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終わりの見えない苦行が故の...

「そんなにたたかないで」寝たきりの母の懇願 老老介護に疲れた70代の息子はわれに返った たった一度の激高が招いた重大な結果



 たった一度の激高が、母の死という重大な結果を招いた。「取り返しのつかないことをしてしまった」。補聴器を付けた被告の70代の男は、法廷でうなだれた。 

罪名は傷害致死。寝たきりの母(90)がベッドシーツにたんを吐いたことに腹を立て、下あご付近を何度か平手でたたいた。目立った外傷はなく、男は普段通り夕食を食べさせた。容体の急変に気づいたのは翌朝だった。 男は県外などで勤務したこともあったが、故郷の鹿児島に戻り、両親と同居した。やがて父が亡くなり、母と2人暮らしに。母は転倒して太ももを骨折したことなどから、ベッドに寝たきりの生活となった。 

頼りの年金は2人合わせて月10万円ほど。つつましく暮らしてきた。生活費が足りない時は畑を売って工面した。母の介護はデイサービスを利用しながら、食事を食べさせたり、おむつを交換したりと世話をした。 

「シーツが大きくて、洗濯しにくいと思った」。裁判員裁判の被告人質問で、腹を立てた理由をそう答えた。シーツを外すには、母をベッドから抱え上げて車いすに乗せなくてはいけない。洗って干すのも手間がかかる。心臓に持病がある男にとって重労働だった。 ただでさえ日々の介護は手を抜けず、負担に感じていた。突発的な怒りを抑えきれない男に、母は男の名前を呼びながら「そんなにたたかないで」と懇願した。はっとしてわれに返ったが、すでに母の体はダメージを負っていた。 

「被害者に落ち度はない。動機は短絡的で、相応の非難が妥当だ」。検察側は懲役5年を求刑した。振り返ると、母は献身的な介護への感謝を口にしていた。男は「私を育ててくれた。墓参りをしたい」と声を震わせ、弁護士に差し出されたハンカチで涙をぬぐった。 

判決は懲役3年、執行猶予4年。「身体的に厳しい介護をする中で、いら立ちを抑えきれずに犯行に至った経緯は同情できる」と言及した。地域の住民らが刑の軽減を求める嘆願書を出した点も考慮された。 

老老介護の末に起きた事件。審理を担った裁判員は「苦労が分かるだけに、情に流されないように心掛けた。それでも、感情が揺れる裁判だった」と胸の内を明かした。 介護経験のある裁判員は「介護は終わりのないマラソンのようなもの。命が長く続くことを願う半面、改善はなかなか見込めず、つらくなる。行政や福祉のサポートが欠かせない」と語った。 

判決の言い渡し後、裁判官や裁判員はメッセージを送った。「介護の負担が大きく、無理をしていた部分もあった。母の供養をしながら、孤立しないよう過ごしてほしい」。男はじっと聞き入り、うなずいた。

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実は自分自身高齢者施設で(全然真面目じゃないけれど)ケアマネでもあるので、このようなケースを聴くたびに胸が痛くなる。以前書いていたブログ「人生の黄昏」でも何度このようなケースを紹介しただろう?

月十万の収入だと、実際ケアマネを介しての介護保険サービスも困難な可能性もある。まあ実際は減免申請や裏技的な方法を取ったうえでの施設入所もできなくもないけれど、それでも厳しいだろうな...。

しかし、検察もこの手の裁判については人でなし感満載だ。ギリギリの生活を行政や身内のサポートなしでやってたんだぜ?それに懲役5年って...

悪魔やんけ!自分が同じ状況に陥る想像力がないのだろう。

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このようなケースに陥った場合は、即地元の福祉事務所や地域の介護支援センター、近くにいる医療福祉関係者への相談を勧める。ただ、だからと言って、介護保険、特に在宅サービスは最低限のサービスを家族も同時にサポートできる、というレベルなのでできる限り特養や有料老人ホーム、認知症のひどい場合はグループホームや認知症対応病院などへの入所申請書を出しておくべきだろう。

武漢コロナが蔓延している現在、このような介護共倒れというケースはますます増えていくと思う。助けられるケースはできるだけ助けていきたい。

いや、実際終わりの見えないマラソン、ってこんなに辛いことはないんだよ。プロでさえそうなんだから、家族はもっと...

泣きたかったり叫びたかったりする時はそうすればいい。

と言うかね、在宅介護ってお互いのペースを作っていって、そして頑張らなくてもいいんだよ。


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