鵞鳥と書いてガチョウと知った日
安酒というのはきっと「くさい」。いい香りなんかしない。だから安酒でしか無いのだ。
幼い頃からウィスキー工場が身近にある生活をしてきたので、ちゃんと「いいお酒」の香りも覚えている気がする。だからこそ、スーパーのプライベートブランドのハイボールのにおいに鼻をつまみたくなる。
お酒で楽しく酔えない私は、あの工場の試飲コーナーに昔あった、赤い色をしたシロップのほうが今でもいい。いちごゼリーみたいな鮮やかな赤色をした、甘い液体。気づいたら試飲コーナーから姿を消していたけれど、あれは今でも、ニッカの工場で買えるのだろうか。
⛄
防犯ブザーを買った。以前に見知らぬ男に襲われた際に買ったブザーは、探したけれどもう見当たらなかった。
平和な土地に暮らしていたはずが、先月、怖い思いをした。
近所のグループホームからよく抜け出してくる、めちゃくちゃ巨体の知的障碍者の男性に、もう少しで私の荷物を奪われそうになったのだ。私が障碍者支援の仕事をしていたことで、彼にたまに出くわしても邪険に扱わなかったことが「いけなかった」のだと—まあ、誰にとは言わないけれど、そう判断された日にはさすがに泣いて落ち込んだ。
きちんと話せばわかってくれるのだろうけれど、それでももしも大暴れされたりしたら、私にはとても対処できない。大きな体が私の自転車の前に立ちはだかった時、私は恐怖して咄嗟に何もできなかった。
何故彼が私の荷物に興味を持っていたかなどは、詳しく話すと身バレにもつながるのでここでは伏せる。
先月は「これはダメ!」的な返しでどうにか難を逃れたものの、もしも次に力で行使されたらとてもかなわないことは目に見えている。だから防犯ブザーを買った。「おまわりさんを呼ぶよ!」の一言にはどうも怯むらしいので、ブザーもまあ有効だろう。
(音楽でない方の)仕事上そこそこの大金を持って歩いている私が、駅の券売機で他人の買った切符のお釣りの小銭をくすねようとした前科のある彼を怖がることを、どうか「障碍者差別」とは呼ばないで欲しい。
そもそも大きな男性に立ちはだかられて、恐怖を覚えない女なんてそうそういないから。
⛄
夫がガチョウの写真を撮ってきた。
「え、なにこれ」と訊くと、たまたま仕事で通りかかった家の庭にガチョウがいたらしい。
「卵が美味いんだってさ」と夫が話す。卵を食べたくて飼育されているガチョウなのだろうか—よくわからないけれど、庭の柵からにゅっと首を伸ばしたガチョウはとても愛らしかった。
動物園に行きたい。智光山動物園あたりでのほほんと過ごしたい。
⛄
皆既月食がちっとも見られなくってつまらない。
北海道では見られているのだろうか。日本ってやつぁ、とことん広いなあ。
⛄
読みたい、と思った本が電子書籍化されていなかった。
電子書籍というものが、いつの間にか当たり前にあるもののように感じていた。私は時折いろんなことに嫌気がさして断捨離してしまうタイプで、紙の本というのはそうして私にあっけなく捨てられてしまいがちだ。だから電子書籍の方が、保管に向いている。容量さえきつくなければ、とりあえず放置しておけるもの。
でも読みたい。でも買うにはなんとなく勇気の要るタイトルの本だもんで、本棚に置いておいて夫に不審がられるのも面倒だ。どうしたものか。図書館にはある気がしないぞ。
⛄
そもそも私は、ひとりごとの日記のようなものが好きなのだ。
菜摘ひかるさんみたいな文章がとてつもなく好きだった。
何を書いていいかわからないなら「そういうもの」を書けばいいんじゃないか、そう思った。勿論菜摘さんには劣るし勝てるとも思っていないけれど。
誰かの為に熱く伝えたいとかそういう欲も今は起きないし、ただ自分の中に沸き起こっては消えてゆくもの、まるで転寝している時に自分の内部から聴こえてくる夢の寸前みたいなものに似ている、そういう些細なことをうすぼんやりと書き連ねたい。
私はどうしても人の輪の中で「かごのなかのとり」にばかりなってきたし、はないちもんめでは選ばれない存在であったと思うし、うしろの正面を誰か当ててもきっとずっと「かごのなかのとり」のままだった。
だから仲間を求めて何かを書いたとしても、それはうすら寒いものになってしまうと思う。
いいんじゃないか、このまま、思うがままにしたって。
私は続けざまに三人と不倫したとかで退団した野球選手みたいにアグレッシブには生きられないし。
私はできるだけ、世界の片隅で静かに、歌って、言葉を紡いで生きていきたい。
花とか動物とか雨音とか風のそよぐのとかと、静かに生きていきたい。
私を不安にさせない程度の稼ぎと、満足に眠る時間があってくれれば安泰だろう。
⛄
さて、どうでしょうクラシックまで起きてようか、とび森でもやろうか、思案しよう。おやすみ。
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