞けてよかった
・生きてきた人生や性格によっていろいろな考え方があることに気づけた
・人の考えを聞くことで、自身の偏った考え方を変えられると感じた
・それぞれの「生きる」を聞くことができて良かった
・気軽に、気楽に話し合うことができた
・質問が多く、また「聞く」「話す」を自分で選べる雰囲気があってとても充実した時間だった
・短い時間でも人って変わるのだなと思った
・やわらかい雰囲気があって自然と他の方の話に耳を傾けられた
・いろいろな方の“生きる"を感じることができ、人を受け入れる器が少し広がったかなと思います
・いろいろな人の感覚、体験を通じて、自分自身がとても豊かになった

第3回の開催も決定しています。前回は好評につき早々に満席になりましたので、ご興味持たれた方はぜひ、お早めのお申し込みを!

〈頭のワークアウト〉Think Out! テーマ『自由』

◉日時|2019年9月28日(土)10:00 - 12:30(開場9:45)
◉場所|吉祥寺バツヨンビル
◉テーマ|『自由』

この『自由』というテーマは、第1回の参加者の方へのアンケートでも「対話してみたいテーマ」として挙げる方が多く、第2回のアンケートでも同様でした。あなたは自由ですか? その理由はなんですか? 普段は考えることのない問いだと思います。この機会にぜひ、考えてみませんか。

詳細・お申し込みはこちらへ→
https://www.kokuchpro.com/event/thinkout003/

次回も、おいしいお菓子やコーヒーをご用意してお待ちしています!


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