【短編脚本】あなたの後ろのメリーさん

〈よくあるワンシーン〉

●男が電話をしている。すると後ろにはメリーさん。

男「おい、いい加減悪戯はやめてくれ。ったく何が目的なんだよ！」

メリー「私、メリーさん。今ね…あなたのうしろにいるの…」

男「え？」

●振り向いた男はメリーさんを見てしまう。

男「うわぁあああああああ！！！！」

〈メリーさん〉

●新居に引っ越してきた男。部屋に家具を置いたりいろいろバタバタしている。そこへ電話がかかってくる。

男「もしもし？…あぁ、うん。とりあえず無事引っ越し完了したよ。あぁ…平気平気。一人で動かせるからさ。うん。うん。また時間あったら実家帰るからそん時にでも。はーい。そっちも気を付けてね。うん。じゃあね。」

●母親からの電話を切り、再び入居準備に入る。

男「ふぅ…さて、あとは服をどうやってしまうかだな…」

●再び電話がなる。

男「もしもし？」

メリー「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの…」

男「はい？あの、すいません。どちらさまですか？」

メリー「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの…」

男「いや、ちょっと分からないです。」

●男電話を切る。

男「なんだよ、引っ越し早々気持ち悪いな…」

●電話がなる。

男「はぁ…もしもし。」

メリー「あたしメリーさん。郵便局の角にいるの…」

男「いや、あのだから！メリー？さんでしたっけ？ちょっと分からないんで、本当に。電話番号間違えてますよ。」

メリー「あたしメリーさん。今郵便局の…」

●男、電話を切る。

男「なんだよメリーって。気持ち悪いな。メリーさん……メリ…ん？なんか…聞いたことあるような…気のせいか。」

●電話がなる。

男「うわっ、びっくりした…………はぁ……」

男「もしもし……？」

〈あの日の思い出〉

メリー「昔、あなたがオモチャ屋で私を手にしてくれた時、本当に嬉しかった。あなたが一目見て欲しいと言った私は、親からは女の子が遊ぶものだと断られたけど、それでも諦めきれずに、おじいちゃんに内緒で買ってもらっていましたね。子どもの頃はみんなに秘密で遊んでいた。誰にも秘密。あなたと私だけの時間。本当に楽しかった。でも、月日が経てばあなたも大人になる。お人形遊びにも飽きて卒業することは分かっていた。だから私はしばらくの間、暗闇の中で眠ることにしました。それから何年か経って、あなたが大人になり部屋を出ていく時に押入れから私を見つけましたね。またあなたに会える。もう一度遊んでとは言わない。ただあの時の事を思い出して欲しかった。私との思い出を。一瞬で構わない。でもあなたは、私をなんの躊躇いもなくゴミ箱へ捨てました。目も合わせる事もなく。あぁ、そうか。もう忘れてしまったんですね。悲しいなぁ。もう一度会いたいな。会いたいな。待ってたのに…もう一度あなたと遊べる日を！待ってたのに！会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい！」

〈あなたの後ろのメリーさん〉

メリー「あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの。」

男「はぁ？なんだよそれ…」

●男は恐る恐るリビングから玄関まで行き、メリーがいるか確認をしてみる。しかしそこにメリーはいない。

男「おい、いねぇじゃねぇかよ！！」

メリー「……」

男「おーい、もしもーし！用が無いんだったら切るから！」

●そういって男は元居たリビングに戻る。

メリー「私、メリーさん。」

男「あ？」

メリー「今……あなたの後ろにいるの。」

男「え・・・・・・・・」

●男、ゆっくりと振り返る。男のすぐ近くにはメリーが立っている。

……しかし男には、メリーは見えていなかった。

男「おい、いい加減、悪戯はやめてくれよ！ったく何が後ろにいるだ！」

●男に触れるメリー、しかし男は彼女に気づくことはない。

男「ったく…期待させやがって…」

●電話を切る男

メリー「私、メリーさん。今ね…あなたの後ろにいるの…」

●彼女の声は、男へ届かない。

END